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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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初めてのお宅訪問〜稔のお家編〜

わしの家は車を所有していない。

故に乗ったことのある車といえばバスくらいだった。

そんなわしにとって個人が所有している車にはすごく興味があった。

とはいえどうやら車というものはとても高価な上に乗る為には資格が必要らしく今日までわしは道行く車を指くわえて見ている事しかできなかった。

しかし!遂に!!わしは!!!

個人が所有する車に乗ったのじゃ!!


見た目は地味な黒。

しかし、座り心地は抜群。

かつてわしが愛用していた火車より断然いい。

「どうざます?宅のリムジンは?」

「うむ、少々狭いが乗り心地は良い。」

「ちょっと!まやちゃん!?」

「ほ、ほほほ…お宅はよほどいい車にお乗りのようで…」

わしの感想に母上は慌てた声をあげ、稔の母君がひきつった笑いを浮かべる。

保育園終了後わしは稔の招待を受け彼の邸宅に向かっていた。

レインボーマンのDVDを借りる為である。

人の家に呼ばれるのは前世含めてこれが初めてだ。

…前世では呼ぶ側であったからもてなすことばかり考えていた。

魔王城の外に出る事は側近達に強く止められていたからわしは広くて狭い魔王城の中しか知らずそれが全てであった。

今は広い世界にいる。

そして自由だ。

それが何より嬉しい。

車で十数分ほど移動したら立派な屋敷が見えてきた。

広い土地にでーーーんと構えてあるゴテっとした趣味の悪いの屋敷だ。

こちらの世界で見た邸宅では一番大きい。

魔界基準でいえばこの大きさなら側近の功績に対して与える報酬として広さだけならギリ合格といったところか。

「どうざますか?我が家は。」

「うむ、外観センスはちとくどいが立派な屋敷だの。」

「ちょっとまやちゃん!?」

「ほ、ほほほ…お宅は余程センスのあるご自宅にお住まいのようで…」

ひきつった笑顔を浮かべる稔の母君に案内されてわし達は応接間に通される。

稔には似合わない随分乙女チックな家具が不必要に多く並んでいた。

「おい!まや!!俺の部屋に来い!」

「うむ。」

わしは母上をセンスの悪い応接間に置いて稔の部屋にいった。

彼の部屋は広かった。

我が家で一番広いリビングの倍はあった。

しかし、そこに置いてある家具のセンスは驚くほど悪かった。

白、金色、ピッカピカ!!

本人も言っておったが成金の家の見本のようだ。

「随分趣味の悪い部屋だな。」

わしは正直に言った。

「だろ?だから誰も呼びたくねぇ。」

あー、そういう理由で側近衆さえ呼ばないようにしていたのか。

「呼んでも部屋にはぜってぇいれねぇ。」

「家具の入れ替えはせぬのか?」

「母ちゃんの趣味だかな。」

無理だろ?と肩を竦めた。

親の趣味が悪いと苦労するのだな。

わしの母上はセンスがいいというか金がない為買いたくても買えないらしく自称シンプル愛好家だ。

「ほら、これがレインボーマンのDVDだ。」

彼がサイドボードからDVDを出してきた。

「ん?」

わしは目ざとく見つけてしまった。

「おい、それは…」

「あ!」

わしに見つかるとは思わなかったのか慌ててサイドボードを閉じる。

しかし、もう遅い!

「マジカルリリーのシーズン1のDVDボックスではないかぁ!」

わしは稔をどかしてサイドボードの引き出しを開けて言う。

そう、それはわしが欲しくてやまないDVD!

シーズン1は秀逸なのじゃ!

キラキラした目でそれを見る。

「….そっちも借りるか?」

「よいのか!?」

わしは、稔の手を握って身を乗り出して聞く。

「お、おう!」

彼はこくこくと頷いてくれた。

なんて良い奴なのだろう!

「しかし、お主もマジカルリリーのファンとはのう?」

「いや!違う!」

「違うのか?」

首を傾げて彼を見れば彼は視線をふいと外した。

「…違くない…」

「やはりのぅ」

わしはニンマリと笑う。

「あ、あいつらには内緒だぞ!?」

「なんでじゃ?」

「あ、あんな女子供のみるアニメのファンと知られたら馬鹿にされる…」

…しないと思う。

寧ろ語れて喜ぶと思う。

しかし、本人が嫌と言うならまあ、黙っているか。

「わかった。」

わしはこくりと頷いた。

稔はほっとしたような笑みを浮かべた。

わしは人間の美醜にはちと疎いが今の表情は好きじゃな。

「ところで、今日の甘利の変身だけど。」

「うん?」

なんじゃ、明日までにDVDはきちんと見てレインボーマンを再現してやるから心配することはないぞ?

「ドレスのデザインが違くなかったか?」

ぎっくーーーー!!!

わしは冷や汗を流す。

こ、こやつ、気づきおった!

他の連中は元より着ていた朱雀様すら気づかなかったのに!

「まず、ドレスの微妙に色が違った。」

指を折り始めた。

「リボンの位置が違った」

また指が折れた。

「フリルのつき具合が違った」

稔がこちらをじっと見た。

わしは自然と後退する。

ま、魔王たるわしを後ずさらせるとは…!

「ちょっと作りが甘いんじゃねぇのか?」

「いや、その…」

マジカルリリーの衣装はすごく複雑で再現が難しいのじゃよ…。

「レインボーマンの時はそんな適当じゃ困るんだ」

「あ、はい。」

「ちゃんとやってくれよ?」

ぽんと肩に手を置かれてわしはこくこくと頷くのだった。

レインボーマンの衣装…簡単だといいなぁ。


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