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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
32/68

まったり珍道中

「…と、いうわけで仕入れた情報によると道化のグレムが怪しいという結論に達した。」

俺は魔王との会話を打ち切るとあいつらの元に戻る。

雑魚寝の部屋に勝手に酒瓶とツマミを持ち込んで床に座り込んで簡易の酒盛りをしていた。

「情報手に入るの早くね?」

レオナルドが胡座をかいてエールをラッパ飲みしながら言う。

「特急便使ったんだよ。」

「なるほどー。」

肉をモリモリ齧りながらジェシーがレオナルドの隣で頷く。

適度に酔ってるらしく特急便を使ったと仮定しても早すぎるという事に誰も気づかない。

もし気づいたら酒をとことん勧めて記憶を飛ばしてやろうとおもったのだがその必要はなさそうだ。

「道化のグレム…!中々の大物ですね。」

ケイフォルがレオナルドの後ろに直立不動でお上品にワインをグラスで口に含みながら言う。

いや、座れや。

「知ってるのか?」

「そりゃ、有名でしょ。」

シャルがエールをジョッキでぐびっと煽りながいう。

ふと思ったがこいつ成人してる…んだよな?

「魔笛を吹いてその音色を聴いた者を幼児化させ

さらには眷属に鼠を使い街に疫病を流行らせる。」

アッサムが横で何か肉を捌いて串に刺してコンロで焼いている。

あー、香ばしい匂い…。

ごくりと俺の喉がなる。

「食べるか?」

「おう。」

俺はアッサムの隣に胡座をかいて座る。

そして皿にのった何かの串焼きを貰う。

「美味い!」

熱々でジューシーで甘辛のタレ最高!!

ヤバいこれとエールの無限交互地獄に陥るパターンだ!

「それはよかった。」

「アッサムは料理得意なんだよ!」

シャルが何故か得意げに言う。

「へえ。確かにこれ美味いな。ってか何の肉だ?」

大海蛇(シーサーペント)

ぶはっ!

俺は食べていた肉を吐き出す。

目の前にいたレオナルドが顔面で受け止める。

「こらっ、汚ねぇ!」

「す、すまん、ってかなんつぅもん食わせる!」

蛇肉だぜ!?

たしか大海蛇(シーサーペント)の血液には毒があり従って食えなかったはず。

いや、そもそもいつ採ってきた!?

全くきづかなかったぞ!?

「血抜きすれば食えるからレオナルドさんに頼んで持って帰ってきた。」

「面白そうだったからな!」

ケタケタ笑うレオナルド!

共犯かよ!ってか血抜きすれば食えるって初めて知ったよ!

アイテムボックスに変なもん突っ込むな。

「それに、蒲焼きにしてやるって言っただろ?」

言ってたな。

言葉の綾だと思ったよ。

そう思っている横でアッサムは皆に蒲焼きを振る舞う。

なんの躊躇いもなく受け取っていく面々…。

「うほっ!これ白飯の上に乗せて食うとうめぇぞ!」

嬉々としながら白飯の上に蒲焼を乗せるという新しい料理を創造して掻っ込むレオナルド。

「なあ、よくお前ら躊躇なく食えるな…」

「僕らはアッサムの腕を信用してるもん!」

「そーそー!」

シャルはあっけらかんと言い、ジェシーは頷く。

「俺らは多少の毒は解毒出来るしな。」

「その通りです…あ、本当、美味しいですね。」

ケイフォルはわざわざ串から肉を外してフォークで食べる。

お上品だなぁ。食らいつけばいいのに。

ってか、気にする俺がバカみたいだな。

俺は諦めて再び口にする。

うん、普通に美味い。

「ってか、グレムかぁ。討伐したら魔笛手に入るかな?」

ジェシーがおもむろに言う。

「欲しいのか?」

「吹いてみたい。」

俺の問いにあっさりと答えるジェシー。

いや、悪魔の持ち物欲しがるってさぁ。

躊躇いとかないのかよ。

「そういや、お前唄うまいのな!」

レオナルドが思い出したように言う。

「まあな!ばぁちゃん譲りよ!」

褒められてまんざらでもないのか照れ隠しに踏ん反り返るジェシー。

「いや、確かにあれは圧巻だった。」

魔物を誘いだす程の歌声って人外だろって感じだ。

「そういやお前ら短期間でCランクに上がったって言ってたな。

もしかして、ジェシーの唄声で魔物を誘い出して討伐してた?」

「まぁね!」

シャルが頷く。

魔物を自ら呼び出すって危険極まりない行為だ。

しかし、それを可能に出来るのはひとえにアッサムの治癒魔法のお陰か。

怪我をすること前提の無茶な討伐を繰り返せばそりゃランクも上がるわ。

「いーねぇ、お前らの馬鹿さ加減嫌いじゃねーな!」

酒の力かはたまた先の討伐で認めたかレオナルドとジェシー達は意気投合している。

まあ、いがみ合うよりましっちゃましだ。

「でも、魔笛が欲しいって言っても魔力ないんだろ?

だったらただの笛だぞ?」

魔笛なんて見たことないからわからないがおそらくグレムの魔力を底上げしているマジックアイテムだろう。

しかし、魔法とは縁のないジェシーが吹いたって単なる笛だ。

「そうだけどさっ!魔族が吹く笛の音色って興味あるし!」

「歌い手は楽器にも興味があるものなのですね。」

ケイフォルが言う。

「そうそう!」

笑いながらジェシーは言う。

「まあ、魔力を込めて吹けば危険な品だがジェシーが吹けば安全だろ。」

「じゃあ、グレム討伐したら笛は俺にくれ。」

「ああ、いいぞ。」

俺が持ってても使えないしな。

「まあ、そもそも生きているのかもわからないんですけどね。」

肩をすくめてケイフォルが言う。

「ま、魔王復活希望組にこれといって他にあてがあるわけでなし、とりあえずはグレムの生死と生きているなら討伐ってことでいいか?」

「了解!」

そう結論が出たところでくだらない酒盛りへと突入したのだった。



「あー、頭いてぇ…!」

「まだ言ってる。」

レオナルドが頭を押さえながらブツブツ言うのを横で聞いていたシャルが面倒くさげに返す。

「お前らはいいよな、回復魔法が効いて。」

「まーな!」

現在、爽やかな午後の昼下がり。

俺達はトンネルを通過して旅を続けていた。

しかし、昨日の酒盛りが効いたかレオナルドとケイフォルは中々グロッキーである。

対する三馬鹿どもはアッサムの回復魔法で状態異常を解除され足取りも軽い。

俺?俺はザルだからそもそも二日酔いとかにはならないんだ。

それに、別件で俺は機嫌がいい。

「しかし、まさかAランク冒険者がアイテムボックスを持ってないとは驚きですね」

痛むこめかみを押さえながらも口が悪いケイフォル。

「悪かったな。」

しかーーし!セイニョルが別れ際に俺にアイテムボックスをくれたのだ!

これで邪魔な荷物ともおさらば!って俺手ぶらだけどな!

ポケットの中にある小銭以外何も持ってない。

冒険者とは思えない程の身軽さだ。

「しかも俺達まで貰っちまった!」

「嫌なオカマだったけどこれだけは助かったね!」

ジェシーの言葉に頷くシャル。

そう、なんとジェシーもアイテムボックスを貰ったのだ。

さすがにこいつらは手荷物があったので今はジェシーが一括してアイテムボックスの中にいれている。

「しかし、アイテムボックスは冒険者ギルドの独占商品のはず…。

なんで奴隷商人であるオカマが持っているのですかね?」

「それはほれ、邪の道は蛇だよ。」

「それで流すにはいささか問題があるかと?」

ケイフォルがジト目で言ってくる。

「まあな。でも奴隷商人なんてアングラ商売やってればそういうある筈のない商品を持っていたりするもんだ。」

特にセイニョルは奴隷商人として人間の国だけでなく文字通り世界中を旅している。

危ない目にもあうだろうが、気にしないだけの力を奴は持っている。

それは戦う力ではなくて情報の力。

ヤバい場所は事前に察知し近づかない。

逆に己の力になると踏めば犠牲は厭わず手に入れている。

それは打倒魔王という目的があったからこそやってきた行為だが、魔王が死んだからじゃあおしまいって訳にはいかない程度にはアングラな部分に奴は来てしまった。

あいつは生涯この道で食ってくしかないのだがそのお陰で今回魔王復活の情報を得たのだから何が幸いするかわからない。

俺ですらあいつの底力はわからない。

世界中に奴の息のかかった奴隷がいるのだ。

どこで何をやっても奴には筒抜けというのは本当に恐ろしい。

「そういうものなんですかねぇ。」

未だ納得はできていなさげなケイフォル。

「まあ、とりあえずオカマの事は忘れていこーぜ!」

ジェシーが明るく言い放つ。

「そうそう、トンネルのおかげで次の街には予定より早く着きそうなんだしさ!」

俺のタグ再発行の為現在も進行中。

グレム探索よりもそっちの方が急ぎだ。

なにせ今日明日にも魔王が復活する訳ではないがタグがなければ俺は自分の身分を証明するものが何もないし、何より金がマジ少ない。

ここらで何か依頼の一つも達成しないと数日以内に行き倒れる。

「全く、なんでAランク冒険者が金欠なんだよ。」

呆れた声でレオナルドが言ってくる。

「そんなもん、酒と女に消えるからに決まってんじゃん。」

「はあー?酒はともかく女って買うもの?」

うわっ!

俺は顔をひきつらせる。

でましたよ、顔面偏差値の高い人の上から目線!

レオナルドの顔は改めてみなくても、かなりかっこいい。

男の俺が惚れ惚れする程だ。

そして声もいい。

その顔を女に近づけ耳元で適当に愛を囁けば面白いように女は落ちるだろう。

くっそーーー!羨ましいっ!

「女を買うっていう発想は今までなかったですね。」

しみじみと言うケイフォル。

こいつもレオナルドとは違う形で顔立ちが整っていやがる。

無表情で冷たそうな雰囲気だが、少し強気で攻めていけば女はころっといきそうだ。

あーーー!こいつら爆死しねぇかな。

「ファリスさん!俺達も金がないんでそこはおんなじっす!」

ジェシーが話に入ってくるが…金がないのは同じっていうことは女は買わねぇって言ってるも同然じゃねぇかよ!

そういや、こいつも…!

ちきしょう、こいつは歌を唄えばどんな極上の女の心も蕩けさせることができそうだ!

「お前らはなんで金がねぇんだよ?」

「賭事。」

シャルが言う。

俺は賭事はやらねぇな。

そんな金があるなら女を…って虚しい。

「全財産擦ったのが原因でファリスさんと知り合った。」

アッサムが言う。

「この二人はともかくお前は真面目そうなのに、よくやったな。」

レオナルドが言う。

「何げにアッサムは賭事好きだよね。」

「まあな。それに俺は別に真面目ではない。」

「マジで真面目ならこいつらと一緒にはいないんじゃないか?」

「ちげぇねぇな!」

レオナルドが豪快に笑う。

そんな阿保な話をしながら、一人旅も悪くなかったがこうやって複数での旅もいいもんだと俺はつくづく思った。

どーも、魔王討伐時のパーティメンバーにいい印象がなく今まで一緒にパーティ組まないかという誘いは全て断ってきたが…。

今後は臨時で組むくらいならしてもいいかもしれないな。

そう漠然と考えていると…街が見えて来たのだった。




魔法豆知識

治癒魔法:怪我、病気を治す。

回復魔法:麻痺、解毒、錯乱などの状態異常を解除する。

または失った体力を戻す。但し、魔力は戻らない。

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