45
「……それは出来ない相談だね」
顔が電源を落としたテレビみたいに真っ黒だ。
「理由を聞いても良いかな」
すると、いつの間にか紳士服の男性に変わっていたウツロはクックックッと笑った。
「何故って? 私の大切な加護持ちの子をあんな所に閉じ込められてるのを私が見逃す訳ないだろう?」
「それじゃあ、彼らの人生はどうなる。そんな場所に閉じ込めて」
「幸せさ、本殿の中暖かいベッドの上で一生覚めない幸せな夢を見れるんだから。君だって幸せだったろう?」
「あんなの幸せなものか!」
苦々しい顔で言い放つ東雲。
「君達人間は、どんな仮初でも縋りたいほど脆弱なのだろう? だから私みたいな存在をつくったんじゃないのか?」
またウツロの姿が変わった。今度は、僕が初めて出会ったセーラー服の女子高生だ。
「確かに人は弱い、儚い夢に溺れたくなる時もある」
「だったら――」
「私達は仮初の夢になど溺れない! たとえ! 私達1人1人は弱くとも、ちっぽけな存在でも! 人と繋がり、人と共に現実を生きる。それが人間というものなんだ」
「……くだらない妄言だな。どうせ2人ともここから出たってあの監獄に入れられるだけなんですよ。そんなのを君は生きると言うのですか?」
今度は幼稚園児位の子供に変化した。勿論、顔は真っ暗なままだ。
「だったら、私達が保護します! 人を殺さないよう治療して、普通の生活を、人間らしい生活を取り戻してみせます!」
「……そんな保証何処にある?」
「それは、貴方が良く知ってるのでは? どうせ私達の事も監視してたんでしょう?」
ウツロは答えない。
「もし、またあの牢屋に2人が捕まったら、今度こそここでの夢の世界に連れてって下さって構いません。勿論、私も一緒に」
「へぇ……だがそれだと私にメリットが無いじゃないか」
「いや、ウツロにはメリットしかない筈だよ」
「……というと?」
「だって、君は2人に幸福になって欲しいんだよね、だったら、現実で2人が幸せになる事。それこそ君にとっての最大のメリットなんじゃないかい?」
「…………クックッフッフッハッハッハッ!」
ウツロは紳士服の男の姿に戻ると突然賽銭箱を叩いて笑い出した。顔のモザイクがチカチカと三原色に点滅していた。
「笑ったのは何年振りだろうね。良いよ。君達の治療を信じても。でも、1つ懸念点があるよね」
ひとしきり笑ったウツロが指を鳴らすと本殿の扉が開き、僕達はそこから出てきた予想外の人物に目を丸くした。
「どうして……ここに!?」




