表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/49

屋敷に狐

祝・10万字突破!


前回、映画ネタを一つ仕込んだのですが気づいた方いますでしょうか?

気になる方は探してみてください。


答えは後書きにて!

「タマモ、もうそろそろ寝なさい?」


「うーん、もう少しだけ。」


母代わりであり、姉代わりでもある付き人のモミジさんの言葉に適当な相槌を打って窓の外を眺める。

 屋敷の主は今日も帰ってくる様子がない。


 賢者に奴隷の首輪を付けられて魔族の国、ヴィルヘルム魔導帝国に連れてこられてもうそろそろ三ヶ月になる。


 最初の一ヶ月は仲間と一緒に適当な宿に詰め込まれて、外に出ることも許されずにかなり窮屈な思いをした。けれど今は、ご覧の通り立派な屋敷に部屋を与えられて三食昼寝付きの夢のような生活を送っている。


 井戸に水を汲みいかなくていいし、危険な森に入って実りを採りに行かなくてもいい。

 全部、この屋敷の使用人がやってくれてる。


 ぶっちゃけ、暇で死にそうだ。


 あまりに暇すぎて、仲間の大半が使用人の真似事を始めるぐらいすることが無い。

 わたしも暇つぶしに手伝おうとしたら、“何があの男の神経を逆撫でるかわからないから、あなたはじっとしていてください!”と怒られてしまった。

 少しぐらいいいじゃない、と思ったけど里に残っている子どもたちの命には変えられないから我慢だ。


 実際のところ「外出するな」とは命令されていないから外に出ようと思えば出られたりする。そうは言っても、あの男の考えが読めないから怖くて出られなし、わざわざ寝ている竜の尻尾を踏みに行くような真似はしない。

 

屋敷で一番仲がいい家令のモーリッツさんが見かねて本を貸してくれたけれど、まずこの国の文字を覚えるところから始めないといけないからあまり暇つぶしにはなってない。

 勉強は嫌いだ。


 モーリッツさんと仲良くなった経緯は単純で、彼も暇なの。

 何せ屋敷の主はほぼ不在の状態で、仕事らしい仕事が全然なかったりする。普通ならパーティーの準備だとか来客の管理だとか忙しいはずなのに全部、賢者の居る砦の方に投げてしまえばそれで終わってしまうみたい。

 監視という名目で私と一緒にお茶をする時間が増えているのは、たぶん触れちゃいけない部分なんだろう。



 今の心境は正直、不満半分と安心半分ですごく複雑だ。



 賢者に首輪を付けられてときは、想像を絶する酷いことをされるんだろうと心底震え上がった。具体的には……こう……性的なこととか……ね?

 蓋を開けてみれば、全くそんなことはなくて平和を通り越して暇を持て余している。

 実際、首輪を付けれれてから賢者と言葉をかわしたのは両手で数えられる程度だ。

 おじいちゃんとはよく話しているみたいだけど。


 別に“そういうこと”をして欲しいわけじゃないわよ?何もされないのが一番だから。

 ただ、夜伽の一つでも強制されるんだろう覚悟してたのに見向きもされないっていうのは女のプライドとして、何かこう許せない?みたいな?

 妖狐の女って全体的に慎ましやかというか、スレンダーというか、あまり……うん、胸が大きくないのよね。そういうところで琴線に触れないって言うなら仕方がないけど、それでももうちょっと何かあるでしょ!?


 自分でも矛盾してることは理解してるよ!


 まぁ、仮にそんな扱いを受けたとしても一族を恨むことはないけどね。

 族長の家系ってだけで食料とか生活面でかなり優遇されたし。いざという時に生贄として選ばれることは覚悟してた。

 まさかこの世で最も耐え難い苦痛が“暇”だとは思わなかったけど。




 わたしと違って賢者の方はかなり忙しいみたい。

 こんな立派な屋敷をもらったにも関わらず、帰ってくるのは二日か三日に一度だ。最近は四日に一度のときもある。


 色々と聞きたいことがあるから、こうやって起きてタイミングを狙っている。

 ……毎回、帰ってきたときの顔を見るととても話しかけられる雰囲気じゃないんだけどね。こう、目が死んでるというより腐ってる?そんな感じで、少なくとも生き物がしていい顔じゃないのは確か。

 夜がダメなら朝に聞けばいいって思ったこともあるんだけど、日の出と共に起きても無駄だった。あのおっぱい(アーミラ)が見たこともない形相で飛び出していくのは何度か目撃したけど。


 せめて一番の疑問、“妖狐を巻き込んで何をしようとしてるのか”だけでも聞けたらいいんだけど。

 というのも、ここ最近になって一族も含めてどこか騒がしい。

 獣人って耳が良いから屋敷の中の会話はほとんど筒抜けだ。来客は最大の娯楽なのよ。


 ある時は“組合長”を名乗るドワーフが屋敷に押しかけてきて「あの男は相場をぶっ壊すつもりか!」って怒鳴ってた。

 何の相場かは分からないけど、あの剣幕は相当のことをやらかしたんだと思う。


 またある時は、この国のお偉いさんが来て「ぜひ、あのゲンキを複製させてほしい」とか言っていた。

 ゲンキって元気?疲れてるのかな?


 おじいちゃんは一族の何人かに声をかけてコソコソと何かやってる。妖狐の何人かはここ最近、顔も見てない。

 賢者に反乱とか考えてないよね?


 おとうさん?あんな娘を置いて復讐に走るような人なんて知らない。屋敷の何処かにはいるみたい。たまに視界の端っこの方に映るから。


「タマモ、いいかげんにしなさいよ?」


賢者が帰ってくる様子もないし、これ以上起きているとモミジさんが本気で怒りそうだからおとなしく寝よう。



 ……まさか賢者って男色じゃないわよね?


 


映画ネタの答え:「製作者:神と書かれた石」の下り。

2000年公開のSF映画「レッド・プラネット」から科学者バド・シャンティラスの言葉を引用。

派手さは無いですが面白い作品です。


ブクマ、評価、誤字報告お待ちしています。


勝手にランキングのタグは機能しているかどうかわからなくなってきましたね。

近いうちに別のものに変えるか外すかしておきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ