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しましまロック  作者: kamunagi
第一章 バンド結成
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プロローグ

kamunagiです。ゆっくりまったり投稿していきます。これは淡路島という実際にある島を舞台にしたバンド少年のお話です。作中では登場人物が特殊な方言(淡路島弁)を話します。分からない個所には解説をいれたいと思います。もし淡路島の方で私の方言の解釈が間違っていましたらご指摘ください。よろしくお願いします。

 蝉の声が今日も馬鹿みたいに大合唱して、頼んでもいないのに熱帯夜でなかなか眠りにつけなかった俺を叩き起してくれた。

 

 (全くもって朝のお勤めご苦労様ですよ。おかげで俺は不健康な睡眠を強いられつつも早起きで三文の得ができそうですわ。っていうか十分寝られへんねんからその時点で何文か損しとるわい!)


 夏休みの直前に冷房が壊れ、夏休みに突入してもなかなかエアコンを直してもらえない俺の部屋は、真夏の容赦ない熱気と俺の寝汗の匂いでムンムンしており、一度起きてしまったらとてもじゃないが二度寝などできそうにもない。


 その上今日も夏期講習かと思うと私木村時雨キムラ シグレ18歳、男(彼女いない歴=年齢)は青春真っ盛りなはずの高校生活最後の夏休みにもいまいち気力が湧かず、気だるく、憂鬱で、年不相応な早起きの、退屈な朝を迎えていた。


 高校三年の頭までは陸上競技一筋に突っ走ってきた俺も、インターハイ予選であっさり予選落ち。小学生のころから熱心に取り組んできた8年間の陸上生活にあっという間に幕を閉じた。


 ついこの間まではその陸上部で部長として部を仕切り、学校では生徒会副委員長なんかもやってバリバリブイブイ鳴らしていた俺も「引退」の二文字には逆らえず、はたまたそんなことばっかりしているうちにかわいい女の子はみんな彼氏持ちになっていて、目前には受験という今までの人生最難関が待ち受けている始末。


 なんというか我ながら色々と自ら苦労を買って出て青春していると思うが、正直ここまで青春しすぎてガス欠気味になっている次第である。


 もしかしたら学校がら推薦が出るかもしれないし、大学進学のために一生懸命他の受験生たちと一緒に肩を並べてお勉強する気にはなれない。


 (はぁ~俺に火をつけてくれる刺激的な出来事はこの世の中にはころがってないもんかねぇ~)


 まぁそんなわけで俺はこの夏休みは毎日こんなしょうもない悩みと闘い続けている訳です。



   □□□□□□□□□□□□□□□□



 夏休みにも関わらず蝉に叩き起され早起きした俺は、遅刻の心配など微塵もすることなく朝の支度を進める。


 ここ最近は偉大なる目覚まし時計のミンミンゼミ様のお陰で母の愛子アイコよりも早起きだ。夏休みの朝のスタートは愛子を起こすことが日課となりつつある。


「かあさーん!今日は起きなくて大丈夫なのか?」


「うぅん……」


 愛子は翻訳家を営んでおり、女手一つで俺を育ててくれている。未婚の母というやつで、俺には父親は戸籍上存在しないらしい。父親のことは今まで訪ねたことはほとんどないが、尋ねると大抵お茶を濁すので聞かれたくないのだろう。故に俺は父親のことを何も知らない。


 ほとんど家で過ごすが、ごく稀に出版社などに出かけることなどもあるため一応起こす。あとでぐちぐちいわれるのも嫌だしな。


 返事の具合から察するに今日はどうやら家でゆっくり翻訳作業をする日らしい。

 俺は身支度をすませ、愛子の分の朝食と一緒に自分の朝食を作り、ゆっくりテレビを見ながら朝のひと時を過ごしていた。


 

 「今日はオリコンインディーズチャートを賑わせている若手バンド『セフィロト』の特集です!彼らはデビューシングルの……」


 テレビは最近売れてきているバンドの特集をやっていた。正直音楽など興味はない。バンドっていうとあのうるさい連中だろ?そのくらいの認識しか持ち合わせていないし、俺はどちらかというと小田和正や徳永英明のような癒し系の歌が好きだ。


 しかしどうやら今日の世の中はこの「セフィロト」とかいうバンドにご執心らしい。

 このバンドは約3年ほど前から流行し出したバンドで、なんでもデビューシングルから現在の4枚目のシングルまでオリコンインディーズチャートで一位をとり続けているらしい。


 世の中で流行っているといってもあまり俺の周りでは聞いてる人は少ないようだ。

 その理由として最も大きいのはなんといっても俺の住んでいるこの場所がとある田舎の島だということだ。


 兵庫県の南に位置する周りを海に囲まれ、ほとんどの土地を田んぼと山と森林が有するこの「淡路島」というド田舎の島には、電車も一切通っていなければ、バスも30分~1時間に一本が当たり前、映画館やボーリング場は島に1か所ずつしかない。青い海と空気の美味しい山林以外あまり長所の見つからない「何もない」がある島だ。


 もちろんライブハウスなんてのはないし、外からバンドなんて文化は入る余地すらない。じいちゃんばあちゃんばっかりの島だしね。

 

 俺もそうだが、子どもの頃は外で遊ぶのが当たり前で、虫捕りや缶けり、野球などはよく空き地でやったものだ。もちろん家庭用ゲームなどは人の家でよくやったが、それが飽きる頃には学校の部活動で熱心にしごかれまくる日々に突入していくのがこの島の子どもたちの法則のようだ。現に俺の高校の部活入部率は98パーセント、帰宅部は全校生徒の2パーセントということになる。

 そのようなあぶれる子どもは不良のレッテルを張られ、噂され、どこにいってもなんとなく肩身が狭いようだ。


 みんなが聞く音楽はもっぱらアイドルばっかりで、正直そこに入っていくような耳を持ち合わせていない俺には音楽は興味のない分野でしかない。


 本州や四国と橋でつながっていても、世の中と隔絶されることを余儀なくされているのがこの島の特徴と呼べるのかもしれない。



 話は戻るが、なんで興味のないバンドにこんなにも詳しいかというと、俺の親友がこのバンドにだだはまりしているからだ。


 そんなこんな考えているうちにテレビは「セフィロト」の特集を終え次の話題へと移行していっていた。

 

 家のインターホンが鳴り、いつも俺と一緒に登校する人間が玄関まで来たことを告げる。


 セフィロトにはまっている我が幼馴染兼、親友のお出ましだ。

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