極秘レポート
勇者一行早期レポート
召喚より一週間経過したので報告をまとめる
【ユウイチ・ヤシロ】
紋章:勇者
性別:男
年齢:17
脅威度:B-
容姿:黒髪、黒目。身長175。容姿端麗。短髪。
剣術、魔法ともに著しい成長を見せている。近いうちに城内での訓練から城外の訓練に移行する予定。
非常に「勇者」らしい性格。
後述のカンナ・ホリ、アリサ・ミヤムラとは幼馴染であるものの現状では恋人関係、肉体関係の類は見受けられない。勇者を利用した周辺国への外交政策に出る前に第二王女との関係を進めるべきと判断する。
チーム内でのリーダーを務めているが判断は仲間に委ねる傾向が強い。特にコウジ・サカキの意見を重用している。コウジ・サカキに関しては後述を参照。
【カンナ・ホリ】
紋章:聖騎士
性別:女
年齢:17
脅威度:C
容姿:黒髪、茶目。身長168。容姿端麗なるも胸は乏しい。ポニーテール。
結界を多用した重装甲の戦い方でチーム全体を守護している。他者を傷つけることに躊躇いがあるのか攻撃力に乏しい欠点あり。
チーム内でもかなり正義感が強い。交渉事においてはチームから彼女を切り離し別件で言質を取りその後、本件をすすめる方策が一番と思われる。ただし多用するとチーム内での信用が失墜する可能性があるので慎重に見極めるように。
ユウイチ・ヤシロとは恋仲では無いが今後そうなる可能性は大。早々に別の人物を宛てがう必要性あり。
コウジ・サカキと不仲の傾向あり。
【アリサ・ミヤムラ】
紋章:聖者
性別:女
年齢:16
脅威度:A-
容姿:黒髪、黒目。身長155。容姿端麗なるも身長が乏しい。ウェーブのかかった長髪。
聖者らしく回復と補助に長けている。戦闘能力は皆無に等しい。
チーム内の緩衝材。
積極的な主張はしないものの芯の通った意志のようなものを感じる。カンナ・ホリほど容易なコントロールはできないと考える。安易な接触は避けられたし。
カンナ・ホリ同様、ユウイチ・ヤシロとの関係を築く前に手を講じるべし。ただし慎重に。
【コウジ・サカキ】
紋章:賢者
性別:男
年齢:29
脅威度:S
容姿:黒髪、黒目。身長180。メガネ着用。極悪人面。オールバック。
魔法による圧倒的火力をほこる。現時点ですでに宮廷魔道士筆頭であるコンラッドを上回る可能性を示唆。
同時に召喚された他三人との接点は不明。
年長者でも有ることからチーム内での発言権が一番強くユウイチ・ヤシロも彼の意見を最も参考にしている。何らかの形でこの男を排除しない限りユウイチ・ヤシロの主導権を握る事は不可能と考える。
排除する際には細心の注意を払うように。直感では有るが非常に嫌な予感がする。
以上、早期経過報告である。
尚、このレポートは王家の名のもとに禁書での取扱とする。
第一王女ロザンナ・エルガルド
■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆
真っ黒だったわ。この国。
光学迷彩だとかスニーキング系の魔法を再現してどこまで潜入できるか試してたらたまたま第一王女の部屋を発見。流石に中に入れないだろうと思ってたらあっさり入れてしまった。なんというかセキュリティ、ガバガバ。
人払いしているのか王女様は一人。しばらく書斎で何やら真剣に書いててちょうど書き終わったタイミングで部屋の外から侍女に呼ばれて席を外した。そのときにえらく慌てて書類を隠したから怪しいと思って、その書類をスマホの無音カメラで撮影してきたわけだ。
ついでにその辺に積んであった書類も適当に撮影しておいた。後でゆっくり読めばいいしね。
しかし、魔法って予想以上に便利だ。呪文の内容はさっぱりだけど基本的には不要だ。魔力の存在さえ感じ取れてしまえば、後は過程をイメージして結果を得るだけだ。燃焼の過程とかね。
魔力に関しては不定形の第三の手が生えた感じって言えばいいのか。こう、両手では触れない「何か」に触ることが出来る手というか……表現するのが難しい。とりあえず手の器用さが制御、大きさが出力、持久力がMPって思えばいい。
忍び込んだときに使ったのは光の屈折で光学迷彩。空気の振動を抑える消音。ついでに魔力の使用を感知されないために偽装とジャミング。こんな感じだっただろうか。
見逃されてる可能性も否定はしないけどバレてるなら今頃もっと大騒ぎなはずだから多分大丈夫だろう。
と、そんなことより書類だ。幸い、召喚特典(?)で言語関係に不自由しないので助かる。
極悪人面て……悪かったな。おまけに脅威度Sって。そりゃこの国の言いなりになるつもりはサラサラ無いから間違ってはないけどさ。排除するなら全力を持ってカウンターを御見舞するつもりだ。
それよりも問題は三人組の方だ。見事なまでに狙われてるよ。
取り敢えず優一君(話し合いで全員下の名前で呼ぶことになった)には、早めにカンナ君と有紗君に手を出してもらったほうがいいかもしれないな。中途半端にどちらかに手を出して昼ドラみたいにドロドロな関係になられても困るし。三人の関係ができあがる前に第三者が割って入ってきて引っ掻き回されるのはもっと困る。
こうなる可能性については優一君たちには筆談を通じて「ハニートラップに注意」みたいなニュアンスで一応伝えている。それが原因でカンナ君には「恋愛をなんだと思っている」と怒られてそれ以来、妙に噛みつかれるようになった。有紗君曰く照れ隠しのようだが。どうも彼女らは優一君とそういう仲になることにそこそこ肯定的なご様子。さすがは勇者だ。補正が違う。
俺がどちらかと恋仲にならないのかって意見も出たけど適当な理由をつけて回避しておいた。優一君には伝えて彼女らに伝えていないけど将来的に俺は魔族と内通するつもりだ。バレたときに切り取れる範囲は最小限の方がいい。
さて、最大の問題は第二王女。第一王女のロザンナが確か16歳だったか。その下の第二王女がアメリア、13歳だ。これがさっぱり読めない。
本当に魔王に圧されててピンチなら四の五の言わずに第一王女のロザンナを優一君に宛てがって「勇者をめっちゃ大事にしてますアピール」を国内外に向けてするはずだけど、その線はこのレポートでさっぱりなくなった。
たぶん、第一王女は政略結婚で使って第二王女を勇者の鎖代わりにしようとしているんだろう。
その鎖となる第二王女アメリアだけど……正直どうしたものか。
何度か城の中で話す機会もあったんだけど印象としては「純粋培養されたザ・お嬢様」って感じだ。おかげで扱いがかなり難しい。いっそ第一王女ロザンナ見たく胡散臭さがあればもう少し楽なのに。
アレが演技だというなら女優でも目指したほうがいいだろう。それぐらい世間知らずな感じがひしひしと伝わってくる。
うまいこと取り込むことができれば非常に有効なカードになるけれど中途半端にフラフラされるとこっちの情報が全部筒抜けになるリスクも有る。
現時点で動くには判断材料が不足気味。第二王女の件はもうしばらく、保留にするしか無いか。
うだうだ悩んでも仕方ないし優一君に借りた教科書でも読んで気分転換しよう。