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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
28/68

鷹と鷲の違いなんて鳥博士でもない限りわからないから

「…は?」

「いやーん、さっすがのファリスちゃんも固まったわーん☆」

「いやいやまてや。なんで今頃そんな情報が!?」

「うふふ☆」

これが美女なら蠱惑的と表現してもいいだろう微笑みを浮かべるセイニョル。

「っち!それも含めて問題解決後ってことか。」

「そーいうこと☆」

「なーにがそーいうこと☆だ!

俺がこの辺りにいることも含めてお前わざと問題起こしただろ!」

「あは☆わかっちゃった☆」

「わかっちゃった☆じゃねーよ!」

俺は久しぶりにマジギレする。

そうだよ、こいつはそういう奴だ。

こいつはその卓越した情報収集能力で俺がこの辺りをうろついている事を知っていた。

だから俺に接触をはかり魔王の情報を渡す為に大義名分を作り上げた。

そう、こいつは最初から俺に情報を渡すつもりで地底湖に眠る大海蛇(シーサーペント)なんてもん釣り上げやがったのだ。

盗賊団の隠し財産?

そんなもん無い事くらいわかってただろーよ。

無視してもいいかって?

全力で無視したいがそーもいかねぇ。

一応俺がぶち倒した魔王の新情報だ。

仕入れておくべきだし、なにより今ここに大海蛇(シーサーペント)がいるのは間接的に俺のせいでもある。

「いっとくけど、わざわざ俺を利用して無理矢理押し付けてくる情報がくだらなかったら八つ裂きの上大海蛇(シーサーペント)の餌にしてやるからな。」

「うふふ☆私の情報がくだらなかった事があって?」

「…お前の存在そのものがくだらないのにな…」

「それどーいう意味?」

「まんまだ。」

俺は投げやりに言う。

「あのー…」

「なんだよ?」

おずおずと手を上げて声を出すジェシー。

「なんでファリスさんが魔王の情報を欲しがるんですか?」

ひきっ!

俺の表情が固まった。

しまった!こいつらの存在を忘れて普通にオカマと話しちまった!

な、なんて誤魔化すか…

「あはーん☆そんなこともわからないなんて所詮なりたてCランクねぇん☆」

「はあ!?」

「なりたて?」

「あらん、Bランクは知らなかったのん?

この子達はこの間昇格試験を受けて合格したばかりのひよっこよん☆

まだ、Cランクの依頼すら受けた事がないわぁん☆」

「はあー?」

「貴方方そんな立場であんな無謀な事をなさったのですか?」

烈冷の使者が噛み付いてくる。

「いや、まあ…」

「そう言う事もあるっていうか…」

ジェシーとシャルは悪戯がバレた子供のように視線をはずして作り笑いを浮かべる。

「もう終わった事だ。それよりもファリスさんが魔王の情報を欲しがる理由を教えて貰おうか?」

アッサムは建設的に話を逸らした。

「簡単よん☆昇格の為☆」

『昇格!!』

図らずもこいつら全員の声が重なった。

「Aランク冒険者がその上に行くにはSランク相当の任務を受ける必要があるわ☆」

Cランク、Bランク、Aランク昇格試験はギルドが用意した特殊任務遂行、それに対してSランク昇格試験にギルドは特殊任務なんてものを用意してくれない。

自分で世界中を旅して探し出し達成する必要があるのだ。

しかし、世の中Sランク昇格試験に相当するような事件や問題なんて無い訳で。

史上初のSランクに上がった冒険者が当時勇者やってた俺で特殊任務は魔王討伐だった。

なお、Sランクはこの魔王討伐完了後に新設されたクラスなので昇格試験がないのはそのせい。

故に俺が最初で現状唯一のSランク冒険者に一応なる。

タグはもうないから完全に伝説になっちまったがな。

「な、なるほど!

ファリスさんは二人目のSランク冒険者を目指しているって訳か!」

「なんてすごい人なんだ!」

「あの勇者に追いつこうとは…」

「こ、これがAランク冒険者…!」

「侮っていたかもしれません。」

五人が感嘆の声をあげる。

あの、違うよ?違うけど否定出来ないし…!

「そーいうことなら!このジェシー!!

ファリスさんの為にもその情報をゲットに全力尽くさせて頂きます!」

「任せてよ!」

「全力を尽くそう」

「Cランクが大海蛇(シーサーペント)を倒せるかよ!」

「そうやって後先考えないで行動した結果をもうお忘れですか?」

烈冷の使者が小馬鹿にしたように言う。

「だ、だけどさぁ…」

何せ前科があるので大きく反論出来ない三馬鹿ども。

しかし。

レオナルドはニヤリと笑う。

「俺達も行ってやるよ!」

「元々、彼に着いていく上で必要な討伐依頼ですし?」

「それに俺達も魔王の情報は気になるしな!」

「まさにその通りです。」

「お、お前ら!」

ジェシーがキラキラした目でレオナルド達を見る。

「お話が纏まったところで早速なんとかして貰いたいんだけどなっ☆」

セイニョルが言う。

「おう!」

ジェシーが力強く言い、俺以外が立ち上がる…ってまて!

「待て!場所はトンネルの真下にある地底湖…なんだよな?」

「そうよん☆」

「広さはどれくらいなんだ?」

大海蛇(シーサーペント)がいるくらいなんだ、狭くはないだろう。

しかし、戦えるスペースがあるのかはまた別問題だ。

「そうねん☆広さはともかく、魔法なんか使ったら地盤沈下を起こして生き埋めになるかなっ☆」

「だめやん!」

俺は天を仰ぐ。

「俺、今魔法しか使えないんだけど?」

「あはん☆じゃあ、ファリスちゃんのお友達に頑張って貰いましょっ☆」

「はあーん?」

レオナルドがセイニョルを睨みつける。

しかし全く動じないセイニョル。

「ファリスちゃんと一緒に行動して一緒に魔王の情報を聞こうっていうんですものん☆

それなりの実力は…せめて最低限大海蛇(シーサーペント)くらい討伐できなくちゃねっ☆」

「貴方我々を試す気ですか?」

「当然よん☆それとも自信がないのん☆」

「なんだと!」

「やってやらぁ!」

「蛇の親玉なんて串刺しにしてやる!」

「仕留めた後は蒲焼だ!」

あっさりセイニョルの挑発にのるレオナルドと三馬鹿トリオ。

「じゃあ決まりね☆」

「一応俺も行くぞ」

「うふ☆武器は貸さないわよ☆」

「わかってるよ!」

ったく…万一こいつらがやられたら寝覚めが悪いからな…役に立つかはわからないがいないよりはマシだろ。

「過保護ーー☆」

「なんか言ったか!?」

セイニョルの世迷言に俺は全力で突っ込んだのだった。

「じゃあ、行ってくる。」

「あ、見張りでこの子連れてって。」

そうセイニョルが言って指を鳴らすと二足歩行の猫が入ってきた。

妖精猫(ケットシー)!」

「にゃっ!」

すちゃっと前足を手のように使って敬礼する。

「見張りとはどういう意味です?」

「俺達が逃げるってか?」

「逃亡防止の意味も勿論あるけど、一番は不正防止ね☆」

「不正だあ?」

「ファリスちゃんが討伐したのにさも自分達が…ねぇ?」

『誰がそんなことすっかぁ!』

意味ありげな視線を受けてジェシーとレオナルドが同時に激昂する。

「そーならないことを祈るわん☆

子猫ちゃん、ちゃぁぁんと見張って正しい報告をすること☆いいわねん☆」

「にゃっ!」

「…妖精猫(ケットシー)って人間語が話せたかと思うが…?」

アッサムが首をかしげる。

「あはん☆よく知ってるわねん☆褒めてあげるん☆

この子は捕まえたての奴隷なのん☆

だから物凄く反抗的でどーしょもなく口が悪いから喋るの禁止しちゃったのん☆」

「え?妖精猫(ケットシー)って奴隷に出来るの!?」

「それは調教魔法(テイム)ではないのか?」

「あくまで奴隷魔法で主従関係を結んでいるのよん☆

調教魔法(テイム)じゃないわん☆」

「にゃにゃっ!」

こくりと頷く猫妖精(ケットシー)

「まあ、なんでもいいよ。行くぞ!」

こいつの非常識さをチクチク責めてたら日が暮れる。

俺は促して大海蛇(シーサーペント)討伐に向かったのだった。



俺ら冒険者一向は二足歩行の猫を通行証がわりにすることで難なくトンネル内部に入ることができた。

これで追い返されたらマジでキレてた。

で、セイニョルが真下に開けた穴をまじまじと俺達は見ていた。

なんつぅか…

大海蛇(シーサーペント)釣る気満々だったんですね。」

不機嫌さを隠す気もなくケイフォルが言う。

でかいでかい大穴見ればそりゃ不機嫌にもなるわな。

しかもさ、大海蛇(シーサーペント)が開けたならまだ許せる。

明らかに人工的にここまで大きく掘りやがったな、セイニョル!

堀り口がやたら綺麗だ!

「ほんと、ふざけたオカマだ。」

「あのオカマの言葉じゃないけどファリスさん友達選びましょうよ。」

「あれは友達じゃねぇよ!」

断じて違う!そこは譲れねぇ!

「とりあえず下まで降りる必要があるのですが…」

『…』

俺達は再び下を見る。

…深い。

底が見えない。

下手に飛び降りたら骨折…どころか死ぬかもな。

「…俺は飛べるが、お前らは運べねぇ」

「えー!!前は運んでくれたじゃないっすか!」

「あれは色々偶然が重なった結果だ!」

手元にスマなんとかはあるが魔王の指示無しにやったら大惨事な気がする。

「…私も飛べます。」

不本意そうな顔でケイフォルが言う。

「おい!」

それに焦るレオナルド。

どうやら秘密にしておきたかったようだ。

そーか、こいつ鳥か。

「片手に一人ずつ掴んで飛べます。

なので一度繰り返せば全員下に行けます。」

「おー!ケイフォルさん!ありがとう!!」

キラキラ笑顔でジェシーがケイフォルに抱きつこうとしてレオナルドに顔を掴まれ止められる。

「寄るなCランク!」

「ひどい…!」

ぐすんとわざとらしく鼻をすする。

「ったく…お前、いいのかよ。」

「仕方ありませんね。」

言うが早いか、ケイフォルは着ていた服を脱いで背中の翼を見せてくれる。

『!』

三馬鹿トリオが息を飲む。

「おー、その羽は…鷹?」

「鷲です!」

ケイフォルが即座に訂正する。

いや、鳥博士じゃないから、羽だけで鷹か鷲かを見分けるのは無理なんですけど。

「え?鷲??羽???」

ジェシーが混乱気味に俺とケイフォルを交互に見る。

「っつぅか、おめぇ気づいてたんかよ?」

「まぁ、魔法が効きにくいって言ってたしな。」

「知ってらしたんですね。」

苦々しそうに言うレオナルドに無表情に言うケイフォル。

「えっと…もしかして獣人?」

シャルがすまなさそうに聞いてくる。

「ええ。大鷲人です。」

「初めて見たな。」

アッサムが興味深げにケイフォルの後ろに回ってしげしげと羽を見る。

「さすがファリスさん!獣人と見抜いていたとは博識でいらっしゃる!」

ジェシーが太鼓を持ち始める。

「まあ、俺も獣人の知り合いなんて一人しかいなかったもんだからお前らが獣人と気づいた時は結構驚いたんだぞ?」

「本当かよ?」

「表情からは全く読めませんでしたね。」

「いや!そういえば以前ファリスさんはお二人に何か言いたげな熱い視線を送ってました!」

「なんか誤解を招く言い方だな。」

熱いってなんだよ、普通だよ。

全く…

しかし、獣人は本当に珍しい。

旅を続ける冒険者でも会えるかどうかは運次第。

何故なら獣人の国は現在鎖国中で入国するのも獣人国民が出国するのも現状ほぼ不可能。

更には普段は人の姿とかわらないのでそもそも獣人だと気づかない。

それこそ、魔法が効きづらいという特徴を見るとか獣人としての本性を出すとかしてくれないとまず気づかない。

あるいは告白してくれるか…だけど、獣人って疑い深いから滅多に自分からは獣人と告げたりしない。

それこそ、信頼してくれないと…。

俺は知り合いの獣人を思い浮かべる。

…あ、あれは例外だな。

あれと比べたらこいつらに失礼だ。

「とりあえず、ケイフォルのおかげで下にはいけるな。」

「任せてください。」

言ってケイフォルは右手にレオナルドを左手にジェシーをもって羽ばたいた。

俺も魔法で下に行く。

ほぼ自由落下と変わらないスピードで降って数分で俺達は最下層にたどり着いた。

地面に降り立つと同時に俺は魔法で明かりを灯す。

ジェシーとレオナルドをケイフォルが降ろすと当初の予定通りケイフォルは再び上に向かう。

「しかし暗いな」

目を細めてレオナルドが言う。

「魔法の明かりだとお前らは見辛いのかもな。」

「それを差し引いても暗いだろ。」

言ってレオナルドはアイテムボックスを開いてランプを取り出す。

普通の火から生み出される光がそこにはあった。

魔法の明かりの方が見やすいし手ぶらで済むのだが獣人には人間の理屈は通じない。

「地底湖…見えませんねぇ。」

「もう少し奥に行けばあるだろ。」

そんな無駄話をしているとケイフォルがアッサムとシャルを抱えて降りてきた。

…ん?

ケイフォルの頭に何か…

「にゃー!」

あ。この猫忘れてたわ。

どうやら置いていかれてなるものかとしがみついてきたようだ。

髪を乱されケイフォルは不愉快そうだった。

そして地面に降り立つとと同時に羽を畳んで服を着る。

こうやって羽を服の下に収納してしまうと本当、獣人だなんてわからない。

「お待たせしました。」

「おー、よし皆揃ったし行くぞ!」

「おい、張り切ってるところ悪いが今回の蛇は俺の獲物だ。」

「俺達のっすよ。まあ、ファリスさんの出番はないってのは同意するけどなっ」

「お前らの出番はないっつーの。」

「そんな事言ってると足元掬われるよ?」

「貴方方にだけは言われたくありませんね。」

「…見えたぞ。」

アッサムの低い声に全員真正面を見据える。

そこには静かな湖面を携えた巨大な地底湖があったのだった…!






魔法豆知識

奴隷魔法:魂の欠片を練り込んだ契約書を魔術で作成、そこに血判を押すことで成立。

一度奴隷に落ちれば二度と這い上がれない。

契約の破棄は即ち奴隷自身の死を意味する。


調教魔法:魔物を意のままに操る魔法。

戦闘に特化した魔物を調伏することで術者の戦闘力を底上げする。

精神操作系統の術で習得は魔法の中でも最高難易度を誇る。また自身と魔物との相性の良し悪しで使役出来るかどうかも決まるので習得出来たからといって実践に使えるかどうかは別問題。


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