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第4話:学食にて後輩と戦う



 目が覚めて時計を見たら、長針は大して変わっていないが短針が異様に進んでいた。


 ここから一つの真実が導かれる――すなわち!


「もう昼休みかよっ!」


 残っている記憶はホームルームが終わってから一限目が始まるまでの休み時間まで。

 最後に残された記憶から推測するに、この惨劇を生み出した真犯人は――


「――お前だぁ、倉里 真桜!」


 ビシィッ! と指を突きつけ、悪の魔王を糾弾する……って、あれ?


「何故いない!?」


 真桜さんいません。すっげえムダなパワーを使ってしまいました。

 ううぅ、つーかエネルギーが足りない。気絶……もとい、寝ていただけなのに何故腹は減るのだろう?

 三大欲求、恐るべし!


 って俺、朝食べてないじゃん! 腹が減んの当たり前じゃん!


 周りを見てみると普段つるんでる奴らは皆いない。

 寂しい……てか俺放置かよ! 誰か一人でも起こそうとしてよ!


 G...GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU...(腹の音)


 ああっ、ダメだ……エネルギーが、エナズィが足りない。具体的に言えばそう……炭水化物とタンパク質、ビタミンにアミノ酸に脂質に食物繊維やビフィズス菌が足りない!

 このままでは俺は見境なく人を襲うケモノと化してしまう。そうなったら……




 ――妄想開始――




『GRAAAAAAAAA! FOOD! FOOD! FOOOOOOOD!!!』


『――殲滅を開始するわ』


 バキッ! グシャ! ドゴッ!


『GUOOOOOOO...! FOOD! FOOO...』


『一撃、必滅ッ――!』


 ――ドガゴシャッ!!!


『……………………』


『所詮は義裕ね。インドガビアルの方がまだ強かったわ』




 ――妄想終了――




 たとえ妄想の中でも、俺が真桜に勝つ事はないようだ。

 真桜がインドガビアル(ワニ)と戦って勝てるかは不明……いや、確実に勝つな、ヤツは。


「さっさとメシ喰いに行こ……」


 く、くきゅるるる〜……(腹の音)


 一人寂しく学食に向かう俺に、答えてくれたのは腹の音だけだった。








 宮水沢学園学生食堂――そこは数多の激戦を生き抜いた歴戦の戦士達が集う憩いの場である。

 そう。歴戦の戦士達が集ってしまうのである。故に学生食堂は――


「ついには戦場になってしまったのだった……」


 そして俺は、戦うことすらできなかった哀☆戦士。


 ……ぶっちゃけ、食券が買えませんでした。

 戦場なんだよ! 開戦の狼煙が上がる頃、俺は遥かなるドリームワールドにいたんだよ!


「どうするよオレ!」


 ライフカードがあればいいんだが、あいにくそんな便利アイテムは持ち合わせていない。

 ところで『あいにく』って漢字にすると『生憎』ってなって『地球上の生物が全て憎い!』って言ってる気分になるよね。


「いやー、それはないですよ」


「あ、やっぱ? 俺もそうじゃないかと思った」


「あはははは、自分でもそう思ってたらお仕舞いですって」


「だよなー。あははははっ」


 って。


「誰っ!?」


「どもっ、学食の精霊です」


「が、学食の精霊!? ――とでも言うと思ったか、ゴラァ!」


 俺はそんな子供騙しに引っかかるようなバカではない。見覚えがあるぞ、キサマの正体は――


「えー……っと……」


 正体は……


「どうやら人の名前を忘れるようなバカですね」


「うるせぇっ! バカって言った方がバカなんだよ! バーカ!」


「…………」


「『お前は小学生かよ』って目を向けんなああぁぁぁぁっ!」


 思い出せ、俺! 目の前の女子を舐めるように見ろ!


 腰ほどまであるロングの黒髪。頭には藍色のリボン。身長は150後半。制服のタイの色から考えて1年生。顔立ちは○。スリーサイズは上からな――


「ながっ!?」


 手刀がキレイに喉仏に叩き込まれ! み、見事……!


「失礼。何やらイヤらしい目付きだったので」


「ぐううう……」


 ダメだ……反論できん。事実だし。


「で、思い出せたですか?」


「フッ、あまり俺を舐めるなよ」


 さっきの一撃。あれは確かに見事な殺人技だったが、それ故に、他の何よりも雄弁にお前の名を語っている!


「お前の名前はズヴァリ! 『春野(はるの) (なぎさ)』だあぁぁぁ!」


「違いますよ」


「…………ガーン!」


「なんで反応遅いんですか」


 いや、絶対あってると思ったんだけどなー? じゃあ、コイツは誰? そして春野 渚は誰?




 ――――『クックックッ、人の名前を勝手に使うとは……。さすがは魔王陛下の下僕……命知らずデス』




 ……なんだ、今の電波は。


「どうしたですか? 顔青いですよ」


「いや、空腹で……で結局誰だっけ、学食の精霊」


 コイツの名前が出てこない。俺はいつの間に健忘症に!?


「気絶回数が多いから、記憶が不安定なのですね」


 ……いかに普段から殴られまくっているかが分かるな。


「わたしは生徒会会計副長、高瀬(たかせ) 風月(ふづき)です。思い出せますか?」


 おおう! 思い出しましたよ! 我らが生徒会の後輩じゃん!

 ……素直に覚えてなかったとは言えんな。なんつーか、先輩の威厳ゼロだし。ここは――誤魔化す!


「ハハハ、ナニ言ってんダ。覚えていたにキマってるじゃないカ」


「まったく。週に何度も顔を合わせているですけどねー?」


「ダカラ、覚えているヨ?」


 カタコトなのは昔からサ。ドコも怪しいトコないアルネ。


「ここに買ったはいいけど使わなかった食券が」


「忘れててスマン! 二度と忘れないからそれをくれ、むしろ寄越せ!」


 食事! 食事! 俺の腹も限界だってばよ!


「明らかに人にモノを頼む態度ではないですが、ま、いいです。あげるですよ」


「YAHHOOOOOOH! 風月様サイコー! 風月様バンザーイ!」


「ロハじゃないですよ? 払うもんは払ってもらうです」


 ハッハッハッ、そんな物は大事の前の小事。俺の4452円……もとい4292円は惜しみなく投入されるゼ!


「いくらだ?」


「1点で計1050円になります」


「高え!」


 ここ学食だよ? 1点で4ケタになるって何の食券さ?


「メニューはなんなんだ?」


「『限定3食! 超豪華絢爛金箔入り冷し中華』です」


 冷し中華!? 今、冬だよ! 1月だよ!? 季節感まるで無視だよ!

 さらに言うが『超豪華絢爛』って何だ! 『超豪華』あるいは『豪華絢爛』だろ! 合わせんな!


「そんなもん誰が頼むんじゃあっ! ……ってここにいたか」


 高瀬 風月ぃ! この物好きさんめ! 説教しちゃる!


「いいか! 冬場に冷し中華を頼むような人間は、秋に花見しようと酒瓶抱えてうろついているダメ人間みたいなもんだ! だいたいね、冷し中華って言うのは」


「それ、真桜先輩も食べてたですよ?」


「実は中国で作られたんじゃなく、日本で開発されたものなんだな。詰まるところ、日本人の和心あふれるスペシャルフードな訳だ。皆もたくさん食べるんだぞ?」


「みんなって、わたし一人しかいないですけど」


 いいんだよ! 空気読め、空気を!








 で、結局高い金を払って黄金に輝く冷し中華を食べた訳だが、一言だけ言おう!

 耳の穴かっぽじって聞きやがれ学食関係者ッ!




「夏にやれ、夏にぃぃぃぃ――っ!!!」









いままで明記してなかったけど、物語中は1月なんです。季節感まるで無視です、この作品。


しかし、一日一話投稿は中々しんどい……。

大学も始まるし、早くも失速するかも。

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