粘土に色を塗りました!
3人で稔の家の車で我が家に向かう。
途中稔の母君が『うちのみーくんはオーガニックの食材でないと云々』言っていたが母上は聞き流していた。
その顔はオーガニックなんてしらねぇよと言っていた。
多分、今日の夕飯もいつものスーパーで買った何かだろう。
そして我が家に着くと母上は絵の具を出してくれる。
兄上のお古じゃが充分使える品々じゃ!
「俺初めて絵の具使う」
「え?私も。」
「なんと!?わしもじゃ!」
なんとわしらは初めて絵の具を使うみたいなのじゃがうまく使えるかのぅ?
いや、うまく使えなくてもいいのじゃ。
しかし、使い方の想像もつかないのは問題じゃろう。
母上に聞こうかと思ったが晩御飯の準備中で忙しそうじゃ。
どうしたものかと悩んでいたら兄上が帰ってきたのじゃ!
「ただいまー」
「あにうぇぇぇ!!」
どすこーい!
わしは兄上の胸に飛び込んだ!
「うわっ!ってまやか。なんだよ。」
兄上はわしを受け止めて抱き上げてくれる。
兄上の抱っこ大好きじゃっ!
「粘土で作った動物に色を塗ろうと思い絵の具を出したのじゃが、使い方がわからないのじゃ!
教えてたもぅー!」
「ああ、そういえば俺の過去の遺物があったな。
二度と使えぬよう封じていたのだが…遂に復活させてしまったか…」
遠い目をして兄上は言う。
「母上が出してくれたのじゃ!」
「そうか、あのお方の意思なら仕方ない。
して、あのお方は何を?」
「晩御飯の準備じゃ!」
「ほう。ならば身を清めしだい、お前の希望を叶えてやろう。しばし待て。」
「わかったのじゃ!」
わしは兄上部屋に戻り事の次第を伝える。
二人は喜んでくれた。
約束通り兄上は手を洗い制服装備を解除して普段通りのかっこいい衣装装備にチェンジしてやってきた。
「おや、あの時の可憐な姫と勇敢な戦士ではないか。」
「こんばんは!」
「お邪魔してます。」
「楽にしてよいぞ。して、物はどれだ?」
言われてみせる品々!
「ほう、このケルベロスとケルピーはまやだな?」
「そうなのじゃ!」
やはり兄上にはわかって貰える!
「この可愛いものは…ネコ?」
「そ、そうです!」
パァァッと笑顔で答える稔。
「姫もまやと同じく犬か。」
「犬なのは合ってますが同じかどうかは…?」
朱雀様は首をかしげる。
では、絵の具で命を吹き込もう。
「命を…吹き込む…?」
兄上の言葉をわしは無意識に繰り返した。
「そう、今はこの動物達もただの土の塊にすぎない。
しかし、そこに色をのせることで命を吹き込むことができる。」
『おー!』
「では、やってみよ。使い方はな、まずはバケツに水を用意する。」
バケツ?これかの?
小ぶりのバケツは中が仕切りで三分かつされていた。
「そして、この板…パレットと言うのだが、ここに命の素たる色をのせる。」
言って兄上は赤い色を試しに取り出しにゅるっと出してくれる。
血のように赤い色味は確かに命を吹き込みそうなのじゃ!
「そして、この筆を使い動物達に色をのせる。
太い筆と細い筆があるから場所によって使いわけることができる。」
「ほー!」
使い古しの筆が何本かあった。
3人で遊ぶには充分な本数が揃っておる。
「成る程、使い方はわかったのじゃ!」
「よし、ではお前達は楽しめ。俺はバケツに水を汲んできてやろう。」
「ありがとう、兄上!」
「礼には及ばぬよ!」
ハハハハと笑い兄上はひとまず部屋から出て行く。
「よし、使い方はわかった!早速色を塗ろう!」
「うむ!命を吹き込むのじゃ!」
「綺麗に塗ろう!お兄さんに見せるんだから!」
わし達は真剣に絵の具で色を塗りたくった。
色を塗り終えた後、夕飯に呼ばれる。
なのでわしらは塗った動物達を粘土板に綺麗に横一列にのせてリビングに向かった。
今夜はカレー!
皆で食べるカレーは最高に美味しいのじゃ!
「ごちそーさまでした!」
わし達は手を合わせてごちそうさまをするとわしの部屋に戻る。
もう遅い時間だから荷物を持って二人は帰るのじゃ。
すでに稔の母君は迎えに来ており、朱雀様はお一人で帰られる。
二人は準備を終えて塗りたての動物を見る。
今夜は乾かす為に動物達は我が家にお泊まりじゃ。
動物達にバイバイする為に側に行き…異変に気付く。
「…なあ、おかしくね?」
「うん、なんで?」
稔と朱雀様が呟いてわしを見る。
いや、何故わしを見る?
「まや!お前の仕業だろ!」
「なんじゃと!?濡れ衣じゃ!」
「こんな異常事態引き起こすのはあんたしかいない!」
言って二人は同時に動物達を指さした。
そこには…。
明らかに動いている動物達が…。
決して角ばった動きではない。
そういう生物がいるかのような動きだった。
「知らぬ!知らぬぞ!」
「嘘つけ!」
「なんとかしなさいよ!」
稔と朱雀様が詰め寄ってくる。
「まや?どうした?」
そこに兄上が入ってきた。
「兄上ぇぇえ!」
わしは半泣きで兄上に助けを求める。
「ど、どうした?」
「動物が動いたのじゃぁあ!」
びしっと指を指した先で粘土板の上で好き勝手動く動物達。
兄上はしばし見入った上で大きく深呼吸をした。
そしてわしを見る。
「まや。」
「わ、わしは何も知らぬよ!」
「動物が動くのは当たり前だろ?」
『え?』
わしら3人声がハモった。
「まや達は動物を作ったんだろ?
なら、動くのは当然のこと。上手に作れたな。」
兄上はこともなげに言う。
そ、そういうものなのじゃろーか?
「言ったろう、色を塗る行為は命を吹き込むと。」
はっ!
稔と朱雀様ははっとする。
確かに兄上はそう言っておったが…!?
「だから命を動物達は得たのだ。」
「そうなのか…?」
何やら疑う稔。
兄上がそういうならそうだと納得してしまえ!
「とはいえここまでうまく命が宿ることはそうそうない。
命の神が味方したのだろう。
次があるとも知れぬゆえ、この奇跡を存分に楽しめ。」
そう兄上が言うと、わしらは動物達に視線を映す。
動物達はきょとんとした表情でこちらを見ていた。
わしはおそるおそる動物に手を伸ばす。
わしは正直、この動物達が恐かった。
しかし、創造主がわかるのかわしが作った犬と馬が手のひらに乗ってきた。
「おお」
「俺も俺も!」
稔も手を伸ばす。
すると稔の作ったヘロヘロ猫が稔の手のひらに乗っかる。
「触り心地は粘土だな。」
「わ、私も!」
おそるおそる朱雀様も手を伸ばす。
可愛い犬が朱雀様の手のひらに乗りぺろりと舐めた!
「可愛い!」
「やべぇ!連れ帰っても平気かな!?」
「まあ、平気だろうがこの奇跡いつまでもつかはわからぬよ?」
「うん!わかった!」
二人は嬉々として犬猫を連れ帰っていった。
そして、わしの手元に残った二匹。
不思議だのぅ、不思議だのう。
そう思いつつ弄っていたら犬の首の1つが火を吹いた。
サイズが手のひらサイズ故ライターの火サイズじゃったが本当に驚いた。
そんな粘土で再現できぬとこまで再現するとは!
この世界では色を塗ると命が物に宿る事もある?
それはまるであちらの世界の『創造魔法」ではないか。
わしがかつて魔王だった頃の得意魔法。
それによく似ている。
だが、こちらの世界では魔素が足りずお蔵入りした魔法の1つじゃったが…。
「物に色を塗ると命が宿ると兄上は言うが…。
これの化学根拠がわからぬ。」
この世界は化学の世界。
故に魔法は無い。
従って今の現象も化学的に解明出来るはずなのじゃが…。
どうにも出来る気がしない。
もしこれが魔法ならば、わしはこの世界に来て初めて魔素に依存しない魔法があることを発見したことになる。
もしくはわしが無意識に何かしたか。
後者の可能性もあるにはあるがわしは魔力の扱いを熟知している故、その可能性は低いと思う。
「そもそも、この動物達はいつまで生きているのか。」
長く生きるとしたら何を食べるのか。
排泄はするのか、生殖行為はするのか。
いや、生きると表現したが触り心地は粘土そのもの故に粘土の域は出ていないような気もする。
ならばこれは動く粘土であり命を吹き込んだとは言えぬのではなかろうか。
粘土で再現していない、あるいは出来ないところまで作られているのも凄く気になる。
わしは馬を置いて犬だけを手のひらに乗せる。
スリスリしてくる可愛いやつじゃ。
しかし、しかしの。
「気になるからのー。」
わしは犬の体を真っ二つにした。




