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フェアリーテール:ヘンリールソーの眠れるジプシーに寄せて

作者: 武田道子

フェアリーテール (ヘンリールソーの眠れるジプシーに寄せて) 




月の砂漠で

安らかに眠るジプシー

虹色のドレスが 月明かりに冴え

ジプシーは夢を見ていた


こうして物語が始まる


ハンサムな王子が ある砂漠に住んでいた

毎夜王子はライオンに姿を変え

しーんと静まった砂漠を散歩した

らくだが連ねるキャラバンのような緩やかな丘を

ライオンになった王子は、一晩中歩き続けた


ある夜、王子はマンドリンの奏でる

甘く、優しく、もの悲しい歌をを聴いた

黒くつややかに輝く肌をしたジプシーが一人

マンドリンを爪弾いていた


歌は果てしもなく広がる砂の海に

さざ波をわきたたせ

王子の体を優しく包んだ


その歌は

あまりにも甘く

あまりにも狂おしく

あまりにも深く胸を突き刺した


次の夜、王子は

抜き足、差し足、

すやすやと眠っている美しいジプシーの周りを一晩中歩き続けた

自分がライオンであることも忘れて


ライオンはのどが渇いていた

ジプシーのそばには 水瓶が一つ

ライオンは水瓶を倒して

一瞬のうちに砂に吸い込まれていく水を飲もうとしたが

最後の一滴がわずかに舌の先に触れただけだった


目を覚ましたジプシーがそれを見て

マンドリンを爪弾くと

いつか水瓶には水が溢れていた


女は水瓶を傾け

ライオンの口にあてがって水を飲ましてやった

するとライオンはいつの間にか王子に戻っていた


遠いはるかな地平線

らくだの連ねるキャラバンのような緩やかな丘の前

白く光る川が現れ、砂漠を横切って流れ始めた


虹色のドレスの美しいジプシーの娘

そしてハンサムな王子

銀色の月が西の空に傾き

東の空が薔薇色に色づくとき

二人の永遠の愛は川辺で契られたのであった


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