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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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オタクの会合

夜中。

歓楽街の明かりは途切れることなく朝まで灯る。

まさに不夜城。

アジア最大の歓楽街とはよく言ったものだ。

俺はキャバ嬢の誘いを適当に断りながらとある店に入った。

地下に降りる階段を下ればこの辺りではみかけない調度品と俺好みの接客をするウェイトレスが出迎えてくれる。

俺は口元を綻ばせて店の奥へと進む。


既に仲間は全員来ていた。


「遅い。」

「すまない。」

ギラリと眼鏡を光らせた高橋の不機嫌そうなものいいに対した俺は素直に頭を下げる。

約束の時刻を15分もオーバーしての到着だ。

頭を下げるのは当然だろう。

「まあ、浩二は忙しいから。」

間を取り持つように佐々木が言う。

相変わらず前髪が長くて顔がよく見えない。

「それより、要件は?」それ

俺たちの中で一度縦にも横にもでかい篠崎が聞いてくる。

到着早々本題か。

まあ、仕事と趣味を両立させてる俺にとってなんら不都合はないが。

俺は中学の頃から使っている鞄からノートパソコンを取り出す。

物持ちは良いほうだがパソコンだけは常に最新機種でないと気分が悪い。

三ヶ月に一回は買い換えているからそこそこ給料はいいのにパソコン貧乏で嫌になる。

これも昨日買い換えたばかりの話題の新機種だ。

俺はパソコンを起動して既にネットを立ち上げる。

既にブックマークにはいっている動画サイトを開いた。

「昨日さらにアップされた動画だ。」

「どこかの保育園のだろ?」

高橋は既に見たみたいだ。

「俺はまだ見てない。」

「俺もだ。」

佐々木と篠崎の言葉に俺は再生ボタンで答える。

どこかの保育園が舞台。

少し可愛い女の子がマジカルリリーごっこをしているものを隠し撮りしている動画。

「うわ。この子可愛いなぁー。」

佐々木の病気が発症しかけているがここはスルーする。

問題はこの後。

『マジカルマジカルパワー!メーイクアップ!!』

ちゃんちゃららん。

「どこから音楽が?」

「合成だろ?」

篠崎の問いに高橋が眼鏡を押し上げながら答える。

「おい、これも合成か!?」

彼女の周りがアニメとまったく同じ風景になったのだ。

全く同じとは言ったが、厳密にいえば『もし、アニメの効果が現実展開されたらこうなる』といった感じでアニメーションが展開されている訳ではない。

ようはやたらリアルな背景なのだ。

「お、おい!へ、変身してるぞ….」

まさにアニメの再現。

衣装がチェンジする度にシャボン玉が弾けるところなど並々ならぬ再現への執念を感じる。

「しかし、衣装デザインが地味に違うな。」

高橋が小姑のようなチェックを入れる。

「だが、この再現力凄くないか。」

「一体どうやってんだ。」

「合成だろ。」

篠崎が動画を睨みながら言う。

「そう思うだろ?」

「え、まさか」

佐々木が震える声で言う。

俺はこくりと頷いた。

「これは合成じゃねぇ。ガチで変身してやがる。」

「な!」

「まさか!」

「ありえない!」

三者三様の声が響く。

「俺も信じられない。だから直接会いに行こうと思ってる。」

「僕の出番?」

可愛く佐々木は言うが彼の職業は探偵。

まじもんの探偵だ。

ただし、今の所殺人事件に出くわしたことはない。

「おう、この保育園を調べてくれ。」

「らじゃー。」

「それと、過去の動画。」

俺は関連動画をひっぱってくる。

「この車のやつは見たことあるな。」

篠崎がいう。

これもやばい。

解析したところこれもガチだった。

幼女がありえない馬鹿力で悪漢と戦うなんてどんなアニメだ。

「こ、この子も可愛い…」

佐々木が涎を垂らし始める。

本格的にやばい。

今夜あたり見張ってないと犯罪行為に走りそうだ。

「この子の動画が数多くアップされているな。」

「高橋が目ざとく見つける。」

「そう、一年くらい前から『魔王の側近』という人物による動画アップが始まっている。」

「なかなかの閲覧回数だな。」

「チューバーとして食っていけるレベルだな。」

「そう、このマジカルリリーとこの謎の少女。

二人を探し出して…」

俺達は目を合わせて頷いた。

全てを語る必要はない。

俺達は同士だから。

そこにウェイトレスがやってきた。

「ご注文のラブキッスオムライスでぇす!

ご主人様、ふうふうしますか?」

「ぜひ」

高橋が強く頷いた。

「ご注文のカフェラテです!

美味しくなる魔法かけますね!

にゃんにゃにゃん!美味しくなぁれ!」

「ありがとう」

篠崎が嬉しそうにラテを受け取る。

「ご主人様、ご注文は決まりましたかぁ?」

「ああ、このスペシャルラブリーパンケーキを頼む」

「はあい!このパンケーキを食べるご主人様は猫耳をつけなくてはいけない決まりなんですよ?

大丈夫ですかぁ?」

俺は猫耳を受け取り無言で装着。

「わあ!可愛い!!あとで一緒にチェキ撮りましょ!」

「うん、記念だねぇ。」

「うん、記念!一枚三千円で販売してまぁす!」

こうして俺達は可愛いメイドに今夜も貢ぐのだった。

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