エピローグ「次の一歩」
「お前らで最後だ。確かに時間を決めていなかったが……」
「アハハ……」
ジェイドとラルドル、カルファ、シャスの四人が目的地である大樹に到着したのは二日目の夕方、それもあと数分で太陽が沈みきる直前だ。さすがに制限時間ぎりぎりに姿を現したことに呆れられた。
「いや……その……昨日いろいろありまして」
「そうなんじゃ……そりゃあ、大変なことがあったんじゃ」
「そのあたりはヴァンちゃんに聞いてももらえると、カルファは助かるんですけど」
「大変だったんです……」
マリオンは生徒四人の言い分を聞いて、
「ヴァン先生、こいつらこういってますが」
「あー、ちょっとな魔導書関係で厄介なことがあって手伝ってもらったんだ。でも、その件と今この時間に来るのは関係ない気もする」
ふぁあ、とヴァンは欠伸を噛み殺して、
「しかし、ジェイドたちに手伝ってもらったのは事実だ。大目に見てやれ、マリオン」
昨日の一件のあと、自分たちの野営地戻って、気が付いたら昼間だった。簡単に言えば、暴走状態だったシャスも、七曜の神剣を行使したジェイドも、完全竜化したラルドルも、緊張状態だったカルファも疲労困憊だった。その状態から体力と気力を戻すために深い眠りが必要だった。
「ふむ。まあ、時間内にここまできたんだ。良しとしよう。まあ、レイリー・ベルモットとライラ・スタンリーのようにリタイア扱いじゃないからな」
マリオンがめんどくさそうに顎で、右側を指した。
そこにはレイリーとライラの姿があった。二人は正座している。ライラの方は目を閉じて辛そうな素振りがない。しかし、レイリーはというと、
「なんで……俺が……」
彼の手には『反省しております、申し訳ありません』と書かれたメッセージボードがある。これがヴァンが、レイリーに課した罰だ。メッセージボードに加えて、ライラとレイリーは今回のオリエンテーリングはリタイア扱いになっている。
「ともあれ、お前らが最終だ。ごくろうだったな、この場で解散になるから、気をつけて帰れよ」
マリオンは手に持った名簿にチェックを入れた。
「しかし、今回は散々じゃったのう」
「ホントにねー」
いろいろなことが終わってしまえば、笑い話に出来る。前を歩くラルドルとカルファの背中を見てから、隣のシャスに視線を移した。
「大丈夫?」
「え、あ、はい。昨日は魔力使いすぎたみたいで、あっちこっち痛いですけど」
「大変だったね。でもよかった」
「え?」
「君が戻ってきて。あのまま君が暴走しつづけたらどうしたらいいかわからなかった」
「私は……ただ、あなたの声が聞こえたから」
「七曜の神剣のおかげかな……」
シャスの記憶の中でみたオズマは、なにを目的としていたのだろうか。自分の父親が姿を消し、隣を歩く魔神族の姉を斬ったのだろうか。そして、あの七曜の神剣に似た一振りの剣は一体なんだったのか。
わからない。
だから、新たな目的が出来た。
自分が魔王になって、オズマから真意を聞き出す。
全ては十年前に何かが始まったような気がしてならない。だが、それはまだ動き出しておらず、表面化してきていないのかもしれない。
「ジェイド、私、あなたには負けない。絶対に魔王になる」
「僕もだよ、君には負けないよ、シャス」
まだ始まったばかりのクラレス学院での生活だ。魔王が自分たちの中から選ばれるのかわからない。それでも自分が魔王になりたいという気持ちは変わらない。
ひとまず第一話的なところはまではここまでです。第二話的な話はいろいろ考えていますが、しばらく時間が空きます。
気長にお待ちください。




