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第八話

 最初はぽつぽつと小雨だったのだが雫が段々と重く肥大化していきそして大雨となっていった。なのでコンビニに駆け込むお昼休みのサラリーマンで結構中は満員だった。

「カルビ弁当あるかな………」

その不安は見事的中し残っていたのは三食そぼろ弁当とネタがとても微妙、少なくともしゃけや昆布ほどではない二軍のおにぎりであった。気分はまさに曇天模様だ。こんなの食べるぐらいならとカップ麺コーナーへ行く。ラーメン系、焼きそば系、ワンタンメン系とその他色々あるがねらい目はチ○ンラーメンだ。


あのお菓子のような外見から繰り出される卵と混ぜると特大化学反応を起こす秘密兵器と言ったらこれだろう。今では卵と混ぜるだけではなく、ゆであがりのタイミングをずらしたりする方法もあるようだな。

まったく愛されている。しかしこれだけだとやはり物足りないためパンコーナーへも向かう。


総裁パンといえばやはりこれ、「焼きそばパン」である。王道かつ一番うまい、というか誰が作っても外れ無し。カレーパンは意外とはずれがあるんだよな、これが。まぁでもこの二点で足りるだろう。

俺はレジ前のガムコーナーを見に行く振りをしてレジにいる店員たちを盗み見た。

「なんと!」と思わず声に出てしまったくらいには可愛い。それにまだ少女じゃないか?うちの嫁さんにも

少し似ているかもしれない。手前のレジに立っていたので余計鮮烈に目に映る。

よく見るとレジ打ちされてる客もドギマギしていないか?

「あの、なんでしょう?」

とその例の店員におずおずと聞かれたので

「いや何でもないです、あなたが嫁さんかと勘違いして」

と咄嗟に帰した。声も透き通った感じでよかった。

「そ、そうですか」

俺はせこせこと退散する。レジ打ちの列に戻るときに浴びる客たちの目線が痛い。


当然というのもなんだがもっと近くで見てみたい気もするのでその例の店員に列に並ぶ。

なんだなんだ、前の列の客は。こんな昼間からいい年をしてプリ○ュアのお菓子を買って並んでいるとは。失礼ながら子持ちとは思えん、ただのオタクのようだ。しかもなにかブツブツとつぶやいているし、

タオルを肩からぶら下げている。あの子のファンだろうか。何かあったら守らなければな、俺もその子を見に来たわけだから人の事はあまり言えないが。するとそのオタク(と呼ばせてもらう)は


「今日も可愛いなぁ………美香ちゃんは!デュフフフゥ!」

とつぶやいていた。しかもチラチラと列の前方を見ながら。かなり気持ち悪い。

段々列が消化されていく。もう片方の列はまだまだいるようであの子は見た目の幼さよりも随分手際がいいようだ。ついにオタクがレジに向かった瞬間、


「キャッ!話してください!」

「はーすべすべだな~美香ちゃん!」

とやおら握手をし始めやがった!

「た、助けて~!」

とそのオタクが言うには美香ちゃんが言うも隣の列の店員はレジに熱中している。いや、助けてやれよ。

その間もオタクはむぎゅむぎゅと脂汗が浮いた手を美香ちゃんの白い手に押し付けていた。

俺はなるべく宝くじの当選者として日陰者として過ごしていきたいのだが見るに見かねん。流石に堪忍袋の緒が切れたね。やれやれ。


「おい、いい加減にしろよ!その子から手を放せ!」

「な、なんですかお主!」

「成敗!」

「ぎゃーす!」

俺はオタクに通信教育で鍛えたチョップをお見舞いしてやった。

「い、痛いですぅ~」

「はっ!す、すみません!」

間違って美香ちゃんにも当ててし合ったようだ。これだから通信教育は………

「お、覚えてやがれ~!」

とオタクは走って去っていった。

「あ、あのお客様!まだ会計が!」

「ああ、いいですよ。僕が払います。どうせプリ○ュアのお菓子一つ。安い安い。」

「は、はあ、そうですか。あ、あのさっきはどうもありがとうございます。」

「いいんですよ、あと当ててしまったの謝ります」

「いえいえ、なんだか通信教育で習ったようなチョップであまり痛くもなかったですから。

私もこれでも鍛えてるですよ!」

といって彼女は腕をまくった。一つ一つしぐさが見守りたくなるようなほこらしさだ。こりゃさっきみたいな面倒な客がつくはずだ、マニアックすぎる。


「あ、あの後で時間とかありますか!」

「あ、はい、有閑階級なので空いてますが………」

「ゆ、ゆうか………?なんですかそれ?」

「あ、あぁ何でもないんですよ。僕もさっきテニスのアニメで知ったばかりなのであまりよく知らなくて………」

「は、はぁ。まぁそれより私もうすぐでシフト終わるのでどこかカフェで食べたりしませんか?お礼におごります」

なんと誘われてしまった。まったくこれが既婚者男性の魅力ってやつか。

「えぇ、いいですよ」

「やった!」

と飛び跳ねる。なんの属性だろうか、萌え属性か。狙ってやってるのかと疑ってしまうくらいだ。

「じゃあこの品物もお昼ご飯のやつですよね?」

「えぇまぁそうですが。」

「でしたらこちらで回収しますね。表で待っていてください。すぐ行きますから。」

といって彼女は焼きそばパンとチキンラー○ンを回収し元の棚に戻していった。俺の後ろにはもう客はいなく、向こうのレジもはけてきたようだ。もうすぐで13時だ。

サラリーマンのお昼休みも終わる時間帯だろう。俺は閑散としたコンビニを出て表で美香ちゃんを待つことにした。

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