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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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小麦粉も思い込めば薬になる〜勇者視点〜

気づけば夜8時だったみたいだ。

と、いうか、昨日といい、今日といい持ってないはずのスマなんとかがどーして俺の尻ポケットにあるのか。

これ、絶対呪いのアイテムだろ。

俺は引きつった声で挨拶とやらをする。

「もしもし?」

「もしもーし、生きとるかぁ?」

「おう。おかげさまでな。」

お気楽ご気楽な声が聞こえたので、俺は脱力した声で答えた。

「で、色々聞きてぇんだがいいか?」

「まあ、そうくるだろうなとは思っていたので構わんよ?」

意外にもあっさり俺の希望に応えてくれるみたいだ。

だが、こいつのことだ。

うまく言いくるめられるかはぐらかされるかするかもしれねぇ。

俺は慎重に耳を傾ける。

「まず、俺は昨日手元にスマなんとかを持ってなかった。

にも関わらずなんで気づいたらポケットの中にこいつが入ってたんだ?」

「そっちにスマートフォンを送れるのだ、わしの手元に戻す事も容易い。

勇者の手元にスマートフォンがない場合は一度わしの手元に戻して再度其方の元に送還しておるのじゃ。」

「まじかよ、呪われたアイテムよりタチが悪い。」

呪われてないのに呪いのアイテム以上に纏わり付いてくるって最悪だ。

「昨日はそれで助かったというのに随分じゃな。」

魔王は不機嫌そうに言う。

「いや、そいつは助かったし、礼はいうぞ?」

しかし、一応礼は言う。

俺は礼儀知らずじゃないからな。

どこかの誰かと違って。

俺はちらりとレオナルドもケイフォルを見る。

二人は少し体を引いて俺を…俺の持つスマなんとかを見ていた。

やっぱりこれ不気味だよな。

俺は泣きたくなった。

「ただ、魔力操作の理屈だけでも教えてくれ。

これはちょっとありえない話だからな。」

「理解出来るとは思えぬが…まあ、いいぞ。」

理解できないだって?失礼な奴だ。

「他人の魔力を操作してみたいとは魔王だった頃から思っていたのじゃ。」

そんな昔から希望していたのか。

それは人の心を自在に操りたいと言うのと同じくらい無理な希望だぞ。

「しかし、結局生前にはかなわなかった。」

有史以来誰も成し遂げてない偉業をそう簡単に成し遂げられても困るから。

「生まれ変わりこちらでは魔力は極小しか得ることができないのでそちらより危険度は低いと判断して実験を続ける日々。」

そして、死んで生まれ変わってまだやると。

異世界の連中はさぞ迷惑を被っているに違いない。

「しかし、ある日閃いたのじゃ。」

こいつが閃いたそれはまさに発想の転換とも言える。

「それが出来れば発動していないぶん周りへの影響は落ちると判断した。」

確か異世界は魔素が少なかったよな。

それでも影響があるのか。大丈夫か、異世界。

「もっとも容易な操作とは何か、を考えた結果が魔力量の増減だったのじゃ!」

その結果があれか。

俺は昨日のありえない出来事を思い出す。

スマなんとかでちょいちょいといじるだけで魔力量が操作できる。

過大な魔力に日々翻弄されてる俺には便利な術だ。

「魔力の持続時間から算出して魔力量を測る」

「ほー、そんなことできんだぁ」

その結果があのありえない数値か。

そんな計算が出来るってすげぇな魔王。

でもいつ持続時間なんて測ったんだ?

俺は不思議に思ったがとりあえず頷いた。

「ほー、そんなことできんだぁ」

「まあの。数値化が出来れば後は簡単。

雅楽魔法に音を遠くまで飛ばす遠耳、個人にだけ音を聴かせる近耳があったじゃろ。

あれの応用で魔力の増減を操作したのじゃ。」

あのスマなんとかでそんなことが出来るのか。

こんな軽くて小さいのになぁ。

異世界のカガクギジュツってのは凄いな。

「ほー。」

俺は感嘆の声をあげる。

でも、なんか腑に落ちないような気もする…。

スマなんとかの向こうにいる魔王の声に不穏な気配を感じるのは…気のせいか?

「のう、そんな話よりそっちの話を聞かせておくれ。

わしを討伐して何を得たのじゃ?」

魔王が話題を変えた。

ワザとか?

「おい?お前…」

不意にレオナルドに声をかけられ話に夢中になっていた事に気付く。

昔話はこいつらに聞かれたくないな。

俺は手で謝罪の意を伝え、席を立ち店の外に出る。

外にはチラホラ人がいるが俺に注目する人はいない。

酔い覚ましに外に出た農夫だと思われてるんだろう。

「あ、あー、…まあ、爵位は貰ったなぁ。」

外見農夫で爵位とか馬鹿みたいだ。

俺が魔王討伐で貰った唯一のものだった。

男爵位と共に苗字を名乗る権利も得て苗字もその時戸籍に登録したけど一度も使ってないし、今後も使う予定ないな。

苗字どころか本名も二度と名乗らない。

「ほう!じゃあお主今は貴族か!」

魔王が感心したような声をあげる。

まあ、彼から見たら、しがない平民風情の冒険者が貴族への大躍進であり典型的な成り上がりでもある…まさに英雄譚そのものだ。

「そして、美人の奥さんがいて…のう、お主、あまりフラフラしているとアリアナ姫に愛想つかされるぞ。」

まて。美人の奥さんってまさかアリアナ姫の事を言っているのか?

だとしたら、ふざけるなって話なのだが。

「いや、俺独身だから。」

「なんと!?お主、まだアリアナ姫に手を出してなかったのか!?」

なんでこいつは俺とアリアナ姫をくっつけたがるのか。

姫と勇者がくっつくのがお約束だからか?

「本命には奥手?」

「違うわ!!」

断じて違うわっ!!

「じゃあ、なんで結婚しとらん?」

「…こっちにも色々事情ってもんがある。」

多分、こいつには言っても理解出来ない事情がな。

「と、いうことはお主は貴族でありながら冒険者でもあり、お主の助けを求める者の為に今もなお頑張っておるのじゃな。」

よかった、突っ込んで聞いてこなかった。

「まあ、頑張ってはいる。お前は?」

前提条件は全く違うが俺は俺なりに頑張ってるさ。

「わしか?」

「おう、異世界の話も聞きたい。」

普段はそんな事気にしないのだが…あれか、酔ってるからか?

そんな飲んでないんだがな。

「ほー、お主がわしに興味を持つとはの。」

魔王はご機嫌だ。

「話が合う者がいないんだろ。」

「まあの。魔法の話や前世の話などわかるものはおらぬ。

しかし、孤独ではなくなったの。」

俺はお前を討伐してからこのスマなんとかを貰うまでずっと一人で流離ってきた。

いや、違う。

俺は討伐前も一人で旅をしていた。

こいつを討伐する為に臨時とはいえ組んでいたパーティからも浮いていた。

仲間と銘打っていたし偉業を共に成し遂げた仲でもあるが結局最後まであいつらは俺に打ち解けてはくれなかった。

こいつもそうだったのか?

「孤独だったのか?」

「家族以外話す者はいない。そんな生活だった故に話し相手を求めてスマートフォンを異世界に送還したのじゃ。」

そんな生活だった…と、過去形で言うということは今は違うのか。

そういえば保育園に通い始めたんだったな。

ならば人間の子と同じように友達とか出来たのかもな。

魔王の友達ってどんな奴なのか、一度会ってみたい。

まあ、異世界だから無理だろうけど。


コンコン

背中から音がして振り向けば店の中からジェシーが窓を叩いて笑顔で手をふっていた。

俺は自然と笑みがこぼれる。


なあ、魔王。

俺も今は一人じゃないぞ。

押しかけが9割だが、まあ、このまま一緒に旅して馬鹿して酒飲める仲間が…偉業なんて達成しないけど、気を許せる仲間が出来たかもな。


あんたが渡したスマなんとかが俺達を変えようとしているのかもな。


でも毎晩8時に強制会話は勘弁してほしいな。




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