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「あんま迂闊に近づくなつったろ!」
「すみません、つい」
管制室に戻った瞬間、柳田は線が外れたように凄い形相で詰め寄ってきた、その覇気に詩乃は思わず一歩後ろへ後ずさった。
「とにかく! 無駄に! 刺激するな! もし何かあったらどうするんだ」
「そうですよ、あまり危険な事をするのはおすすめ出来ませんよ」
全員がビクッと止まった。今の発言は、詩乃でも柳田でも、勿論僕でもなかった。
「誰だ!」
それは管制室のソファにいつの間にか座っていた。黒いスーツに身を包んだ男の姿で、奇妙な事にその顔はまるでテレビの砂嵐が起きてるかのように見えない。
「私の名はウツロ。私の加護を持つ人たちを解放させてもらうよ」
丁寧なお辞儀をしたウツロだが、この状況だと不気味な印象がかえって大きくなるだけだ。
「ここは部外者は立ち入り禁止なんだよ!」
そう叫びながら柳田は素早い仕草で懐から拳銃を取り出し3発警戒な音を鳴らして撃ち込んだ。
「おやおや、危ないですね」
ウツロはその場から一歩も動いていない筈なのに、玉は全てすり抜けて後ろの壁に当たっていた。
「っち、化け物が」
玉の切れた拳銃をその場に捨てて悪態をつく。
「満足かな? それじゃあ解放させてもらうよ」
「駄目に決まっとるだろうが!」
一体何処に入っていたのか、柳田はアサルトライフルを懐から取り出し撃ち放つ。
「危ないですねぇ」
ウツロは一向にその場から動く気配は無い。
「柳田さん、無闇に攻撃するのは」
「良いから下がってろ」
柳田は詩乃を自身の後ろに引っ張って、懐から絶対入ってなかった筈のロケットランチャーを取り出した。
「2人とも、多少の怪我は許してくれよ」
ロケットランチャーを撃ち放つ。小さな部屋に爆風が吹き荒れ、爆音が響き渡った。
「うわぁ!」
爆風は非常に強く、詩乃は壁まで吹き飛ばされた。
バンッという音と共に詩乃と僕は壁に叩きつけられた。詩乃は打ちどころが悪かったのか項垂れて起き上がらない。
「……2人とも、大丈夫か?」
煙が晴れ、爆破箇所はウツロ含めて跡形もなくなっていた。
「全く、酷い事をします」
振り返った柳田の先には気絶した詩乃と、その詩乃に寄り添うウツロが居た。
「なっ……」
「それでは、さようなら」
ウツロと詩乃が昔のゲームのバグみたいに、電波の悪いテレビのようにブレて消えてしまった。
ブレが完全に消失したと共に警報が耳をつん裂く。
「……やられたな。海谷も糸夜くんも居ない」
ホログラムを操作し、警告音を消した柳田はそう諦めたように言って黒焦げのソファに腰を下ろした。




