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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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魔王様は復活に興味はない

「はあ?ある訳なかろう?」

わしは眉をひそめて言う。

挨拶もそこそこになんとまあ、イかれた話をしてくる。

「大体、出来る訳なかろう?」

わしは死に異世界に転生したのじゃ。

終わった話を蒸し返されても困る。

「だよなー。」

勇者はほっとしたような口ぶりで言ってくる。

「…何かあったのかの?」

わしは聞いてみる。

頭の出来がイマイチな勇者が自分で魔王って復活出来る?なんて疑問を抱く事さえ出来ぬであろう。

「いや、こっちの世界でお前を復活させようっていう動きがあるらしいんだ。」

「なんと、迷惑な!」

わしは素直な感想を漏らす。

わしはこっちで楽しく人間ライフを送っているのだ。

わしの意思を無視して勝手に復活など企まないで貰いたい。

「でさ、どーも、魔族が絡んでるくさいんだけど、お前の知り合いでそういう事やらかしそうな奴知らない?」

しれっと気楽に聞いてくるが、聞かれてすぐには思い当たらない。

「そう言われてもな。そもそもお主との激闘で大半の魔族は死滅したのだろ?

誰が生き残っているのかすらわからぬ状況で聞かれてものぅ。」

「確かに。でも、ほら、生きてる死んでる抜きにこいつなら出来る、やらかしそう!って奴はどうだ?」

やらかしそうな奴のう。

「そうだのぅ。やらかしそう…ならば、やはり四天王かの。」

わしは顎に手を置きかつて最強の側近四人組の顔を思い出す。

魔界宰相レイナード

凍えるような銀色の長髪を一つにまとめ紺碧の瞳が邪悪そのもの。

氷河の魔法が得意な輩。

魔界公爵アシュレイ

焔のような紅の髪に闇色の瞳。

人間をはじめとする数多の種族の街街を焔で焼き払った残酷な魔族。

魔王近衛軍団長ルガタナ

金色の髪は丁寧に切りそろえられており、銀色の瞳は闘志の色を常に宿している。

アダマンタイトの盾とオリハルコンの剣を持ち果敢にも一人で勇者一行に挑んだ強者だ。

最後に魔界の底に寝床を持つ巨大な狼カシルノ。

青毛のたてがみ一本一本に雷を纏わせており、その身に触れるものすべてを一瞬であの世に送る。

いずれも魔族の中でもずば抜けて高い魔力を保有し、戦闘能力に長けたものだった。

何よりわしに絶対の忠誠を誓っていた。

故にもし生きていればわしを生き返らせようと考えるかもしれない…

「…が、奴らは死んだしのう。」

魔王城にて行われたあの戦闘。

あの戦闘時、4人はそこにいた。

わしですら死んだのに、いくらなんでもこいつらが生きているとは思えない。

「明確に死体を見たわけじゃないけどな。」

「それを言うならわしの死体だって見ていないだろう。」

「ああ、木っ端微塵になったから…ってそうだ、魔王復活希望組はお前の体持ってるんだと。」

「はあ?そんなわけあるか。」

わしは突っ込む。

「たった今わしの体が木っ端微塵と言ったであろう。

なのに体がある?馬鹿も休み休み言え。」

「俺だって言いたい訳じゃない。

だが、俺が持ってる最高の情報網から聞いた話だ。

間違いないと思っていい。

そういや、その体に死者蘇生の術をかけたが魂は宿らなかったらしいぞ。」

「そりゃわし、ここにおるもん。」

勝手に魂を引き出さないで貰いたい。

「お前なんともなかったのか?」

「全然。」

そんな事されてたなんて初めて知ったわ。

さすがの禁術も異世界までは対応していないのだろう。

「そうか。ならいいが。他には誰かいないのか?」

言われて再び考える。

「そうだの…復活などという馬鹿げた事を思いつくのは道化のグレム…あやつは少なくてもあの時城にいなかったし、もしかしたら生き残っているかもな。」

ただ、気まぐれな奴でわしを生き返らせようとまでは思わないような気もする。

「あとは、名も知らぬ民間人か…」

「民間人?」

「わしが死んだ事で魔族は不遇な身となったであろう。

ならば、わしの復活を希望するのも理解出来る話じゃな。」

「民間人にまで話が広がるとどうにもならない。」

わさりと髪をかきあげる音が聞こえた。

「魔王復活を止めるため魔族を根絶やしにしようとする動きがあるんだ。」

「ほう。」

「ほうってお前なんとも思わないのかよ!?」

「そう言われても。わしが魔王だったのは昔の話で今は異世界の人間ぞ?

わしの事は気にせず殺したければ殺してよいぞ。」

「おいおい!」

慌てたように勇者は言う。

しかし、本当にどうでもよいのだ。

勇者には悪いがそっちの話はもうわしには関係ない話。

わしはすでにこっちの世界に生まれまだまだ短いが過ごしているうちに大事なものができた。

こちらの世界を壊そうというならば、少しは考えるがそうでないなら勝手にしてほしい。

わしは異世界の人間。

もう、魔族ではないから彼らを同族とは思えないし、魔王でもないから彼らを守る責任もない。

「まあ、お主も知ってる通り復活させたい魔王はすでに転生済みで復活の芽はないのじゃ。

もっと気楽に行けばよい。」

「そう言われても…」

「魔王復活阻止の為、流れ的に魔界へ行くのじゃろ?

ならばその魔界で出会った適当な魔族を数体仕留めて魔王復活阻止したりってやれば、まあ、周りは納得するのでは?」

もう、わしは投げやりに答える。

小難しく、そして無意味に優しく考えるから面倒な話になるのじゃ。

ほんの少し無慈悲になれば、大したことではないと気づくだろう。

魔王たるわしがいないそちらの世界では、文句なしでお主が最強なのだからな。

「そうか、魔界!」

おい、勇者よ今更その事実に気づいたなんて言わぬよな?

「行きたくねぇーーー!」

「頑張れ勇者。」

わしは心が全く篭っていない応援を口にする。

わしも異世界での生活が馴染んでしまい今更魔界でなど暮らせない。

いや、文明ではこちらはあちらより500年は進んでいるのじゃ。

魔界に限らずどこの国でも暮らせない。

ウォシュレットのない世界など死んでも行きたくないのじゃ。

わしは一生日本で暮らすのじゃ!!

「はあ…お前からは大した情報は貰えないし、魔界には行かなきゃなんねぇし。

本当、最悪だぜ。」

「大した情報じゃなくてすまんの。

だが、お主は民間人には手を出したくないのじゃろ?」

「まあな。非戦闘民をいたぶる趣味はねぇ。」

「そうか、ならばとりあえず道化を探すという目的をもって行けばいい。

そいつが生きていればそいつに罪をなすりつけて殺してよいし、死んでいれば死んでいるという情報が入るまでは民間人に手を出さなくてすむというものだ。」

「グレムだっけ?どんな奴だ?」

「見た目はピエロそのもの。

派手な服装、派手な化粧、薄気味悪い奴だ。」

まあ、見ればすぐわかるだろう。

悪役な雰囲気を適度に醸し出しているし、わしが死ぬ前には人間もその他の種族も分け隔てなく殺してきた奴だから、殺すのに躊躇はいらないだろう。

「そうだな。そいつの生死が判明する前に本当の魔王復活希望組を探して天誅食らわしてやればいい。」

「そういうことだ。まあ、草場…いや異世界の陰からそっと祈っておるぞ。」

わしはそんなことより明日の遊びのほうが大事なのだ。

明日は休日!

丸々一日朱雀様と稔と一緒に変身ごっこなのじゃ!

楽しみなのじゃーー!



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