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「さて、つまらない話はここまでにして、折角私の家に来たんだ。人類の叡智の結晶で遊ぼう」
不崎は客間から僕らを連れ出し畳張りの部屋に連れて来た。そこにはテレビと色々なゲーム機やボードゲームが押し入れの中に所狭しと並べられていた。
「私は昔からゲームには目が無くてね。ついつい集めてたらこんなになってたんだよ。ほらっ」
いつの間にか不崎はゲームのリモコンを3個持って僕達に渡した。テレビに映るのは僕も知ってるパーティゲームだ。
「ゲーム……いつぶりだろう」
僕はリモコンを受け取る。結構前に生産が終わったゲーム機だ。僕が小学生くらいの頃に人気だったのを覚えているが、最後にしたのはいつだっただろう。頭に靄がかかったように思い出せない。
「折角だし遊ばせて貰おうか」
「ほら、メイも隣に来なさい。億利さんももっと楽にしなさい」
不崎は母親のような優しい笑顔でメイと僕を隣に座らせた。
「……中々やりますね、億利さん。まさか私が負けるとは」
不思議と体が覚えていたのか、結果は私が1位で10点差で不崎。メイがそこから50点更にそこから100点下がって詩乃の順番だ。
「それじゃあ私達はそろそろ帰りますね」
「この後は病院に戻るだけかい?」
「はい。その予定ですが」
「……もう一度ゲームを、と言いたい所だがもうお昼過ぎだ。うちで食べて行きな。うんそれが良い」
「良いんですか?」
「良いんですかって、いつも食べて帰ってるじゃないか。億利さんの前だからってカッコつけない」
「あはは……じゃあ頂いていこうかな。億利さんも大丈夫?」
「僕は大丈夫ですけど」
毎回患者の家で食事って……どうなんだ?
僕達は客間に戻ると、食卓を囲んで座った。
暫くして運ばれて来たのはくつくつに煮立った鍋だ。
「我が家特製の精進料理。たんとお食べ」
メイによってお椀に救われた鍋の具材を見る。白菜や大根、人参などの野菜に鶏肉や豚肉の入った鍋だ。
「お椀は行き渡ったね」
不崎は全員に目配せして手を合わせた。
「いただきます」
「「いただきます」」
僕達は不崎に続いて手を合わせると食事を始めた。淡白そうな見た目の鍋だが、予想以上に味が濃い。
ただし濃いと言っても、しょっぱかったりする訳ではなく、素材同士が引き立てあい、素材の出汁が良く出ているといった味の深さ故だ。
「今日の鍋は美味しいだろう?」
「はい、すごい味が濃厚ですね」
「分かるかい? 今日の肉と野菜少し高いのにしたんだよ。まぁ1番はメイの料理が上手なのが理由だけどね」
「確かに、メイさんの味付けが素材の良さを更に引き立ててますね。とっても美味しいです」
「ありがとうございます」
こんなに楽しく心暖まる食事はいつぶりだろう。会話は止まることなく鍋が空になるまで続いた。
「それじゃみんな満足出来たかい?」
最初と同様に全員に目配せすると、不崎は手を合わせた。
「ご馳走様でした」
「「ご馳走様でした」」
僕はお腹も心も満たされた満足感のまま不崎に続いて手を合わせた。
「それじゃあ、そろそろ病棟の方に戻りますね」
「うん。億利さんもまた診察以外でもいつでもおいでね」
「はい」
玄関で後ろ髪を引かれつつも2人と別れた。
病棟へ向かう途中、僕達の満足感を吹き飛ばすみたいに詩乃の電話がけたたましく鳴り響いた。




