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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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ジェシーは夜目が効くんです

俺には秘密が2つある。

1つはシャルとアッサムも知っている秘密だが2つ目は生まれてこの方誰にも言ったことのない秘密。

まさか、今シャルとアッサムが知ってる方の秘密で苦労するとは思わなかった。

「はあ…」

俺は深くため息をつく。

「大丈夫?」

シャルが声をかけてくる。

今、俺達は野営地の夜間護衛の為外で3人固まっている。

俺の秘密を知ってなお普通に付き合ってくれる大事な友人にして旅の仲間だ。

「いや…。俺が勝手に落ち込んでるだけ…」

「まあ、そうなのは分かるけどさ、どーすんの?

このままだとさ…」

俺を思いやって後半言葉を切る。

「今日は乗り切ってもこの依頼後の約束はどうする気だ。」

「う」

痛い所をアッサムはついてくる。

そう、俺には無理。

「でも、勢いで言っちゃったんだ….」

これまた落ち込む原因となっている。

ナンパ?

3人で遊ぶ?

むーーーりーーー

思わずその時を想像して頭を抱える。

いや、まずは今夜の事を考えよう。

邪魔するべきか否か…

「何迷ってるの?ここは一択でしょ?」

シャルがイラついたように言う。

いや、自分の心情的にはそうだけどさ…あまり自分勝手な事して…俺って我儘だからさ…

「もう!」

シャルがついにキレた。

そして、俺の耳を引っ張りまさに説教かまそうとした瞬間。

人影が横切った。

「?」

俺とシャルがそれに気づいた。

シャルは俺の耳から手を離す。

「アッサム、下がって」

シャルはアッサムを守れる位置に移動する。

アッサムはその言葉に素直に従う。

「補助はいるか?」

「大丈夫だと思う。」

俺は剣の柄に手を当て、シャルはナイフを両手に持つ。

暗いからよく見えないが先程の人影、複数で何かを運んでいたような?

「跡をつけよう。」

俺の言葉に二人は頷く。

気配を消してその人影を追った。

人影は気のせいという可能性もあったが、どうやら間違いなかったようだ。

4人の人影が何かを運んでいた。

「ジェシー、見える?」

よくよく目を凝らしてみる。

「…人間を運んでいるように見える…」

俺は夜目がきく。

よくよく見ればそれくらいわかる。

「…ん?」

俺はさらに注視する。

「運ばれてるやつ…冒険者だ。」

『!?』

二人は驚きのあまり声をもらしかけて慌てて口を自身の手で塞ぐ。

「本当か?」

「間違いない。…ファリスさんが踏みつけていた奴だ。」

4人の男が抱えて運んでいる男は盗賊を退治した時側にいたから知っている。

その冒険者は今やぴくりとも動かない。

死んでるのか?

俺達はさらに跡をつければ、4人の男達は4台目の荷馬車に男を乗せる。

そして、何処かへと去ろうとする。

「シャルとアッサムは荷馬車確認を頼む。」

「ジェシーは?」

「あいつらを追う。」

返事は聞かず俺は追いかけた。

運ばれていた男は知った顔だがこの4人はわからない。

その4人がひたりと足を止めた。

…バレた?

俺も足を止めた。

緊張する。

しかし…

そこに現れた冒険者の1人。

あいつは確かファリスさんに暴言を吐いていた奴。

そいつは腹を掻きながら歩いていた。

こちらをみることもない。

ここにいるのは偶然か?

彼は草むらに立ち…用をたしている。

俺達に背を向ける形だ。

4人は何やら頷きあって…

さっと動いて彼を襲った。

「う…!?」

声すらあげる隙を与えない。

一瞬で終わった。

だが、4人は彼を気絶されるに留めたようで殺してはいない。

そして先程と同じように運ぼうとして…

俺は剣を抜いて前に躍り出た。

『!』

4人は俺を見て…微笑んだ。

彼らはすぐに荷物である冒険者を置いて、武器を構える。

武器は冒険者にも使った棍棒。

あの微笑みは俺の尾行に気付いていた証拠であり、かつ、冒険者を襲う所を見せたということは…

「予定通りってことか?」

俺の言葉に答えるように、彼らは奔り…襲ってきた!

その動きは昼間の冒険者の比ではなかった。

全員黒ずくめのマントを纏っており、髪の色も目の色も棍棒も黒いのか見事闇に紛れて追うのが難しい

…他の連中ならば。


俺は繰り出される棍棒の時間差の攻撃を避ける!

「!?」

初めて彼らに動揺が走る。

俺は他の人に比べて夜目が効く。

だから、例え闇にうまく紛れようとも彼らの攻撃を防ぐくらいは訳ないことだ。

しかし、この4人は強い。

夜の戦いに俺自身不慣れであることを差し引いても強い。

ひゅっ

俺の耳が空気を斬る音を捉えて半ば本能で避ける。

4人のうち1人がナイフで斬りつけてきたのだとすぐにわかった。

そのナイフは夜に紛れることが出来るよう黒く塗りつぶされていた。

こいつら明らかに準備が良すぎる。

狙いは荷物?

冒険者?

それとも…

「俺達?」

狙われる心当たりは特にないが冒険者などやっていると知らないうちに恨みをかっていることもある。

そういう手合いの連中か?

だが…それでも釈然としないものもある。

まあ、いい。

倒して聞けばいいのだから。

俺が一発目のナイフを避けたことで彼らは懐から複数のナイフを取り出す。

いずれも黒く塗りつぶされたナイフ。

ぬらりと光っているのを見るに…毒か。

致死性のものか、それとも麻痺程度のものか。

いずれにしても食らったら負けか。

俺は気を引き締める。

仲間の援護は期待できないのだから今の状況は自分1人で切り抜ける必要がある。

なにより。

「これくらい1人でなんとか出来なきゃファリスさんの側にはいられないっすよね!」

俺は無理矢理微笑んだ。

同時にナイフによる猛攻と合間を縫うような棍棒の攻撃が時間差でやってくる。

種類の違う攻撃の受け流しは案外難しい。

4人の連携も見事であり、俺は次第に押されていく。

ぐっ!

油断したつもりはなかったが攻撃を防ぐのに集中しすぎて足元がお留守になっていた。

俺の足が何かにひっかかりバランスを崩して膝をつく。

刹那、俺に向けてナイフが斬り込んできた。

慌てて身を捩り回避するも右肩にかすってしまう。

斬り込んできたやつが嗤った。

その笑みを見た直後に斬られた右手が痺れる。

即効性の麻痺毒!

致死性の猛毒でなくてよかったと思うべきか?

俺は足元を見る。

草と草の先が固結びされており、足を引っ掛けられるようになっていた。

…罠!

最初からおびき寄せられていたということか!

油断したつもりはなかったが未熟ゆえの失態か。

4人のうちの1人が俺に棍棒を振りかぶり…!


後ろから何かが飛んできた。


それに当たった4人のうち2人がぶつかり上下に分かれてしまう。

それは弧を描き戻ってきて…俺を通り過ぎて後ろに行く。


「…よう、大ピンチってやつ?」


後ろを振り向けばバトルアックスを担いだレオナルドさんが楽しげに笑っていた。

「まあ、そこそこ?」

「減らず口だな、お前。」

呆れたように言うと俺に何かを投げてきた。

小さな瓶に入った液体。

回復薬(ポーション)!?」

「おう、飲んどけ。毒食らったんだろ?

それは毒にも効くぞ」

…ってことは一級品!?

めちゃくちゃ高価だからそんな気楽にあげたり出来ない品だよね!?

「気にすんな、どーせ俺たちにはあまり効かない」

いや、そうかもしれないけどさ…後が怖いわ。

しかし、ここで飲まなきゃ足手まとい決定だ。

後日奴隷になろうとも飲む以外の選択肢は俺にはなかった。

俺は小瓶の中身を一気に煽る。

あっという間に痺れはなくなった。

さすが一級品!

「助かった!」

「いいってことよ。」

レオナルドはにかっと笑う。

「で?こいつら…っておい!?」

レオナルドの視線を感じたのか残りの2人は即座に撤退していった。

「っち!逃げられたか。」

残されたのは2つに分かれた死体と気絶している冒険者。

俺達は冒険者は置いておき死体を漁ってみる。

特に身分を証明するものは何も出てこなかった。

出てきたのは毒のナイフだけ。

「見た目暗殺者だな。」

「でも暗殺者が誘拐なんてします?」

「依頼主の希望ならするかもな?」

誰が依頼主だ?

「はっ!シャル達…!」

もし、俺達が誘われていたならシャル達もこいつらの仲間と手合わせしているかもしれない!

「まあ、ケイが向かったから無事だと思うぞ?」

「あ…ど、どうも…」

まさかそちらのフォローまでしてくれるとは!

「ったく。この一大事にあいつは女といちゃついてんのかね?」

びくっ

俺の肩が跳ね上がった。

それを不思議そうにみるレオナルドさん。

「も、もしかしたら、襲われているかもしれません!」

俺は嫌な予感を振り払うように言う。

「おい、あいつの実力はお前が一番知ってるだろう?

仮に襲われても左手でいなして右手で女イカしてるっつーの。」

小馬鹿にしたように言うけど、本当そうだ。

それくらい余裕で出来てしまう人。

「でも…」

無駄なあがきをしたくてもする根拠がない。

あまりにファリスさんが強すぎて。

俺が俺らしくないのが気になったのかレオナルドさんはため息をついた。

「じゃあ、念のため見に行くか?」

「でもどこにいるのか…」

俺は知らない。

「かなり早い時間に約束の場所に行ったぞ。

確か…野営地外れの森の中だったかな。」

「なんで知ってるんですか…」

そんな事気にしてる場合ではないだけれど。

「誘いの手紙を見たからな。…ほら、近いんだ行くぞ!」

「あ、ああ…」

俺は冒険者と死体をそのままにしてレオナルドさんに着いて行ったのだった。





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