もう八時です。
補助魔法をかけて全力疾走!
結局はそういうオチかよ!!
俺は内心毒づく。
普段との違いといえば…
「やっべー!にげろーーー!」
「あははは!楽しすぎるぅぅ!!」
「シャル!笑うと転ぶぞ!」
三馬鹿トリオが一緒だということか。
ってか、いいのか、成り行きとはいえ俺と逃げて。
まあ、森に入ったよそ者であることは間違いないので逃げなきゃギルマス直々にきつーいお仕置きが待ってるだろう。
「このまま峠を越えれば村があるよ!」
「さすがにそこまではマスターも追えまい!」
ふはははは!体力勝ちだな!
事務仕事に慣れ親しんだ体じゃ、例え補助魔法を使ってもそこまで走りきれまい!!
俺達はもう逃げ切ったつもりでいた。
しかし、それは間違いであったことを知る。
追っ手はいつの間にかマスターではなくなっていた。
代わりに追ってくるのは…烈冷の使者じゃねぇか!
「まじかよ!」
「最悪!」
「助けた恩も忘れて追いかけてくるとは!」
「さすがにBランク冒険者は振り切れないぞ?」
アッサムが言う。
「いーや、補助魔法を使えるこっちが有利!
村を超えた先まで行けば逃げ切れる!」
「いや、無理だな!」
ジェシーの言葉に俺は即座に否定する。
『え!?』
三人が俺を見ながら走る。
「多分、アッサムの魔力が切れて補助魔法が使えなくなり俺達が力つきる方が早い!」
「まさか!」
シャルが言うがかなりの確率でそうだ。
こいつらは気づかない…というか知らないだろうが、あいつらちょっと珍しい系だからな。
「じゃあ、やっちまいましょー!」
ジェシーが嬉々として言う。
「おいおい!冒険者同士のトラブルは厳禁だろ!?」
冒険者が冒険者を殺すと身分剥奪の上、二度と登録出来ない。
「手加減すればいいじゃないっすかぁ!」
「お前、見かけによらず武闘派だな!
しかぁし!俺は手加減なんて器用な真似出来ねぇんだよ!」
出来れば全裸で簀巻きなんてことにはならねぇからな!
俺が戦えば百パーセント相手を殺しちまう!
だから、逃げる以外の選択肢がねぇ!
「結局手詰まり!?」
「シャル、相手を言いくるめるられないか!?」
アッサムが言い、シャルが少し考える。
「斥候やってるだけあってこいつ口がうまいんすよ!」
と、ジェシーが補足する。
「無理!」
「だよな!!」
シャルの全力否定に俺は頷く。
あれが口で誤魔化せるとは思えない!
「ってか、なんであいつら俺らを追いかけるんだ?」
アッサムが疑問を口にする。
「ノリじゃね?」
「ジェシーじゃないから!」
シャルが容赦なく切り捨てる。
「ギルマスに依頼された?」
「ガチで実力行使に出たら俺達にはあいつら勝てねぇ!
マスターはそれをきっちりわかってるのにそんな無謀な依頼を出したりしない!」
あーみえてカルドアの街のギルドマスターは物事の分別が出来る人だ。
俺の性格を見越した上で…とも考えたがそれでも万一のことを考えればそんな依頼マスターは出さないだろう。
「…ってことは勝手に追いかけてるんすか!?
やっぱりノリじゃねぇか!」
ジェシーが毒づく。
マジで怒りに任せてここまで追ってきたか!?
無駄に正義感強いな!迷惑だ!!
「て、ゆーか、どうする!?
アッサムの魔力切れまで追いかけっこするの!?」
「逃げ切れないとわかっているなら、魔力があるうちに蹴りをつけたい!」
「だよな、それはわかる!でもな!!」
後ろを全員でちらっと見る。
赤髪野郎の怒りに染まった顔!
鬼も裸足で逃げるレベルだ!!
片眼鏡の無表情なのに怒りを湛える雰囲気!!
禍々しいオーラをめっちゃ感じる!!!
俺達は同時に前を向いた。
「無理ぃぃぃ!」
止まったら容赦なく殺される!!
きっと話も聞いてもらえない!
いや、聞いて貰ってもそこに同情の余地はないから結果は同じか!!
「あいつら強いんすよね!俺ら捕まったらミンチっすかね!?」
「ああ!ぐちゃと潰される!もしくは弓矢で蜂の巣だ!」
『こぇぇぇ!!』
三人が叫ぶ。
より真剣に逃げる。
そこに後ろから嫌な予感が迫ってきた。
「散れ!」
俺の言葉を待たずして全員散った。
一応頭に優秀の言葉がつくCランク冒険者だ。
危機に対する感覚が鋭い。
しかも、先程のふざけた雰囲気がなくなり、真顔になった。
おいおい。やる気かよ?
避けた先に弓矢が4本地面に刺さる。
四本中一本だけアダマンタイト製で、後は鉄矢だ。
明らかにこのアダマンタイトは俺を狙って打ちやがったな。
てか、人間相手に打ち込むな、こんなやばいもの。
アダマンタイトの矢に釘付けになっていると追いついてきた烈冷の使者。
「全員無傷か。」
「おい、冒険者同士のトラブルはご法度だろ?」
「そのような些事問題ではありません。
今回の件、貴方方が原因ならば私達は制裁する。
それだけです。」
「マスターが、そんな依頼だすわけねぇな。」
「だから、それを人は私怨という。」
「私怨乙!」
アッサムとシャルが煽る。
おい、煽んなって!
「うっせぇぇ!俺は認めねぇ!!
こんなアホがAランクなのも認めねぇし、今回の件もゆるさねぇ!
一発殴らせろ!そしてギルマスに自首して誠心誠意謝罪しやがれ!」
『やなこった!』
図らずも俺達全員の心は揃った。
「じゃあ、強制的に連れ帰ってやるよ…!」
「だーかーら!依頼じゃないなら、これは冒険者同士のトラブルに当たる!
ご法度行為、バレたら活動停止処分だぞ!」
「バレなきゃいいんだよ!」
「幸いここに人は通らなさそうですし?」
「返り討ちにしてやるよ!」
「ほざけ、三下野郎が!」
赤髪がバトルアックスをアイテムボックスから出して構える。
その大きさに三人は息を飲む。
もはやバトルアックスと称するのもバカらしい大きさを誇っている。
「…やばい、本当にぐしゃとなるかも。」
先程の勢いはどこへやらジェシーが情けない声をだす。
「補助魔法かけてやるから落ち着け。」
アッサムが言う。
「…僕もお願いね?」
シャルも頼む。
困った、実に困った。
俺は手出し出来ねぇし、三人の実力はよくわからんが、どう贔屓目にみても烈冷の使者には勝てねぇだろう。
あー、もう!
俺一人ならとっとと逃げてるよ!
俺一人なら短距離とはいえ転移も使えるからな!
でも、こいつら置いてくのはちょっとなぁ。
短期間とはいえ関わったこいつら、なんだかほっとけない。
たぶん、バカな子ほど可愛いとか、犬っぽいとかそういう理由で。
まさに一触即発。
しかし、事態は大きく変わる。
「うわぁぁぁぁ!!」
凄まじい声が烈冷の使者より遥か後方から聞こえた。
しかし、俺達が通ってきた道からではない。
道から外れた方からだ。
『!?』
思わず現状を忘れて俺達は声がする方を見る。
暫くみていると…
ガタガタ!
「…荷馬車?」
かなり立派な…大きさもさることながらその装飾が派手な…しかし、荷馬車の域を出ない馬車が無茶苦茶な走りをしていた。
御者と思しき茶髪で帽子を被った少年が必死の形相でこっちに来る。
「た、た、たすけてぇぇぇ!」
「どうした、何があった!」
誰よりも早く俺は声をかけた。
こいつは金になると踏んだからだ。
たかが荷馬車にこの金のかけよう!
きっと貴族の関係者に違いない!
馬車は俺達四人と烈冷の使者の間に割り込む位置で止まった。
「た、助けてくれ!と、盗賊が出た!」
その言葉にシャルが顔を歪めた。
「この辺りに出るってことは…『赤の血脈?』」
「知ってるのか!?あんた!!」
少年の言葉にこくりと頷くシャル。
さすが斥候、この辺りにいる盗賊にも詳しいか。
「なんだ、そいつら?有名なのか?」
「この辺りを根城にしている盗賊では一番規模が大きいね。」
「で、それに追われているのか!?」
アッサムが言う。
しかし、少年は首をゆっくりと横にふった。
そして口を開いた。
「お前らが襲われるんだよ。」
言った瞬間俺達を取り囲むように盗賊…『赤の血脈』が現れた!
馬車の中からも特にガタイのいい野郎どもが数名出てくる。
「てめぇら、冒険者だろ!?なら金持ってる筈だ!」
「無抵抗で財布と荷物を渡せば命だけは助けてやらぁ!」
ガタイのいい野郎どもが棍棒片手に決め台詞を吐いた。
結論から言えば盗賊団は壊滅した。
それはもう一方的だったといえよう。
俺はただ見ているだけで全てが決した。
盗賊団の数は血脈と称するだけありかなりの人数だった。
それに一人一人盗賊にしてはプロフェッショナルな戦いぶりをしていた。
決してこの盗賊団が弱いわけではない。
ただ、このCランク冒険者とBランク冒険者が強すぎたのだ。
盗賊が襲ってきたと判断した途端、赤髪野郎はバトルアックスを仕舞った。
片眼鏡は弓矢の矢を鉄から青銅に変えた。
一応、手加減はしたようだ。
でも、結果はホーンベアとあまり変わらない終わりかただった。
先制したのはジェシーだった。
彼は長剣を抜きはなち、盗賊の言葉に実力行使で答えたのだ。
ジェシーの腕は盗賊の誰よりも遥かに上でまるで案山子でも斬るかのようだった。
彼なりに手加減はしているようで全員生きてはいる。
「どうした!赤髪野郎!高々盗賊相手に手こずってねぇか!?」
「ほざけ!Cランク!手加減してんのが見てわかんねぇのかよ!」
いいながら赤髪野郎は盗賊を素手で張り倒している。
潰れてないけど、赤髪が殴った奴らピクリとも動かないんだけど?
「Cラン、Cラン、バカにしすぎ。
僕達だってあんたら以上に動けるんだから!」
華奢な少年であるシャルがナイフを投擲して盗賊を倒す。
よく見ればナイフは木製のようでシャルが倒した相手は気絶ですんでいる。
「二度と悪事を働けないよう、骨の髄までわからせてやるのが冒険者の仕事です。
適当にやればまたこいつらは同じ事を仕出かしますからね。」
片眼鏡は青銅の矢を放つ。
全員利き手を貫かれている。
もう、彼らは二度と武器どころかカトラリーすら持てないだろう。
「えへへへはは!」
「ちょーちょ!ちょーちょが見えるぅぅ!」
頭がイかれ涎を垂らしなが虚ろな目をしている盗賊がいる。
幻覚魔法にかかっている典型的な状態異常だ。
「これなら二度と悪事は働かない。」
健全な経済活動も送れなさそうだがな。
「はは、おめーら、クレイジーだな!」
「そっちこそ!」
なんだか途中からわかり合いはじめた。
やだ、なにこれ怖い。
俺は一人ぶるっていた。
そんな訳で、大した時間もかけずに盗賊団は壊滅した。
誰も息一つ乱してない。
…ジェシー達も予想よりやるみたいで正直びっくりだ。
三馬鹿トリオとバカにしていたら足元掬われる。
だが、それ以上に烈冷の使者がやばい。
拳ひとつで盗賊を気絶以上に持ってく馬鹿力の赤髪の前衛。
正確な狙いで盗賊の戦力を削いでいく片眼鏡の後衛。
本気出したら、ちょっと厄介な連中だ。
「で、どうする?」
俺がおずおずと聞く。まさか、続きしないよね?
「あー….」
「とりあえず、興が削がれましたね。」
幸いにも盗賊団で怒りを発散してくれたらしく俺達に問答無用で飛びかかることはなくなった。
よかった、本当によかった。
タグを失くした上に冒険者ご法度行為をしたら、マジ、活動禁止処分されちゃう!
「この先に村があるんだったか?」
「あ、うん。」
シャルが頷く。
「じゃあ、そこで飯でも食わね?」
時間的にも今日はその村で一泊だな。
俺はまだ見えぬ村を見たのだった。
村とシャルは言ったが、街一歩手前くらいの規模があったのは幸いだ。
マジもんの村だと閉鎖的で宿屋もないかあっても不親切で飯もまずい。
しかし、ここではその心配は無用だった。
俺達は問題なく宿を取れたし、美味い飯にもありつけた。
「とりあえず、かんぱーい!」
俺が音頭をとってエールの入ったジョッキを持ち上げる。
「いや、乾杯するような仲じゃねぇよ。」
「その通りです。」
しかし、ノリの悪い奴ってのはどこにでもいるようでこいつらはジョッキを傾ける仕草すらしねぇ。
「お前ら、ファリスさんに失礼だろ!」
「まあ、いいよ。」
俺はジェシーをなだめる。
とりあえず、四人で乾杯してエールを飲み干し再注文した。
テーブルに所狭しと用意された料理。
こいつらが頼んだ料理は見事に肉料理ばかりだった。
しかも、野菜を弾いてやがる。
そういうの厳しそうな片眼鏡も一緒になってちまちま野菜を弾くさまはなんとも言えない。
「お前ら、野菜も食え。」
「葉っぱなんか食えるか。」
「根っこも嫌です」
アッサムが注意するが意に返さない。
「なんでも豪快に食べそうなのに、赤髪。」
「栄養の偏りとか神経質に拘りそうなのにな、片眼鏡。」
シャルとジェシーが言う。
その言葉に野菜を弾く手を止める。
「誰が赤髪だ、誰が。」
「誰が片眼鏡ですか、誰が。」
「お前らしかいねぇだろ。」
「黙れ、優男。」
ピキっとジェシーが固まった。
「名前知らないんだから、特徴言うしかないし。」
「私の特徴は片眼鏡ではありません、女顔。」
途端、シャルが無表情になる。
「いや、お前らの特徴は赤髪、片眼鏡しかありえない。」
「うるせぇ、筋肉。」
その言葉にアッサムはパァーッと笑顔になる。
って、ここはその顔間違いだから!
予想通り、二人はドン引きした。
「ま、まあ、なんだ、特徴で呼ばれるのが嫌ならここはひとつ自己紹介でもしませんかね?」
一瞬の隙をついて俺は自己紹介を提案する。
なんで俺がへこへこしてんの?
数秒烈冷の使者が俺を見て…赤髪がため息をついた。
「レオナルドだ。」
「ケイフォルです。」
「俺はジェシーだ。」
「僕はシャル。」
「アッサムだ。」
「俺はファリスだ。よろしくな、レオとケイ!」
「レオナルド!」
「ケイフォル!!」
二人は速攻で略称を却下した。
はいはい、ちゃんと呼びますよ。
俺はため息ついてエールを飲み干す。
そして、速攻再注文。面倒だから10杯程纏めて注文しておく。
「お前飲み過ぎだろ。」
呆れたように赤髪…もといレオナルドが言う。
「もっと食べないと。ほら、これあげますから。」
片眼鏡改めケイフォルが俺の手付かずの皿に人参を入れる。
「お前、自分の嫌いなもんをよこすな!」
「食べれる人が食べた方が食べ物も喜びますよ。」
しれっと彼は鶏肉を優雅に食べる。
見た目通り整った所作だ。
「言っとくがこいつが食べ物も貢ぐのは初めて見たからな。
本気でこいつなりにお前の体を心配してんだよ。」
つまらなさそうにレオナルドが言う。
貢ぐっていうかゴミを押し付けただけだろ。
まあ、食うけど。
「しかし、改めて考えるとよくわからないメンツで飯食ってるよな…」
しみじみとジェシーがいう。
「確かに」
レオナルドがそれにこたえる。
肉がごろりと入ったシチューをこれまた整った所作で食べる。
野菜をどかすのがなければ最高のマナーだ。
「で、何であんたら追いかけてくんの?」
「お前らが逃げるからだろ。」
「お前らが追いかけるから逃げるんだよ!」
ジェシーが間髪入れずに突っ込む。
「鶏が先か卵が先かの典型的な問答だな。」
俺はエールを飲みながらいう。
「じゃあ、二人は僕達が逃げなきゃ追いかけてこなかったの?」
シャルの問いに二人は顔を見合わせ…
『いや?』
迷わず否定してきた。
結局追いかけ回される運命かよ。
「じゃあ、わざわざ追いかけて…何の用だ?」
「それはあの峠でお伝えしたかと思いますが?」
「こっちはこっちで色々あってあの森に入ったんだ。」
「ほう?どのような理由が?」
今度は俺達が顔を見合わせる番だ。
「なんだ、いえねぇのか?」
ああんとチンピラ顔負けの迫力を醸し出すレオナルド。
悪いが、言えねぇ。
少なくても正直に言ったら店ごと潰される。
俺はごくりと喉をならしてエールを飲む。
きのせいか味が薄くなった気がする。
なので、葡萄酒を瓶で数本頼む。
それを呆れた目で見ているケイフォル。
「あー、なんだ…その…」
三人は言葉を濁す。
「ま、まずはファリスさんからどーぞ!」
こら、こんな時だけ俺を盾にすんな、ジェシー!
俺はジロリとジェシーを睨む。
ジェシーは明後日の方を見ながら下手な口笛を吹く。
「お、俺は…」
二人の目を見る。
じっと見返してくる褐色の瞳と菫色の瞳。
嘘は速攻で見抜いてやるという強い意志を感じる。
「俺は…言われたんだ。」
「言われた?」
「ああ、あの集落に住んでいる農夫に、ホーンベアが出るって言われて…」
よし。ここまでは嘘は言ってない。
確かに俺は農夫にホーンベアが出るって言われた。
「で、討伐に出たんだ。」
「さ、さすが、ファリスさん!」
ジェシーが大声で俺の手を握ってくる。
「農夫というAランク冒険者となれば関わる事のない人の相談事を解決するためにあの危険な森に分け入るなんて、さすがです!!」
ほんと、こいつ俺の言うことを良い方へ良い方へと解釈するよな。
ありがたいので敢えて訂正はしないが。
ふと烈冷の使者を見ると彼らも感心したような顔をしている。
「ほんと、俺達とは違うっす!」
「…まて。お前達とは違うだと?」
「そもそも、四人はいつからの知り合いなんです?」
「馬鹿ジェシー!」
「勢いで黙っていられたものを!」
シャルとアッサムがジェシーを非難する。
ジェシーはしまったという顔をしていた。
ジェシーは俺に縋るような目を向けるがすっと晒して葡萄酒を飲む。
「えっと…」
「なんだ、こいつの言った話は嘘か?」
「いや!ファリスさんは嘘つかねぇ!」
いや、結構つくよ。
「僕達は森の中で初めてファリスさんと会ったからね。」
シャルが俺の為にフォローをいれる。
「最近じゃねぇか。」
「にしては旧知の仲のよう。」
言われて俺達は顔を見合わせる。
確かに最初から気安く俺達は馴れ合っていた。
「確かに出会いは最近だが、我々はファリスさんの人柄に惹かれ、ついていくと決めたのだ。」
「…ってまて!」
俺は葡萄酒から慌てて口を離してアッサムを見る。
ジェシーが言うと冗談くさいがこいつが言うとマジっぽくて怖い。
「なんだ、それ!聞いてないぞ!?」
「え!?ジェシーが一生ついてくって言ってたじゃん!」
シャルが心底驚いたと言わんばかりに言う。
「いやいや冗談だと思うだろ!?」
「ひどい!俺のことは遊びだったんですか!?」
「まて、何人聞きの悪いことを言うんだ!」
「なあ…ファリス、お前、そっちのケが…?」
おずおずとレオナルドが聞いてくる。
「ねぇよ!俺は生粋の女好きだ!」
「それも威張って言えるような事ではないかと思いますがね…」
ケイフォルが呆れたように言う。
「とーにーかーく!ファリスさん、ここで会ったが運の尽き!
とことんくっついていきますから覚悟してくださいね!」
ひきっと俺の顔がひきつる。
そっちのケがあるのはこいつじゃねぇのか?
怖いので聞かないが。
「話を戻してファリスとCランクパーティが違う理由で森に入ったのはわかりました。
…で?どのような理由で?」
「え、えーっと。」
ジェシーはシャルを見る。
「えーっと…」
シャルはアッサムを見る。
「…金に困ってだ。」
『あ』
ジェシーとシャルは同時に声をあげた。
まあ、落ち着け。
アッサムはアッサムで一応オブラードに包んで伝えたぞ。
「…Cランクは魔物討伐はホーンベア討伐は出来ねぇってしらねぇ訳じゃないよな。」
ゆらりと怒りを携えレオナルドが言う。
「いや、まあ…勿論知ってたよ。
でも食い詰めちゃったら…ねぇ?」
シャルがジェシーを見る。
「うん、普段ならもう少し考えて行動したと思うよ。
でも、追い詰められてたからねぇ…」
ジェシーがアッサムを見る。
「宿屋の支払いが迫っていたし、次の飯代にも事欠いていたからな。」
アッサムが頷く。
「なんでそんなに金がねぇんだよ。」
「Cランクならそこそこ儲かる筈でしょ?」
「ちょっと色々見誤ったんだよ。」
シャルが言う。
まあ、賭け事での負けは物事の見通しを見誤った結果だから嘘は言ってないな。
俺は葡萄酒を全て飲みきり、次の酒に思いを馳せる。
次は蒸留酒にするか、それとも果実酒にするか…。
しかし、そんな俺の思考をぶった切って不快で軽快な音楽が鳴った。
「な、なんの音だ!?」
あまりに目立つ音で店が一瞬静かになる。
「あー、すんません、俺っす!
大したことないんでぇ〜」
へらっと周りにへこへこすれば、また周りは元の騒ぎを取り戻す。
俺はほっとして…いつの間にか俺の尻ポケットに入り込んでいた呪いのアイテムを取り出した。
「な、なんですか、それ…」
心持ち体を引きながらケイフォルが言う。
何かって?俺が知りたい。
いや、教えて貰ったけどさっぱりわからねぇんだ、仕方ないだろう。
「それ!この間のじゃないですか!」
ジェシーは見るの二度目だからか拒否反応が薄い。
こいつ、順応するの早くね?
「この間のアレといい、これといい、説明してもらいますよー?」
わしっと俺の腕に絡みついてくる。
が、俺ははっとする。
「ジェシー、ナイスだ!」
「え?」
「そうだよ、すっかり忘れてた、説明してもらわないとな!」
言って俺はつーわボタンを押したのだった…。




