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第5話:放課になりて生徒会


「それじゃ、生徒会活動を始めるわ」


 放課後。一般生徒が青春の汗を流し切磋琢磨してる中、生徒会役員は室内にこもって会議です。

 まったく、とんだ引きこもり共め。


 ――ガン!


 あっれぇ? 何の音かな?

 探してみるまでもなく、机においた俺の右手の薬指と小指の間にシャーペンが突き立っております。ハイ。


「義裕、死後は慎みなさい」


 我らが生徒会副会長、真桜がそんな御言葉をおっしゃいました。

 え、ええーと『私語』だよね? なんか『死後』って聞こえたような気がするけど『私語』だよね?


 てか、俺なにも言ってないよ?


「小声でブツブツ言ってたわよ――『引きこもり共め』って」


「なっ!?」


 なんと言うことだ……。

 つーかワザワザ言わないで! 周りの生徒会メンバーの視線が怖いから!


「さて、話を戻すわよ」


 本筋に戻ってくれた。……よかったような、完全に安心できないような。


 今ここ、生徒会室にいる生徒は6人。


「サッカー部からゴールの老朽化による買い換えが申請されているわ」


 いわずと知られた武闘派副会長にして魔王陛下。倉里 真桜。


「またですの? ほんの数週前にも申請されませんでした?」


 書記長にして舌戦なら最凶な毒舌お嬢様。夜帳 一姫。


「予算内なら問題ないはずです。高瀬さん、どうなってる?」


 一年の副会長にしてメガネが似合うクールガイ。宮水沢(みやみさわ) (しん)


「ん、んー……大丈夫です。ギリギリのギリギリですけど」


 名前忘れててマジゴメンな会計副長の後輩。高瀬 風月。


「……却下した方がいい。球技大会後にボール補充申請を出してくる」


 見た目はクールビューティ、中身はトリガーハッピーな元・副会長。間宮(まみや) 蜜柑(みかん)先輩。


「義裕は何もないのかしら?」


「あると思うてか」


 そしてこの俺、この場において穀潰しの副会長補佐にして、魔王陛下の押さえ役……という名の生贄。東雲 義裕。


 この時間は以上6名の提供でお送りします。








「って、会長は?」


 生徒会において唯一俺を労わってくれる女神はいずこ?


「病欠よ」


 真桜が簡潔に答えてくれた。

 ああ、そうだね。俺は午前中気絶してたから、誰が来て誰が休んでるか知らないんだよね。


「ついでに鏡華先輩はゲートボール部に行ってるわ」


 ……元・副会長は手伝ってくれているのに、元・会長は遊びに行ってるのか。

 つーか今1月だよ? センター試験まであとちょっと、『最後の追い込みだぜ!』って時期だよね? いくら進路は決定済みとはいえ、それでいいのか元・生徒会長……!


「まあ、あの人はいても煩いだけではありませんの?」


 確かにあの人がいれば、まとまる物もまとまらなくなるだろうけど……。

 だからといってワザワザ口に出すのはどうかと思うぜぃ、一姫さんよ。


「それはともかく、今日はもう議題はないですか?」


 かといって『ともかく』で片付けるのもどうかと思うんだ、後輩風月。

 それに、もう議題とかないでしょ。一日に話し合う議題なんてたいした数ないよ。


「球技大会について体育委員会から問い合わせがきています」


 あるのかよ!


「なに? あれは先週、体育委員会に主催を任せて終わったでしょ?」


 真桜が剣呑な瞳を発言者である紳に向ける。


 八つ当たりはいけないでっせ。後輩が萎縮しちまうよ?


「予算が少ない、だそうです」


 すげえ……。真桜の眼光に全く怯んでないよ、紳。さすが同じ副会長。


「…………」


 ……と思ったけど、いっぱいいっぱいみたいだ。メガネを押し上げる動作が震えてる。


 まあ、それはともかく。

 体育委員会が金欠ねぇ……。どこの組織も金がないのは同じなんだなぁ。


「自分で言いに来いと伝えなさい。以上、他に議題ある人いるかしら?」


 三顧の礼じゃないんだから……。それに、そう言われて直接文句に来る奴なんて――


「言いに来てやったぜえぇ!」


「ホントに来やがった! それに早いよ!」


 名前を忘れたけどスゲーぜ体育委員長! まさかいきなりやってくるとは……!


「お前ら生徒会にモノモース!」


 なんか発音変だぞ、体育委員長。




 ――バトルスタート――




 プレイヤー=まおうへいか:HP9999 MP9999


 たいいくいいんちょが あらわれた


 たいいくいいんちょ:HP700 MP5


 たいいくいいんちょの こうげき


「予算いくらなんでも少ねえだろ、オイ! 500円って、小学校の遠足か!」


「うるさいわね……。耳元で怒鳴らないでくれる?」


 まおうへいかに 0のダメージ

 まおうへいかの こうげき


「じゃあ、体育委員会の残りの予算の2倍でどう?」


「に、2倍だと……?」


「2倍でダメなら10倍でもいいわよ」


「な……何考えてやがる」


 たいいくいいんちょは こんらんした

 たいいくいいんちょは こんらんしている

 まおうへいかの こうげき


「さあ、どうする? 500円? 残り予算の2倍? それとも10倍?」


「うっ……じゅ、10倍!」


「風月。体育委員会の残り予算はいくら?」


「30円です」


「じゃあ球技大会の予算は300円で。頑張りなさい、体育委員会」


「なああああああああぁぁぁぁ!?」


 たいいくいいんちょに 500のダメージ

 たいいくいいんちょの こうげき


「ま、待て! 残り予算少なすぎねえ!? もっとあるだろ! なあ!?」


「ある?」


「ないです」


「なんでじゃあぁぁぁぁぁぁっ!」


 しかし こうげきは はずれてしまった

 まおうへいかの こうげき


「風月。説明してくれる?」


「んーと……ああ、これですね。プール清掃費。前年度と比べると異常に膨れ上がってるです」


「因果応報。プール清掃をサボった、あなた達の責任よ」


「ぬおおおおおおおおぉぉっ!!!」


 たいいくいいんちょに 700のダメージ

 たいいくいいんちょを たおした




 ――バトルエンド――




 ああ憐れなり、体育委員長。まるで普段の俺を見ているようだ。

 ……てか真桜のステータス、鬼だろ。HPもMPもカンストかよ。この分じゃ攻撃力も防御力も限界値なんだろう。


「じゃ、300円で頑張って」


 うわ、追い討ち。


「予算オーバーは自腹を切ってね」


 ……もうやめたげて! 彼のライフはゼロだから!


「ずっと私のターン」


「いや、ホントに止めてやって!」


 ネタ的にもアレだから!


 そんな時、一姫が口を開いた。


「あら? 義裕は体育委員会の肩を持つ気ですの?」


「待て一姫ぇ! そういうことを迂闊に口にするなっ!」


 あせる俺。何故ならば、その言葉はこの場において核地雷級。


「裏切るのかしら……義裕?」


「はっ――!」


 真横から感じる禍々しい気配……。こっ、これは……!


「知ってるかしら、義裕? 生徒会、血の掟第7条――」


「ご、誤解なり真桜スケ……」


 必死で答弁。俺はまた死にたくないっ!


 と、その時後ろから肩をポンと叩かれた。誰?


「オレ達、仲間だよな!」


「体育委員長おおおおおぉぉぉぉっ――!」


 右手は力強く俺の右肩に乗せられ、左手はガッツポーズ。そしてその左手が一瞬だけ天地を逆転、親指を地面に突きつける。

 腹いせか!? 予算が300円になった腹いせなのか!? だとしたらこんなことは間違ってる!


「――裏切り者には、最高の死を」


 魔王陛下は裏切りを許さないのだ! 迂闊にそう取られるような言動をしちゃダメだぞ?


「死んで、たまるかあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 体育委員長を真桜に向かって突き飛ばし、即座に生徒会室から脱出!

 後ろは振り向かない。生き延びるためには何があっても振り向いてはいけない。


「ぐっ! ごおっ! あがっ! うぎゃああああああああああAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――……!!!」


 くっ……体育委員長……!

 キミのことは嫌いではないが、キミがいけないのだよ。今の状況も含めて。


 体育委員長の断末魔の叫びをBGMに超速ダッシュ! 俺はヤツのようには死なない!


「逃げ切れるとでも思ってるのかしら、私から」


 無理かもしれない。誰がシュミレートしても俺は逃げ切れないと予測するだろう。だが――!


「俺はっ、逃げ切ってやる!」


 振り向かずにただひたすら逃げろ! それが勝利の鍵だ!


「走れ、俺! 逃げろ、俺! 負けるな、俺! 生きろ、俺!」


「処刑準備完了まで10秒あるわ。それまでに遠くまで逃げれるといいわね、義裕」


 ……やっぱ死ぬかもしれない。









果たして義裕は逃げ切れるのか!? 次回へ続く!


今回は生徒会の話ですね。新登場の紳と蜜柑の詳しい話や、名前だけ出てきた人たちの話はまた後々。


義裕の生徒会内のポジションは“生徒会副会長補佐”。主な仕事は『副会長に率先して殴られる』という、本人も自覚している通り“生贄”の役割。

何故そんな役職に就くことになったのかは、またいつか語られることもあるでしょう。


それが果たしていつになるかは分かりませんが……。

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