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「今日の訪問診察はこの家だよ」
鹿奈と会った翌日。僕は詩乃と一緒に大きな屋敷の前に立っていた。
「ここですか?」
僕は思わず聞き返した。その屋敷はあまり外に出ない僕でも知ってる程大きな豪邸だった。
「うん」
詩乃は頷くと、屋敷の門に取り付けられたチャイムを鳴らした。
『どちら様ですか?』
女性の声がインターホンから返ってきた。
「詩乃です。診察に参りました」
『お待ちしておりました。少々お待ち下さい』
少ししてメイド服の若い女性が家から出てきた。ウルフカットの僕と同じで少し無愛想な顔立ちだ。
「お待ちしておりました詩乃様。そちらの方は?」
「こちらは億利病ちゃん。私の助手です」
「億利です。よろしくお願いします」
「……そうですか、彼女はどのくらい知っているんですか?」
懐疑的な目で僕を見てきた。
「異能については知ってますよ。大丈夫です。億利さんの事は私が保証しますから」
「……そうですか。では、どうぞ」
不審そうな目は変わらないが、入れてくれるらしい。
屋敷の中は予想より質素だった。煌びやかな装飾や華美な調度品はなく、非常に落ち着いた雰囲気で庶民の僕もそこまで緊張せずにいられた。
「永栄様、詩乃さんがいらっしゃいました」
「来たか詩乃」
客間で待っていたのは黒いドレスに身を包んだ床に着きそうな程長い白髪を持つ少女だった。
「久しぶりです。不崎さん」
「久方ぶりだね。メイ、2人にお茶を」
少女は見た目に似合わぬ落ち着きを纏っていた。ここの家主の娘さんだろうか? お金持ちの娘というのは教養がなってるらしい。
「んで、そこの少女はどちら様だい?」
うすら笑みを浮かべて聞く。
少女はどっちだと言いそうになるが僕は口を閉ざす。
「助手の億利病さんです」
「そうかい。私は不崎永栄さ。よろしく頼むよ」
「よ、よろしくお願いします」
恐らく小学生中学年にも達してない程の年齢でこの貫禄……。
「随分と貫禄が有りますね。不崎さんもやっぱり異能が有るんですか?」
「勿論。不崎さんはね不老不死なんだ」
「不老不死!?」
なるほど……通りでこんなに貫禄がある訳だ。
「その通り。と言いたい所だけど、不死はどうだろうね? 馬車に轢かれたり、刀で斬られたりしたけど無事だったし結構丈夫なのは間違いないけど、死なないかは死んだことないから分からないね」
そう言って彼女は笑った。刀や馬車って、一体いつから生きているのだろう。
「さて、雑談も良いけどそろそろ本題に入ろうか」
詩乃は鞄から白い袋を取り出し、不崎に渡した。
「来月分の薬です。1日2錠。昼と夜寝る前に飲んで下さいね」
「ありがとう。メイいつもの所に閉まっといて」
メイは薬を部屋の隅に置かれた箪笥に閉まった。
「最近はどうですか?」
「薬を貰ってからは特に問題は無いよ」
「過呼吸とか、パニックになったりもしてないですか?」
「メイと薬のお陰でね。他にはあるかい?」
「……他に特筆したなにかは起きてませんか?」
「いや特に……あっ」
「なにか有りましたか?」
「いや、私の事じゃないんだけどね、最近この近くで不審死が起きてるらしくてね」
「不審死って、もしかして人が爆発するみたいな?」
「え、知ってるのかい? 億利さん」
詩乃が驚いた顔で僕の方を振り返った。
「はい、偶々ですが」
「それなら話は早いね。内容的にほぼ確定で異能関係さね。犯人はまだ捕まってないそうだから、2人も気を付けなさいよ。医者だって客は選んでいいんだ」
「私は選んで治療してる方ですよ」
「そうかい、なら私は何も言わないよ。自身の生き様に恥じないようにね。先生の命は有限なんだから」
不崎は寂しそうに遠くを見つめて溢した。




