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第8話:遅刻厳禁風紀委員長



 東雲 義裕です。朝です。遅刻寸前です。


「速い速い速い速い!」


「ダブリたいなら速度を落とすけど?」


「全速前進!」


「命令するな、死にたいか」


「そのままお願いする次第であります、真桜様!」


 ダブリはイヤよ。こやつらを先輩呼ばわりするのは精神的にキツイ。ハードなのだよ。


 現在の状況を説明しよう。

 真桜、猛スピードで走っています。俺、真桜に引っ張られて宙を飛んでいます。


 ええ、飛んでるんです。鯉のぼりの如く風にはためく俺の体。

 真桜はいつもの学生鞄、ジェラルミンケース、竹刀袋の三種の神器を持っているのに軽々走る。 さすが魔王陛下。とんでもスペック。小さな体に無限のパワー!


「まあ、校門が閉まるのにギリギリで間に合うでしょうね」


「頼もしいお言葉です!」


 ギリギリだろうとなんだろうと間に合えばいい。遅刻さえなければダブリンはない。

 あれ、でも……


「なあ、校門閉まっても突破できるんじゃないのか?」


 昨日のように俺を投げれば解決じゃね?


「無理よ、今日は陽介が当番だもの。撃墜されたいならそれでもいいけど?」


「断固拒否!」


 陽介とは風紀委員会の中でも異常にテンションと能力が高い風紀委員長だ。

 最強である魔王陛下をして強敵と言わしめる、とんでも戦闘力を誇っている。

 もっとも本人の性格はだいぶブッ飛んでるので、風紀を守れているかというと微妙だ。


「校門、視認したわ」


「おいさ!」


 ガクガク揺られながら腕時計を確認。現在時刻は8時37分。おお、間に合った間に合っ――


「ん? ……義裕、口閉じてなさい」


「はたわあぁっ!?」


 投げられた!? 投げられたようです! 景色がクルクル回転するよ。


 ガラガラと凄い勢いで閉まっていく校門をすり抜けて、一気に学園の敷地内へ。


「ぐふっ!」


 慣性に従って地面を転がって、摩擦熱で顔が燃える! 熱い! あついよー!

 転がって転がって校舎の壁にぶつかって停止。熱いし痛い……。


 これは文句言ってもいいよな。いいよな!


「真桜っ、何すんじゃわあああああああっ!?」


 顔を上げた途端、視界を緑色の何かがふさぐ。

 とっさに首を横に傾けると、それは俺の頭があった部分を通って校舎に突き立った。

 ええ、突き刺さってます。


 ヘタしたら死んでるぞ、これは!


 俺を貫かんとした物体、それは――


「た、竹槍だと――!?」


 緑が眩しい竹からそのまま作り出したと見られる、竹槍。

 鋭い断面が刃となり、コンクリの壁でも易々貫く。……って、いくらなんでも鋭すぎだろ!


「ちっ、躱したか」


 竹槍をガン見する俺の耳に、忌々しげな低い声が届く。


「躱さなきゃ死どるわっ! この腐れ風紀委員長が!」


 校門前に立つ人影。それは件の風紀委員長、雛森(ひなもり) 陽介(ようすけ)

 右手に握ったもう一本の竹槍を構えて、堂々と仁王立ち。

 身長190センチを超える長身だから、否応にも威圧感がある。


「悪いが義裕殿、校門は今さっき閉まる所だったのだ。非常識な手段で飛び込んで来られては他の生徒に示しがつかん」


「示しをつける為なら殺人はいいのかっ!」


「そんな訳はなかろう」


 何を言っているんだ、という視線を向けてくる陽介。くっ、ムカツク奴め。


「って、さっき『ちっ』って言ったのは何だったんだよ!」


「何を言う。そんなことは断じて言っておらん!」


 言ってたんだよ、お前は!


「ふん、男ならば拳で語るがいい!」


「なら竹槍を捨てろよ……」


 拳で語るとか言って武器持ってちゃ台無しだろ。


「愚問っ! 竹槍はもはや俺の体の一部……切り離すことなどできぬ!」


「さっき投げたのは何だったんだよ!」


「マジ○ガーというロボがいてだな……」


「いいよっ! 真面目に変な理論を展開しなくていいっ!」


 何でこんなのが風紀委員長なんだ……。もっと他にいないのか。


「俺は風紀委員長、雛森 陽介! いざ尋常に勝負!」


「いきなり話を戻すなっ!」


 などと言ってる間に陽介は地面を蹴り、こっちに向かって竹槍を突き出してくる。尋常じゃない!


「貫け、俺の武○錬金!」


「竹槍がかっ!?」


 明らかに錬金じゃねえ!


 その強烈な一撃を流れるように回避……するなど俺にできるわけがない。

 無様に地面を転がって避ける。ゴロゴロ、ゴロゴロ。

 武器持ってる相手の攻撃を避けるには地面を転がるに限る。攻撃当たらないもの。


「突きいぃぃぃぃっ!」


「ぐはあっ!」


 くそっ、やられた! コイツ『突き』って言いながら蹴り入れてきやがった!

 さっきまでとは違い、俺の意思には関係なく転がっていく。ゴロゴロ、ゴロゴロ。


「往生せいやああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 陽介が投擲体勢に入る。

 おい、体の一部で切り離せないんじゃなかったのか!


「ロケットォ――バンブゥゥスピアァァァァァッ!」


「技名あるのかよっ!?」


 しかもダサい。とんでもなくダサい。

 だが、威力は折り紙付き。校舎の壁を貫くぞ――って死ぬわっ!

 今の体勢じゃ回避もろくにできねぇぇぇぇぇっ!


 投げ放たれた竹槍ロケットバンブースピアが唸りを上げる。

 それは寸分違わす俺の頭に迫り――


「いい加減にしなさい」


 いつの間にか俺の前にいた真桜に掴まれて止まった。

 いや、ホントいつの間に? おまけに竹槍を横からじゃなく、真正面から掴んでるんだけど。


「くっ……魔王陛下。貴様、男と男の果し合いを邪魔するかっ!」


 いつから果し合いになったんだ。一方的な殺しだっただろ。


「そういうのは時間があるときにやりなさい。チャイム鳴るわよ」


 ――キーンコーンカーンコーン


「「し、しまったあぁぁぁぁぁ!!!」」


 俺と陽介の言葉がかぶる。

 ヤバイヤバイヤバイヤバイ――ダブリンが見えてくるぅぅぅぅ!


「義裕殿、この勝負預けたっ!」


 それだけ言って陽介は消えた。いや、単に高速で校舎内に入っていっただけだが。


「さて、さっさと行くわよ」


「無理じゃあ! 俺には無理じゃあ!」


 真桜や陽介みたいな超人能力は持ってません!


「2年6組の教室は……あれね。義裕、『信じる者は――」


「――救われる』うぅぅぅぅぅぅぅ!?」


 またかよ! 飛んでるよ、俺! 俺達の教室まで一直線に飛んでいくぜ!

 窓は開いてる。ガラスは痛いからな、これで無傷で教室まで……


「ぬがああああっ!」


 行けるかと思ったけど、教室内は机が並んでるんだよね。

 そこに高速で突っ込んでいく。あとは……分かるよな?


「痛い、痛いなぁ……」


「ええ……そうでしょうね」


 あれ? 地に伏した俺の耳に、なにやら怒りを伴った声が聞こえるぞ?


「痛いでしょうね……。でも、わたくしはもっと、もっと痛かったですの」


「あー……一姫さん。落ち着いてくれませぬか?」


 顔を上げると毒舌お嬢、一姫の満面の笑顔。しかし何故だかこめかみが引きつっておられます。

 あれ? 俺大ピンチ?


「天に代わって誅罰ですの」


 うわー、まるでセーラー服の美少女戦士みたいなセリフだぁ。

 でも一姫、そのセリフと椅子を振り上げる動作はとても不釣合いな気がす「天誅!」








 ――目が覚めると俺は何故か廊下でバケツを持っていた。









大学が忙しいです。たぶん、うまくやれても週二回のペースが限界になる予感です。


そんな訳で第8話。第2話にも名前だけ出てきた暴走風紀委員長、陽介がメイン。


色々ぶっ飛んでますが、根はいい奴です。

なにより、魔王陛下と正面からやり合えるという超人的戦闘能力を誇っています。真桜がキレたりしたら義裕の助けになってくれる……かも。


次は新キャラ出さないで、昼時のお話になる予定。

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