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小説スラム

凶暴侯爵令嬢のお見合い

作者: 俺夢ZUN
掲載日:2026/01/27


――その出逢いは、悠遠に続く物語の始まりだった。



――そろそろ、女王を殺しても文句言われない筈。


 紫みを強く帯びた群青色の髪を頭の高い位置で纏め上げ、家出して以来ご無沙汰していた煌びやかなドレスを身に纏った少女は、深い溜め息をつく。

 自分の国の君主に対して反逆心を抱く事は到底褒められたモノではない。

 特に、少女はその女王を裏から守るための“秩序”である為、尚更許される事ではないが。

 少女が女王に殺意を抱くのも無理はない。


 何せ、この女王の突然の呼び出しにより、彼女が所属する騎士団の中の幹部組織――「紅蓮の七騎士」恒例の強化サバイバルに出られなくなってしまったのだ。

 それも、用意周到な事に騎士団長には女王から根回し済み、団長は当然ながら女王には逆らえず――そもそも、団長は盲目的に女王を敬愛している為、逆らうことはまずしない――、むしろ「呼び出しに応じないと騎士団から追放する」との脅し(パワハラ)を受け、女王主催のお茶会に参加せざるを得なくなったのだ。


 当然、女王のみならず団長にも殺意を覚える。

 今着ているドレスだって、「セシィの為に用意したのよ」と言って女王が送り付けてきたものである。

 その通り、今のイリア王国で流行している様な胸元や肩や背中が大幅に開いている物ではなく、ひと昔前に流行した肌の露出のない物だ。

「これを着てきなさい、命令よ」と書いてあったので、彼女なりに少女に気を使ったのか……。

 何にしても、脱ぎ捨てた筈のドレスを着せられ、貴族の女子同士の退屈な集まりに呼び出されるなんて……ろくなことがない。

 少女はげんなりと、王宮の中庭に続く長い廊下を履き慣れないヒールを踏みしめて歩く。


「はぁ、楽しみにしてたのに……サバイバル」


 少女の落胆の声は、広い廊下に虚しく消えた。


―― ――


―― ――


 王宮の中庭に出ると、見知った顔の女性が2人と青年と見知らぬ少年が居た。

 王宮に少年以外の三人が居るのはいつものことだ。

 一人の赤紫の髪の少女はこの王宮の主である「女王」、そして、青年は彼女の伴侶であり、警衛兼お目付け役、もう一人の紫の髪の女性は、王族とその眷族の主治医なのだから。

 この三人が問題ではない。


 問題は、目の前にいる少年。 歳の頃は行っても十代中ごろだろうか。

 藍色の目はやや目付きが悪いが、「怖い」と言う印象はない。

 むしろ、幼さが残るような顔立ち。 「童顔」と言った方が早いだろうか。

 漆黒の髪が午後の風に揺らされていた。

 騎士団の白地に紅紫(こうし)の制服が全く似合わない男。

“馬子にも衣裳”とはこの事か。


「あ、セシィ! やっと来た~!」


 赤紫の髪の女性が少女――雪華(せつか)・ヴェルベーラの姿を認めると、嬉しそうな声を上げながら立ち上がる。

 幼馴染二人とその警衛、そして、見知らぬ騎士の男。 そして、自分に送りつけられ、着せられたドレス。

 彼らの姿を見た瞬間に何となく、このお茶会の意図が読めた。


――またか!


 雪華は少年を睨むと、中庭の出入り口の壁に掛けてある剣を取り上げた。


「上等だ、アルテミス。

 この私に性懲りもなくまた、生贄を献上しようというのか」


 雪華は、ゆらり、と赤紫の髪の少女を一瞥すると、再び少年へと視線を向けた。

 状況を解っていない少年は、キョトンとしたような間抜けな表情を顔に走らせている。

 その顔さえ、雪華にとっては恨めしい物で。

 何も知らずに、のこのことこんな場所に来たのか、それとも彼も首謀者か。

 そんなことはこの際、どうでもいい。


「そんなに私に見合い相手を押し付けてくるのなら、何度でも押し付けてくるがいい。

 お前も知っているだろう? 私が、自分よりも弱い人間が嫌いだと言う事を。

 何度でも斬り捨ててやる、覚悟しろ!」


 唸るように言うや否や、雪華は剣を少年へと突き付け、それを振りかざした。

 流石の雪華も、まさか幼馴染とはいえ現女王陛下たるアルテミスと呼んだ女性へと剣を向けることはしない。

 その分の殺意も全て、()()にと差し出されたであろう少年へ向けるのみ。

――それは、完全なる八つ当たりであった。


「な……ッ!?」

「セシィ、駄目! 彼は――!」


 少年の驚いたような声と、アルテミスの悲鳴のような声が重なる。

 彼女としては、幾ら凶暴とはいえ、雪華がこのような凶行に及ぶとは思わなかったのだ。

 キィン! と、金属同士がぶつかる音が聞こえた。


 目の前にはいつの間にか抜剣したのか、剣で剣を受け止めている少年の姿があった。

 少年は、驚いている様な顔を雪華へと向けている。

 その顔を無情に見下ろせば、雪華の色違いの双眸と少年の深い藍色の目が合った。


「ふん、対応できずに無様に転げ回るかと思ったぞ」

「ッ、これでも……騎士団の、隊長なもので」

「隊長、ね。

 白紅紫(しらこうし)の隊長如きが、この私に敵うとでも?

――甘いッ!」

「セシィ!」


 雪華が左手を振り上げると、アルテミスは雪華が何をしようとしてるのかを察して咎める声を上げる。

 雪華の声からして本気で少年を殺しにかかっていた。


――騎士とはいえ、表社会の人間ディリットの彼に()()はまずい!


 アルテミスの声とほぼ同じ時に、雪華の振り上げられた腕が掴まれた。

 視線だけを後ろに向ければ、アルテミスの伴侶――神南(こうなみ)弥月(みつき)が雪華の腕を掴んで、表情の読み難い青色の目で彼女を見下ろしていた。


「少しは落ち着け。

 彼も、ある意味ルティの被害者だ。

 それに――私騎士ともあろうお前が、表社会の人間(ディリット)を襲っても得はないだろう?」


 諭すような弥月の言葉に、雪華は僅かに端正な眉を上げる。

「何だと?」と静かに呟いた彼女は、少年へと目を向けた。


表社会の人間(ディリット)? アルテミス、お前っ……、遂にそっちにまで手を伸ばしたのか!!」


 驚きと呆れのあまり、雪華は思わず敬称も敬語も吹っ飛ばしてアルテミスへ視線を向ける。

 視線を受けた当の本人は全く悪びれもせず、しれっとした態度で言い放った。


「だって、セシィの凶暴性を知ってる裏社会の人間(ロヴェッショ)は皆逃げるじゃない?

 でも、セシィもそろそろ結婚して家督を継いで欲しいのよ!」


――ディリット? ロヴェッショ? 一体、何の話だ……?


 話題にされている当の少年本人は、立ち上がりながら雪華やアルテミスの会話の内容に疑問を持つ。

 その疑問は、“表社会”に生きている人間にとっては聞き慣れないものなので、当然の反応だ。

 彼の様に“セカイ”に“裏”と“表”がある事を知らない表社会の人間には、その言葉も“裏社会に生きる人間”の存在も知り得ない事なのだから――。


 思考の波に囚われていた彼を引き上げたのは、アルテミスの言葉だった。


「そう言う話を弥月にしたら、彼を紹介してくれたの。 彼、弥月の幼馴染なんですって!

 名前は――」

「騎士団エルネスト隊隊長、神谷(こうや)璃蓮(りれん)です。

 まさか、私騎士のヴェルベーラ卿に会えるとは光栄です」


 神谷璃蓮と名乗った少年は右手を左胸に沿えて軽く頭を下げると、アルテミスの紹介の続きを引き取った。


 貴族の間で行われる礼の作法。

 雪華は表向きには、“侯爵”令嬢という事にはなっている為、璃蓮の作法は問題ない。

 しかし、イリア貴族の中で彼の名前で思い当たる階級も称号もない。

 つまり彼は、国外の貴族か平民のどちらかなのだろう。


「はぁ……、いい加減、放っておいて貰いたいものですね、陛下。

 私の父はまだ存命な上、あと30年は死にそうもないですよ。

 結婚して家督を継ぐ予定もなければ、今のところは私騎士団で悠々自適な騎士ライフを送る予定です」


 璃蓮を一瞥した後、深い溜息を吐きながら雪華は円テーブルの空いている椅子に座る。

 その表情は無表情ではあるが、何処となく不愉快そうな雰囲気を醸し出していた。


「私の人生に伴侶と言うモノは邪魔なモノでしかないのですよ、陛下。

 陛下も知っているであろう?

 私は、自分より弱い人間には塵ほどの興味も関心もない。

 そこの……、神谷璃蓮と言ったか?

 陛下のお遊びに付き合わされたことは同情するが、陛下の目的は分かっただろう?

 さっさと尻尾を巻いて逃げるなり「なんて奴と引き合わせようとしてくれたんだ!」とでも吐き捨てて退散するなり好きにしろ」


 そう、アルテミスがこういった席を設けるのは今に始まった事ではなく、今回で15回目である。

 毎回毎回、何処からか目ぼしい男を見つけてきては男の方には「お茶会をしましょう」と、そして、自分の方には「命令よ、お茶会をしましょう」と誘い、突発的にお見合いをさせる。


 今までは、雪華が相手の顔を見た瞬間に斬りかかれば、若しくは、雪華の顔を見た瞬間に相手は脱兎の如く逃げていたのだが。

 今回連れてこられた少年は逃げる様子はない。

 むしろ――


「では、お言葉に甘えて。

 ヴェルベーラ卿、僕と結婚してもらえませんか?」


――怖じ気付く様子も、畏怖する様子もなく、堂々と求婚してきた。

 それも、目線を椅子に座っている自分に合わせる様に軽く体を曲げて、まっすぐ目を合わせてくる。

 近付かれると、顔の幼さの割に長身である事が分かった。

 彼は雪華の手を取って、その白い手の甲に唇を落とす。

 その彼の行動に驚いてフリーズする事5秒。


「は……?」


 無表情の雪華からは、抑揚のない声が漏れた。


「まぁ!」

「……」


 対するその様子を見ていたアルテミスは嬉しそうな声を上げ、弥月は無言で肩を竦め、もう一人のその場にいた女性――フィア・デュランデ・ハーストは、我関せずと言ったように悠然とティーカップに口を付ける。


「……」


 璃蓮から求婚された当の本人は、依然と無言で無表情のまま、じっと自分を紳士的に見る少年に目を向けている。


――何を言っているんだ、こいつは。

 私には年下の(ショタコン)趣味はない。


 ややあって、無言だった雪華の口から零れたのは、こんな言葉だった。


「……私には年下趣味はないし、そもそも結婚する気はないと、さっき言っただろう?

 何を聞いていたんだ、お前は?」

「……」


 雪華の言葉に衝撃を隠せない璃蓮。 微笑んだ顔のまま、表情がフリーズする。

 それもそうだろう。

 大人びた外見の彼女ではあるが、自身よりも“年下”の女性から「年下趣味はない」と言われたのだ。


「そもそも、見た所結婚できる年齢でもなさそうだが?

 それどころか、成人すらしていない子供にしか見えないが」


――おのれ、童顔んんんんん!!


 雪華の口から発せられた言葉に璃蓮はショックを受けると同時に、自分の顔を恨む。

 こほん、と咳ばらいを一つ落とすと彼は言った。


「お言葉だが、ヴェルベーラ卿……僕はこれでも成人済みで、今年十八になりましたが」

「は……?」


 そう、璃蓮はつい最近十八になったばかりである。

 このイリア王国では十六歳で成人を迎える。

 つまり、璃蓮は成人して三年経っているという事だが……童顔の所為で未成年と見られがちである。


 彼からされた説明に驚きを隠せない雪華。

 相変わらず無表情ではあるが。


「……そうか、それは失礼した。

 何処からどう見ても年下の子供の様にしか見えなかったもので」


 一応の謝罪はする。 侯爵家の娘であるという事は変わらないのだから、最低限の礼儀は欠かない。

 それが貴族のマナーだ。

 さっきは、嫌悪感と怒りに駆られて思わず襲い掛かってはしまったが。


「なので、結婚する事は可能なのですよ、ヴェルベーラ卿」


 雪華の手を取り、ずいっと寄ってくる璃蓮。 顔が近い。

 雪華は不快感に駆られ、傍らに立てかけていた剣を空いている手で取り上げると立ち上がり、璃蓮へ向かって突き出した。


「お……っと」 

「セシィ!」


 間一髪で避けた璃蓮の呟きと、アルテミスの咎める声が重なる。

 剣の切っ先が璃蓮の鼻先で止まると、雪華は璃蓮を睨み上げた。


「その喉笛を掻っ捌かれたくなければ、さっさと出て行け。

 先ほどから私は何度も言っている。

 私の人生に於いて、伴侶など邪魔なモノでしかないんだよ。

 そもそも、初対面で求婚するなど聞いた事もない。

 その時点で礼儀がなってないぞ」


 底冷えするかのような低い声。

 絶対零度の眼差しは、不快な物を見るかのように険しい。

 元より釣り目気味の黄金と藍色の双眸に、頬にある黒い刺青のような痣は彼女の顔を険しいモノのように見せていたが、怒ると尚の事表情が恐ろしくなる。

 まるで、般若でも棲み着いているかのようだ。


「……ふむ」と、璃蓮は考えるような仕草を見せた。


「確かに、突然求婚はなかったかもしれませんね。 迂闊でした。

 では、結婚を前提としたお付き合いから始めるのはどうでしょう」

「違う、そうじゃない」


――この男は天然なのか?

 何故、その結論になる。


 至って真面目に提案してくる璃蓮に、頭痛を覚える雪華。

 そして、直感する。

 こういうタイプが一番面倒臭く、そして、粘着質でしつこいのだ、と――。


「あぁ、それも駄目ですか……、では――」

「貴様とお近づきになるつもりもないんだよ。

 それに、先にも言った通り、私は自分よりも弱い人間には興味もない。 残念だったな。

 嫁候補探しなら他でやれ」

「つまり、強くなって私騎士団に入る事ができれば、お近づきになれる、と」

「……」


――ダメだこいつ。 人の話を聞かない。


 雪華はアルテミスへともの言いたげな目を向ける。

 当の彼女はキラッキラと、これでもかという程目を輝かせて親指を立てた。


――ダメだこいつ。 あっちの味方だ。

「求婚受けなさいよ!」じゃないんだよ、あの野郎。


 それでは、と、助け舟を求めてフィアを見れば。

 彼女は彼女で読書に夢中だった。


――こいつも駄目か。 意識が別世界に逝ってやがる。


 最後の砦の弥月も、肩を竦めてこちらを見守っているのみ。


――クッソ、澄ました顔しやがって、そもそもお前の幼馴染だろうがテメェ。


 今、この場に雪華の味方をする者などいない事を瞬時に悟る。


――この状況、もうキレていい筈。


 雪華は剣を引くとそれを捨て、地面へ手を付けた。


「強くなって私騎士団に入る、だと?  ふっ、理想が高いのはいい事だがな」


 雪華が手を付けた地面から二振りの木刀が現れる。

 一つは長刀、もう一つは短刀。

 それをそれぞれ、左手と右手に構え、璃蓮へと距離を一瞬にして詰める。


「な――っ!?」

「この私に敵わない時点で私騎士団を目指すなど――」


 雪華が短刀を薙げば、紙一重でそれは躱される。

――が、それはただの囮に過ぎない。

 数秒遅れてすれ違う刹那、長刀を璃蓮の腹部に叩き込んだ。


「──ッ!」


 雪華が叩き込んだ長刀は璃蓮の鳩尾へ入り、胃酸でも逆流したのか彼は口の中に酸味を感じた。

 軽く意識を持って行かれそうになるが、どうにか踏みとどまる。

 しかし、腹部の痛みにより上手く脚に力が入らず、璃蓮は頽れた。

 その喉元に木刀が突き出される。


「笑止千万、寝言は寝てから言え!」


 雪華は璃蓮の背後に回ると、背中越しに逆手に持ち換えた長刀を彼の喉元に突き立てた。

 肩越しに璃蓮を睨めば、彼はかなりのショックを受けた様で幼さの残る藍色の瞳を零れ落ちんばかりに見開いて愕然としている。


 騎士団エルネスト隊。 騎士団の中でも最精鋭の騎士が揃いに揃っている隊。


(なるほど、その隊長ならば、腕には余程の自信があったのだろう)


 それが、自分よりも年下の、それも、騎士団に入って2年程しか経たぬ少女にコテンパンにされたとあっては、彼のプライドはズタズタだろうな。

 そんなことを思う雪華。 


 それなら好都合、これに懲りれば、こいつも無謀な求婚どころか、自分と関わろうだなんて思わないだろう。

 しかし。 そんな雪華の予想は――裏切られた。


「いや……驚いた。

 噂以上に強いですね……流石、“青嵐(せいらん)の虎”と言われるだけはある……」

「ちょっと、大丈夫なの!?」


 ふらり、と立ち上がる璃蓮に、漸く現実に戻ってきたフィアが慌てて駆け寄る。

 彼女は、雪華が璃蓮にフルコンボを決める瞬間を見ていたのだ。


 「大丈夫ですよ……割と体は丈夫な方なので」


 そう言って微笑む璃蓮だが、表情からは僅かに苦痛が見え隠れしている。

 そもそも、雪華は手加減を知らない人間だ。

 そんな彼女が手加減をしている筈もなく、それを受けても立ち上がる彼は人間か?

 ふと、そんな疑問がフィアの中で浮かんでくる。


「必ず、私騎士団に入れるくらいになります。

 もし、私騎士団に入る事が出来たなら、その時は、君を名前で呼ばせてください」


 貴族の間では、余程親しい人間でない限りは名前呼びや愛称で呼ぶ事をしない。 それがマナーとなっている。

 つまり、璃蓮は彼女と対等になろうとしているという事で……。

 そこまでして自分に近付こうとする理由が解らない。

 故に雪華は困惑する。


 しかし、まぁ。

“私騎士団”は表向きは最強の7人で結成している騎士団の最高幹部組織。

 その実情は、“裏社会の秩序を守る為の組織”。

 つまり、私騎士団は全員裏社会の人間(ロヴェッショ)という事で、表社会の人間(ディリット)たる彼が私騎士団に入る事は不可能だ。


 表社会基準で考えれば、エルネスト隊の隊長に抜擢されている所を見ると確かに強いのかもしれない。

 しかし、裏社会の人間(ロヴェッショ)表社会の人間(ディリット)では、両者間の間に歴然とした力の差が存在する。

 その為、裏社会の人間(ロヴェッショ)表社会の人間(ディリット)に危害を加えない様に裏社会の人間(ロヴェッショ)には“アウラ条約”と言う名の守るべき義務が課せられている。

 それを遵守するなら、璃蓮は私騎士団へは入れない筈だ。


 なので。


「ふん、一応覚えておこう」


――どうせ、私騎士団には入れないしな。


 雪華の見通しは、大分甘かった。 それを思い知るのは、半年先の事で。

 雪華は、好青年スマイルを浮かべながら「では、ここで失礼します」と去っていく璃蓮の背中に目もくれず、アルテミスへ向かって鬼の形相を見せた。



 その後、アルテミスは激怒した雪華に小言を食らうが、アルテミスは全く反省も後悔もしなかったばかりか、璃蓮と雪華をくっ付ける為の計画を練りに練っていたという。



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