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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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昔話より事情を説明しやがれ

切れた

いや、切れたという表現が正しいのかはわからないが、最早この小さな薄っぺらい箱はうんともすんとも言わない…。






そう、朝いつものように目が覚めた…とはいえなかった。

聞きなれない軽快な音がして目が覚めたのだ。

その音でこの薄っぺらい箱を見つけたのだ。

なんだこれと思い弄っていたら音が止まり子供の声がした。

「もしもし?」

とか言っていた。

もしもしってなんだ、もしもしって。

驚きすぎて薄っぺらい箱を投げて大きく飛び下がりベッドに立てかけてあった剣を掴んで抜刀した。

こちとら元勇者様。

面妖な魔術になど惑わされない!

「もしもーし、ゆうしゃー?もしくは勇者のパーティメンバー?

いないのかのぅ?」

どうやら相手は俺が誰かわかっているようだ。

俺は喉をごくりとならす。

こんなに胸が高鳴ったのはいつぶりだ?

そうだ、あの日、あの日以来じゃねぇか。

四年前の人生最良の日を思い出し知らず知らずに口元が笑みの形を刻む。

「…何者だ」

「うぅむ。声が遠いのぅ。もしかして離れてる?」

「何者だって聞いてる。」

「もしもーし、聞こえるかのぅ?もっと近こぅよれ。」

結構大きな音がしているがそっちは聞こえないのか?

俺は不思議に思いつつも思い切って近づく。

薄っぺらい箱の前に立った。

剣の先を箱に向ける。

「近づいた。何者だ。」

「あ、少しはましになったかの。

で、本当に其方勇者かの?」

「ああ。」

「では、名を述べてみよ。」

「…その前に貴様が名乗れ。」

「うぅむ、その通りだ。すまん、礼を欠いたな。

わしは瀬戸内摩耶。日本から電話している。」

「セトウチマヤ?」

ニホン?

デンワ?

知らない単語が並んだ。

「知らんな。」

「おおっとそうだな。この名前ではわからぬの。

お主にはこう名乗った方がよいかの?」

不意に言葉が切れた。

そして述べられた名前に衝撃を受ける。

「わしのかつての名はディゼル・ノドリア!

かつて魔界を統べる魔王だったものよ!」

ふはははは!

と、高笑いが聞こえる。

「…じょ、冗談だろ…?」

乾いた声しか出ない。

何故ならあの日確かにこの手で屠った相手の名前が告げられたからだ。

「本当だとも。だから名前が言える。」

確かに魔王の…しかも真名など知るものはほんの一握りだ。

「して、其方は本当に勇者なのか?」

「当然、俺はファビウス・シールド。聖なる剣に選ばれた正真正銘勇者だ。」

もっとも今はその聖剣も手元にないが。

「おー、ということは成功か。」

声の主…本気で信じた訳ではないが…自称魔王は嬉しそうな声をあげる。

聞けば聞くほど幼女の声だ。

「で、これは一体なんなんだ?」

「うん?これはスマートフォンじゃ。」

「す、すまぁ…」

「スマートフォン!」

「スマートフォン…?」

「電話じゃ。」

「デンワ?」

「そうじゃのう…わしが住んでる世界ではメジャーな通信魔法とでも言っておくか。」

細かい仕組みはわしにもようわからんがの!

と、ケタケタ笑う。

「故に害はないぞ。触ってみぃ?」

どうせ、びびって聖剣構えてんだろと挑発してくるので、そんな事してねぇと俺はその箱…スマートフォンを手に取った。

ああ、俺が構えてんのは普通の安売り剣だ。

聖剣なんて構えてないから嘘は言ってねぇ。

しかし…

「軽いな。」

それに冷たい。手によく馴染む。

「公式ホームページによると重さは僅か150グラムだそうな。」

ぐらむだこーしきほーむぺーじだとかはよくわからないがとにかく軽いのはわかった。

「で、それを耳にあてる。」

「煩いだろ。」

「そんな大きな音か?」

「ああ、普通の会話レベルだ。」

「ふむ?さてはスピーカーモードにしたな?」

すぴーかーもーどというのがわからないがもう流すことにした。

「まあ、いい。会話が成り立つならばな。」

さあ、昔話をしよう。

そういう奴に待ったをかける。

いや、そうだろう。

なんの事情説明なくいきなり昔話なんてできるかボケ。

しかし、奴は心底楽しそうに語る語る。

話が合うものがいないって?

そうだな俺もだ。

あの時が人生最良だった。

たった四年でこの有様だがな。

だからついつい聞いちまってたが、じゃあ事情説明がいらないかって言ったらそれは別問題だ。

しかし、呼ばれたといって奴は通話魔法を切ってしまった。


ここで話は冒頭に戻るわけだ。

つまり俺はスマートフォン片手に呆然と立ち尽くしていた。

しかし…なんだか少し楽しくなってしまったのも事実。


しかし、しかしだな、魔王。

「夜八時は早くね?」

俺は普段その時間可愛い女の子とお楽しみなんだがな。


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