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「なぁ、挨拶でも何でも構わんが、入らないか? 外は暑ぃ」
八凪田は制服を着崩し、シャツをパタパタと仰いでいた。
「そうね、詩乃さんもそんな服じゃ暑いだろうし続きは中でね」
僕達は連れられるがままに天下の後に続いた。
「戻ったよ。お茶用意して貰えるかな?」
通されたのは警察署の奥の奥。物置なんかの置かれた部屋がある廊下の更に奥の一角。プレートの中に小さく特異犯罪課と書かれた部屋に連れて行かれた。
「どうぞ!」
僕達が応接用のソファに座ると、茶髪を短く揃えた女警官が笑顔でお茶を渡してきた。
「ありがとうございます」
「あの方も前回来た時は見なかった方ですね」
「あぁ、初回は八凪田くんとしか会ってないんだったね。彼女は今年入った新人さ」
部屋の奥へと行ってしまった茶髪の警官に優しい目を向ける天下。
「なるほど。そうだったんですね」
「似顔絵捜査官が来るまでに読み終われよ」
八凪田が一冊のバインダーを机に放った。『栄光の手事件』と表紙にテープで貼られている。今回の事件の内容が載っているようだ。
「ありがとうございます」
詩乃はそのバインダーを手に取ると1ページ1ページじっくりと読み進めていく。
「ありがとうございました。充分です」
数分読み込んで詩乃はバインダーを返した。
「よし。次はこっちの要件だな」
バインダーを返すタイミングで部屋にノックをして新しく警察官が1人入って来た。手にはスケッチブックと鉛筆。先ほど言っていた似顔絵捜査官とやらだろう。
「初めましてぇ〜早速容疑者の年齢や性別、髪型に顔に何か特徴があれば教えて頂けますかぁ?」
のんびりと間延びした声に、眠たそうな羊の様な目をした女性の警察官だ。
「女性で、年齢は二十代後半。髪型は黒髪で肩くらいまであるストレートでした」
「こんな感じですか?」
見せられたスケッチブックには本当に居そうだが、僕達が見た人とは似ても似つかない誰かが描かれていた。
「いや、確かもっと眼はハッキリとして、目元には隈がありました。鼻も整っててすらっとした印象の顔立ちです」
「こんなんですかぁ?」
「さっきよりは近いですあと——」
詩乃はあの出会った一瞬で詳しく見てたらしく似顔絵がどんどんとあの時の女性に近づいていく。
「うん。こんな感じだったと思います」
最終的には僕達が見た女性とほとんど変わらない似顔絵になっていた。詩乃の記憶力も凄いが、口頭だけでここまで似せられるのも凄い才能だ。
「それじゃあこの似顔絵を元に犯人探しと行こうか。八凪田は2人を送ってあげて」
僕達は用済みと言わんばかりにさっさと外に押し出されてしまった。




