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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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保育園で遊びましょう〜マジカルリリーごっこ編〜

「あ、あなた!ご、ごはんよ!」

「お、おう。き、今日の飯はなんだ?」

「は、は、ハンバーグよ!」

「そ、そうか」

…硬い。

硬いぞ、二人とも。

わしは四つん這いになりながらおとうさんとおかあさんを見る。

心なしかマリーちゃんと加奈ちゃんもハラハラしながら二人を見ていた。

朱雀様がお皿を稔に渡した。

その時、手と手が触れてお互い同時に引っ込めた為にお皿が落ちる。

プラスチック製だから割れはしないが音がうるさい。

『ごめん!』

二人同時に叫んで同時に手を皿に持って行きまた手が触れて引っ込める。

…なにやってんだ。

わしは理解不能で首を傾げる。

そんなに互いを触りたくないのかの?

二人とも頬も赤いし…

しかし、側近二人はひそひそ話している。

この二人には朱雀様と稔の謎行動の意味が理解できているようだ。

「さ、さあ、買い物に行きましょう!

お姉ちゃん、赤ちゃん、行くわよ!」

朱雀様がマリーちゃんと加奈ちゃんを呼び寄せる。

わしは残念ながら出番がないなしい。

「じ、じゃあ、行ってくるわ!」

折り紙で作った財布片手に三人は出て行く。

残されたのはわしと稔の二人。

三人は姿が見えなくなる。

しばらく帰ってこないかもしれない。


わしはなんとなく稔を見た。

稔もわしを見る。

目があった。

「…あー、まや?」

「わふ?」

わしは犬。

名前はマヤじゃ。

「一昨日は…その…助かった。」

「わふ。(いいってことよ)」

「本当は昨日のうちに言いたかったんだけど…」

ああ。

昨日は何故か全力でわしを避けていたからな、お主。

「いや、避けたのは悪かった。

でも、その…お姫様抱っこが恥ずかしくてつい、避けちまった。」

「わふ。(あ、そうだったのか)」

特に気にしてないぞ。

わしは朱雀様から命じられた事をしただけじゃ。

しかし、こうやって礼を言われるという事は少しはダメ人間脱出したかの?

いや、お姫様抱っこでプラマイゼロか?

「それにしても、お前凄いな。」

「わふ?(すごい?)」

「おう、スーパーヒーローレインボーマンみたいだった!」

一転キラキラした目でわしを見る。

レインボーマン?

ああ、魔法少女マジカルリリーの後にやるアニメじゃな?

わしは興味がないから見た事ないが、わしに似ているなら見て見るかな。

「それにしても。」

「お?犬語はどうした。」

おっと。

「なんであの時教室にいたのだわん?」

「無理にくっつけたな。…あの時、母ちゃんと帰るつもりだったが、鞄を教室に置きっ放しだった事を思い出したんだ。」

なるほど、それを取りに教室に行ったら不届き者に捕まっていた朱雀様と鉢合わせしたと。

そして代わりに捕まったと。

「あいつが狙われてたろ?だからあいつが本当に朱雀家の人間だってわかった。

なんであんなボロアパートで暮らしているのかはしらねぇけど。」

「朱雀家ってそんな凄いのかわん?」

「おー、おれんちは成金だけど、朱雀家は由緒正しい財閥家だ。

まあ、俺も詳しくはねぇぞ。

でも、とにかくすげぇ。これは確かだ。」

「素晴らしい!」

「は?」

「貴族の血をその身に流しながらも、不遇の身の上。

にも関わらず、健気に真っ直ぐ生きている!

さすがは我が主人様!…わん」

「お前大丈夫か?」

何故かドン引きしている稔。

「わふ?(なにが?)」

稔は引きつった顔をしていた。


お昼の給食を食べた後、園庭で遊ぶ。

おままごとではなく、滑り台で遊ぼうと四人で向かった。

しかし、そこには稔の側近衆である幸也君と皇帝と書いてシーザーと読ませる男の子が陣取って他に遊びたい子たちを追い払っていた。

「おめぇら、散れ!」

周りと頭ひとつぶん背が高い彼が凄むと他の子が半泣きになる。

目つきも悪いからこれは仕方ない。

「ここは、これから稔君と僕たちでレインボーマンごっこをするのに使うんだ!」

そう言っているのはシーザー君。

金髪で耳にピアスまでしている。

勿論、異国の血が混ざっているのではなく、染めている。

「ちょっと!」

半泣きの子たちを押しのけ朱雀様が前に躍り出る。

それに従うマリーちゃんと加奈ちゃん。

わしもそれに続く。

周りは逆にぐっと下がった。

「なんだあ?」

幸也君が滑り台を滑って下に来て凄む。

「他の子だって遊びたいのよ!

独り占めとかダメだから!」

「あ?俺達は稔君がレインボーマンごっこをやりたいって言っていたから場所取りしてんだ。

他の子なんざぁ、しらねぇぜ!」

「わかったらどけ!午前中、稔君に遊んでもらったからっていい気になんなよ!ブス!!」

シーザー君が事もあろうに朱雀様に暴言を吐いた。

これは許すまじ!

わしは一歩前に出る前にマリーちゃんと加奈ちゃんが前に出た。

「ちょっとあんたら誰に向かって言ってるのかわかってんでしょうね!?」

「あんたら鏡見た事あんの!?

人のつら言えるほどの顔してないからね!」

「ああん!?ブスにブスって言ってなにが悪い!

お前らもブスだからブス同士固まって遊んだろ!」

「稔君に近づくな!媚びうんな!」

「なんですって!?」

「なんだとー!?」

側近衆は朱雀様を置いてけぼりにしてヒートアップする。

なんか、わしはちょっと冷静になれたぞ。

「ちょっと四人共やめ…」

「なにやってんだぁ?」

そこに稔の声が降り注ぐ。

はっとしてわし達は彼を見る。

七色のマントに折り紙で作った仮面をつけ右手にはダンボールで作りアルミホイルを張り合わせた剣を持って登場した。

「さっすが稔君!」

「レインボーマン決まってるぅ!」

幸也君とシーザー君がやんややんやと騒ぎ立てる。

そっかぁ、あれかっこいいのかあ。

わしはそう納得仕掛けるが、それより前にマリーちゃんと加奈ちゃんが鼻で笑う。

「だっさーい!」

「魔法少女マジカルリリーちゃんの方が可愛いしかっこいいもんね!」

これにはかちんと来たか本気で睨む幸也君とシーザー君。

「はぁぁぁあ!?」

「お前ら目がおかしい!レインボーマンはかっこいい!」

「ダサい!」

「かっこいい!」

「マジカルリリーなんか超ブス!」

「は?頭おかしい!」

「ブスはブスだ!」

「可愛いもん!」

四人は朱雀様と稔を置き去りにして睨み合う。

「ならば勝負すればよいの。」

わしは顎に指をそえて提案する。

『勝負?』

四人は同時にこちらをむき問いかける。

「どちらが可愛いかかっこいいか、周りに決めさせるのじゃ!」

「具体的には?」

マリーちゃんが聞いてくる。

「ここでどちらが可愛いかかっこいいかパフォーマンスをして周りにアピールして最終的に多くの支持を受けた者の勝ちじゃ。」

「パフォーマンス…」

なにやら加奈ちゃんが考え込む

「ならば既にばっちり決めてる稔君の勝ちだなー!」

「なんですって!?マジカルリリーちゃんになった朱雀様はものすっっごく可愛いんだから!」

マリーちゃんが言い募る。

「はっ!ならば見せてみろ!」

「すぐに準備するもん!」

加奈ちゃんが言い切った。

「いや、わしがすぐに変える故、時間はいらぬ。」

「はぁ?…何言ってんだ?」

「ふん!わしに不可能はない!」

「なんだよ!変身するってか!?じゃあやってみろよ!」

シーザー君がバカにしたように言う。

「ちょっと摩耶ちゃん!」

何やらマリーちゃんが服の裾をひっぱってくる。

「なんじゃ?」

「変身って出来るわけないよね?

教室にあるドレスを持ってくる必要が…」

「ないのぅ。」

「え?」

「朱雀様、わしにお任せなのじゃ!」

「え、いや、出来れば避けたいかなって…」

朱雀様が及び腰じゃが、大丈夫、わしにお任せあれなのじゃ!

「やってみろー」

「マジカルリリーにへーんしーん!」

「おい、お前らやめろ!」

稔君が側近衆に注意するがまるできかない。

教育が行き届いていないようだ。

「では朱雀様、滑り台のうえに。」

「え、なんで?」

「パフォーマンスでアピールです!

上に立ちよく見えるようにするのです!」

「え、ええ!?」

わしは朱雀様の背中を押して滑り台の上に立たせる。

「それでは、朱雀様!変身魔法を唱えて勿論、ポーズも決めてください!」

「え、ええ!?」

「は、や、く!」

「う、うん」

少し戸惑い気味ではあったが朱雀様は右手を高々と掲げた。

「マジカルマジカルパワーー!メーイクアップ!」

ちゃんちゃららん!

わしは朱雀様の言葉に合わせて音楽を鳴らす。

勿論、魔法じゃ。

これは吟遊詩人が使う雅楽魔法で軽い催眠効果がある。

それにアニメと同じようなピンクの霞とシャボン玉を幻影魔法で生み出す。

そして、ここからが腕の見せ所!

わしは器用故、魔力を操り朱雀様の髪を結い上げ、魔法で作った魔女の帽子を被せる。

さらには魔力で一からドレスを仕立てあげて今着ているワンピースを着脱魔法で一瞬で着替えさせる。靴も同時に編み上げブーツに変えた。

なお、着脱する瞬間シャボン玉が弾けるような幻影を付け加えるのも忘れない。

アニメにとことん忠実にやる。

高々と掲げた手の平にマジカルステッキを持たせた!

「朱雀様!決め台詞とポーズです!」

「ま、マジカルリリー、ここに見参!悪を許さず正義を助ける、よい子の味方、マジカルリリー!!悪の秘密結社は私が倒す!」

ステッキをくるくるっと回し花を散らしながら最後にびしっと真正面を指差して決めポーズ!

バックにはアニメ同様薔薇と月を幻影魔法で浮かべた。

『おー!!』

拍手喝采とはまさにこの事!

ふと見ると稔君達も拍手していた。

ふふん!

わしは得意げだ。

この一瞬でこれだけの細かい事をこの魔素の薄い中やるのは中々骨が折れる作業なのだ。

勇者じゃ無理だな。

結構繊細な作業だし、大雑把なあやつじゃ雅楽魔法と幻影魔法を同時使用の時点で投げ出しただろう。

わしは自然と笑みを浮かべる。

しかし、当の朱雀様はひきつった顔をしていた。

「すごい!」

「本物のマジカルリリーだ!」

「すげぇ。」

「こ、これは…」

周りは元より稔の側近衆も負けたって顔をしている。

「な、なんで周りは疑問に思わないのかな!?」

朱雀様が頭を抱えている。

それは多分最初に使った雅楽魔法の催眠作用だと思う。

軽いものだから今しかきかないので解けた後どうなるかわからないが。

「な、なあ。」

幸也君が話しかけてくる。

「なんじゃ?」

朱雀様をブス呼ばわりした嫌な奴故ちょっとばかしつんけんした物言いなのは許してほしい。

「今のお前がやったんだよな?」

「そうじゃが?」

話の流れ的にわしがやったのは明白故隠しはしない。

万一問題があれば忘却魔法をかけてもいい。

「じゃあさ、レインボーマンもできるか!?」

ワクワクしながら聞いてくるのは子供故じゃろ。

もうほんの少し前までいがみ合ってた事など記憶になさそうじゃ。

「出来るといえば出来るがのぅ。」

「なら、稔君にもやって!」

「しかしのう、わし、レインボーマンのアニメは見てない故今は再現出来ないの。」

「えー?」

あからさまにがっかりする幸也君。

「次回は見る故、暫し待て。」

「いや、待てない!今日DVD貸すからうちに来い!」

そこに稔が話に割って入ってきた。

「み、稔君の家に呼ばれるなんて!」

「う、羨ましい!」

幸也君とシーザー君が口々に言う。

「お前達は呼ばれないのか?」

「滅多に呼んでくれない…」

二人は肩を落として言う。

なんでじゃろーな。

側近衆なんだから家くらい呼べばいいのにの。

「そうなのか…しかし、行ってもよいのか?」

わしは二人に聞く。

「ああ、その代わり!」

びしっとこちらに指をさしてきた。

「明日必ず稔君を変身させてくれよ!」

シーザー君が唇を噛み締めながら言ったのだった。




魔法ミニ知識

幻影魔法:その場に無いものを幻として生み出す魔法。

実体は無い為触れる事は叶わない。

幻覚魔法:その場に無いものをあると誤認させる魔法。

難易度は幻覚魔法の方が生み出すものがない分簡単。

幻覚魔法は生み出すものが多くて細部が整うほど難易度があがる。

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