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「まさか、こんな物が有ったとは」
「し、知らなかったよ」
塀に吸い込まれて行った鶴見達を見て、狐地と蟻塚も中に入ってきた。
「この上にウツロが。恐らく詩乃先生もここに連れて来られただろうと」
「なら、行くしか無いですね」
「ぼ、僕が前、行くよ」
蟻塚は体を異能で肥大化させ、前を歩いていく。
階段は非常に長く登っていくと次第に空が雲に覆われてきた。
「ん、これは……」
ぽつりぽつりと鼻先に当たるのが雨だと気付いた時には視界が遮られる程の豪雨が降り注いでいた。
「み、皆、大丈夫?」
「――大丈夫です!」
「こんな急に振ってくるとはね、山の天気は変わりやすいと言ってもこれは……何かの意思を感じるよ」
豪雨の中びしょ濡れになりながら、慎重に階段を上がって行く。階段は爪先がギリギリ掛かる面積しかなく、気を抜けば落ちてしまいそうだ。
10段程登った頃には空が何度も光り輝き、雷鳴が鳴り響き始めていた。
「このまま進んで大丈夫何ですかね」
「そんな事言っても、進むしか無いじゃない!」
2人の口論を止める様に爆音が鳴り響き、ミキミキミキという音が聞こえてきた。
「今度は何!?」
「か、雷が落ちた、みたい?」
「では、この音は?」
ミキミキという音は響き続け、その正体を4人の前に現した。
前方数段上から突如大きな茶色い壁が落ちてきた。それは土管ほどの大きさの巨木だった。先程の落雷で折れたらしいそれは階段を完全に塞ぎ4人の元へ転がり落ちて来た。
「うぅ!」
蟻塚は咄嗟に前へと出て異能を使いそれを掴み階段を数段滑り降りながらも何とか止めた。
「こ、これ、持ち上げてるのきつい、下、通って、進んで! 速く!」
そうとうな重さなのか顔を真っ赤にして持ち上げていたが、流石の蟻塚もそう長くは持ち上げられないようだ。
「ありがとう少しだけ頑張って! 億利さんから行って!」
丸太の下を億利は四つん這いで進み、丸太を抜け後ろの鶴見に手を伸ばした。
鶴見が潜り抜けたその時。爆音が鳴り響く。また何処かに雷が落ちたらし――
「億利さん! 危ない!」
ドンっと前に突き飛ばされ、階段に足をぶつけながら数段登ると同時にドスン! ともドカン! とも取れる音が億利の背後からした。
億利が慌てて振り返ると、そこには鶴見の姿は無く、巨大な丸太の壁が有るのみだった。
瞬間、血の気が引いた。まさか、鶴見さん。
億利は慌てて丸太を叩き、大丈夫か、安否を確認しようとするが、声が出ない。
「私は大丈夫! 億利さん」
勢いよく顔を上げた億利。
「ただ、3人とも足止めを喰らっちゃったから、先に行ってて貰える? ……ごめん眼鏡割れちゃって何言ってるか分からないの。速く行って! 私達もすぐ追いつくから!」




