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「それじゃあまた2週間後にね」
「本当にお世話になりました」
糸夜の家の前、糸夜が玄関の扉を開けようとした瞬間、詩乃の電話が鳴った。
『もしもし、詩乃か? 柳田だ今何処に居る? うちのリーダーが容疑者を捕まえたから犯人と同一人物か確認して欲しいんだが』
「おっとと、ごめんね変なもの聞かせちゃって。分かったすぐ向かうよ。え、こっち来てるの?」
慌ててスピーカーから元の音量に戻すと、詩乃は僕達から離れて電話を続けた。
「今の声……」
容疑者って……あの路地裏で会った女性だよね。よく捕まえられたな。
「ごめんごめん。お待たせ。スーパーでリーダーさんと待ってるって。じゃあまた2週間後にね、糸夜くん」
そうして僕達が別れを済ませスーパーへ向かっていた時だった。
「ま、待って下さい!」
糸夜がおぼつかない足取りで走って来た。
「どうしたの? 糸夜くん」
「はぁ、はぁはぁ」
糸夜は息を少しずつ落ち着かせる。
「はぁ、今から会う柳田さんって方、警察ですよね?」
「え、うん、そうだけど」
「僕も、連れていって下さい!」
覚悟を決めたのか、糸夜は詩乃の手をグッと握ってそう言った。
「え!? でもなぁ……これから行く場所も決して安全では無いよ?」
「だったら尚更連れてって下さい! 僕の異能があれば護身にもなります! むしろ僕の方がよっぽど安全ですよ」
「いや、けど、ねぇ」
「お願いします!」
深々と頭を下げる糸夜。
「そこまでして来るものじゃないよ。どうしたの? 一体」
「僕も良く分かんないんですが、会わないといけない! って僕の中の何かが叫ぶんです」
「う〜ん……とりあえず柳田くんに聞いてみるよ。会うだけなら大丈夫かもしれないし」
「ありがとうございます」
「まだこんなとこに居たのか、スーパーに来ないから探しに来たぞ、リーダーもスーパーで待ってる」
電話を取り出し確認しようとした詩乃の前でパトカーが止まった。
「あ、柳田くん。丁度良いところに」
「あ、あの!」
「ん? 君はもしかして、縄次さんの息子の糸夜くん?」
パトカーから降りた柳田はそう言って糸夜に近づいた。
「えっと、確かに僕は糸夜ですが、その、縄形さんというのは一体?」
「なにって、俺の先輩で君のお父さんだよ。え、合沢糸夜くんだよね? 懐かしいなぁ、覚えてる? 懇親会で、つか何で詩乃と一緒に……あ」
柳田の顔から一瞬で血の気が引く。
「父……親? そう言えば、僕の父は、あれ? 違う、嘘だ。やめて」
柳田は青い顔のまま詩乃を見た。
「柳田くんの思ってる通り、糸夜くんは僕の患者だよ。すまない。まさか、2人が知り合いだったなんて」
「まじかよ。んな事……いや、俺が迂闊だった」
何がなんだか分からなかったが、僕が雰囲気から明らかに良くないことが起きている事を理解したと共に糸夜がパタリと力なく倒れた。
「糸夜くん!」
僕は糸夜が倒れて落ちる前に膝を滑らせ膝枕する形で支えた。
「記憶の混濁と情報処理での気絶でしょう。異能が暴発する可能性があります。警察署に確か異能力者用の牢が有りますよね?」
糸夜が倒れてもあくまで冷静に詩乃はそう述べた。
「そこに恩人の息子をぶち込めって? それにリーダーも……わあったよ! 行きゃ良いんだろ! 行きゃあ。おら、早く乗り込め!」
急いで柳田は運転席へ戻ると、全員乗ったのを確認してエンジンを勢いよく吹かして発進した。




