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頭を抱えながら億利はゆっくりと起き上がった。
「大丈夫? ……そう、なら良いんだけど。え、夢で?」
「ちょっと、鶴見さん。私達は眼鏡が無いので何も聞こえないのですよ」
億利の表情や目の動きから何かを伝えている。というのは分かるが、生憎2人には何も聞こえていなかった。
「そういえばそうだった。じゃあ私がそのまま億利さんの話を伝言するから」
「はい、それでお願いします。それで先程までは何を話して?」
「えっと、億利さんのお兄さんの話。お兄さんの事、思い出したんだって、夢の中でお兄さんと幼い頃の億利さんが出てきたとか」
「過去のお兄さんとの思い出が夢として記憶に現れた。
と言った所ですかね」
「……それで夢の中で兄が死んだ数年後? 幼い自分がウツロに会っていて、異能を与えられて記憶を消されていた……」
「異能を与えて記憶を消すなんてまさしく神業ですね」
半ば諦めたように笑う狐地。
「あながち神というのも間違いでは無いかも知れない」
「というと?」
「億利さんがウツロと会ったのは神社だって、それもこの町の」
「この町の?」
「で、でもそれって、おかしい、よね?」
「うん。億利さん。この町に神社は1つも無いのよ」
徳利の目が見開かれ、顎に手を当て俯く。
「記憶違いとかでは無いのですか?」
億利は激しく首を横に振り、立ち上がった。
「どうしたんですか? え、連れて行く? ちょ、ちょっと!」
億利は鶴見の手を掴むと、部屋から飛び出して行った。
「蟻塚くん! 我々も行きましょう!」
「ちょっと! 億利さん! あ、お邪魔しました!」
億利に手を引かれながら、家を出て真っ直ぐに住宅街を進む。
住宅街を抜け、マンションや、スーパーの横を通り過ぎた先、一本道の突き当たりT字になった道の前で億利は止まった。
「億利さん、どうしたの!?」
「2人とも。やっと追いつきましたよ」
「い、いきなり、どうしたの?」
「そんなの、私が聞きたいですよ」
億利が睨みつける先には何も無い。
「……行くって、え、ここ家の壁」
億利は深呼吸をし、覚悟を決めるとただ真っ直ぐに進んだ。
鶴見は引っ張られるまま億利に手を引かれて一軒家の塀に走って行き思わず目を瞑った。
「……あれ?」
いつまで経っても壁に当たる衝撃が無いため、目を開くと、先程まで合った家と塀は消えており、目の前には大きくて真っ赤な鳥居と見上げるほどの山の上まで続く階段があった。




