蝉人間
夏に鳴くセミに思いを馳せながら、夏のホラー作品にリンクさせた超短編小説。
人類は遂に平均寿命を七日にまで縮めた。
世界の技術革新は停滞し、破壊による減少しか数値は動かない。
泣き声がそこら中で響き、死体が倒れる音はリズムを刻みながら、世界は色褪せ、やがてモノクロと化す。
世の中に這う人類は、まさに「蝉人間」となったのだ。
全ての職業は意味をなさない。
全ての性行為は意味をなさない。
地球上から人類が消滅するのは時間の問題であり、蝉人間に残されたものは死だけなのである。
蝉人間はセミのように外界に生誕して、わずか七日で死ぬ。
蝉人間はセミのように死の恐怖に怯えながら、煩く泣き喚く。
蝉人間は死後、そこら中に死体が転がり、いつしか自然の摂理で跡形もなく世界から存在を消す。
地球はまだあと数億年は生きられる。
人類以外の全ての生命体は世代を超えて、未来に命を繋ぐ。
ただただ人類は閉ざされた未来を待つことしか出来ず、泣き喚く。
泣き喚く、泣き喚く、泣き喚く…
泣き喚く、死を悟り…
そして……………死ぬ。
蝉人間は中途半端な存在のまま、自然選択に失敗した哀れな存在だった。
次に人類が誕生する日が来る頃には、地球は存在しているのだろうか?すべての生命体は存在しているのだろうか?
その答えは神のみぞ知る。
自分の視点でジャンルをホラーにしました。