第六話
Xデーは三日後、つまり俺の臨時収入が得たときと俺が決めた。相手は快く了承してくれた。なんせ江の島だからな。行ったことはないが観光客向けでなんか全体的に高そうだ。ちなみにアニメを嗜む俺としてはいくのがとても楽しみだ。
おまけに初デートとなると心がリンボーダンスをかましてしまうようだ。なのでクラスメイトからのおねだりも今や軽く受け流せるようになり心の余裕が生まれついでに念のためと言う場合もあるので自慰行為も三日間禁止にした。一日目から期待を膨らませるのが童貞しぐさと言うかまったくドラッグストアでゴムも買ってしまった。
そんなこんなをしているうちに初デートは明日を控えることとなる。俺のデートコスチュームはなるべく清潔感を意識したものとなる。純情なのをアピールというか爽やかさがある白Tシャツに青のジーパン。
もちろん洗濯済みだ。あと香水も振りかけてある。神もきちんとセットしたしこれはもう初デートにしては及第点をあげてもいいのではないだろうか、と自己評価しているとおまたせよろしく涼子がやってきた。
まだ待ち合わせ時間の三十分前だというのによく来るね。まぁ俺も人のことは言えないが。
「よおー!ここだー!」
向こう岸にいた涼子は俺を見るやいなやダッシュで近づいてくる。ランニングウーマンだったのか。まさかデートもそれでいくのではあるまいな。
実にその通りであった。すれ違い様に手を掴まれ「走って」ときた。「へいへい」渋々了承する。
「何かあったのか?」当然疑問を呈する。
「何かあったかじゃないわよ、あんた親父に目を付けられてるのよ」
涼子の親父さんと言うとヤーさんか。あーなるほど、あの黒服はヤクザで涼子の親父の部下だったのか。
合点がいった。
「なに、一人納得した顔してんのよ!今も外出の用事を聞かれてあんたの名前を言ったら親父がいきなり豹変して意味わかんないわよ。きっと今も追われてるわ。」
なるほどね。しかしヤクザの娘と付き合うというのも大変だ。というか下手なことをしたら俺殺されるんじゃないか。俺は濁りに濁った東京湾の事を思い浮かべ前日のけしからん昂ぶりは一気に冷めてしまった。
「とりあえず服屋さんにでも行くか、ちなみにマスクとサングラスは持ってるから変装としては服と合わせたらいい線いくんじゃないか?」
「なるほど、変装ね。いいかもしれないわ。ずっと追われ続けて息もつけないんじゃ癪だしね。」
俺たちは途中にあるユニクロにいき早速着用することにした。服でも違ったら大分印象が変わるものだ。
さえない俺はともかく時間がないのにテキトーに選んだ服でも十分にモデルとして活躍できるくらいには涼子は着こなしていた。まったく大した奴だ。
「さ、いきましょ」
「待て待て、俺はともかくお前は目立ちすぎる。髪型も変えないと気付かれる要素は十分にあるぞ」
「あ、そっか。ところであんた髪型は何が好きなの?彼氏様の選んだ髪型にするわ」
「ポニーテール」
即答だった。
「あっそう、じゃあそれにするわ」
シュルシュルとどこが摩擦し出るんだという音を発して器用に鏡もみずに髪型変えをこなし、出来上がったものは感無量だった。俺はいつしからき☆すたで聞いたポニーテール賞とやらに推薦してもいいんじゃないかと思っていた。つまりそれぐらい素晴らしい。特にくびれがセクシーである。
「どうかしら?」
ガシっと両手を握る。
「キャッ、な、なによ」
俺は鼻息を荒らしながら
「すんごい似合ってるぞ」
と率直な感想を述べた。涼子は少しうつむき加減で赤面しながら
「そう」
と言った。うれしよさげだったのはとてもかわいかった。
しかしこんなスッキリとした髪も涼子の造形のいい顔と組み合わせるとより威力を存分に発揮できること間違いなしなのに追手と言う存在のせいでつけることになったマスクとメガネにより妨害され泣いていることだろう。まぁしかしこれでゆったりと江の島旅行を楽しむことができる。
俺たちは今駅の構内で黒服たちと数人すれ違いながらも無事気づかれずに済み、電車で隣同士座っていた。なんだかわくわくしているオーラが電車の揺れとともに俺に伝わってくるようだ。
「ねぇ、江の島って有名だけど何がある所なのかしら⁉あとあまりこういう短期間での小旅行はあまりしたことがないからとても新鮮だわ!」
「そうかい、ウキウキしていて何よりだ。」
「それにしてもあんたは随分と落ち着いているわね。もしかして結構デートとか場慣れしてるの?」
「いや?初彼女との初デートで浮かれて夜が眠れなかっただけさ」
「あんた意外と子供っぽいとこあるのね。」
「そうだな」
「所でさ、もしかして今日までずっと親父の部下の黒服に追われてたりしてた?」
となにやら心配そうに言ってくる。ここでその一々変装したりして大変だったなどと言うエピソードをしたら傷ついてしまうだろうな、予想するに涼子はかなり傷つきやすい。というか人の事を思いやりすぎるというのだろうか、そんな感じがする。というわけで比較的気楽そうにいう事に決めた。
「いや?そんな追われてたなんて感じはしなかったぞ、今まで」
「嘘よ、親父のあそこまで血走った目見たことなかったもの。本当にごめんなさい。」
涼子は感傷的になってるのだろうか。弱気な声で俺の腕にすり寄ってきた。腕のブラの硬さを感じつつしばらく思いやりの深い彼女をなでていた。しかしまだ彼女の話は終わっていなかった。
「親父のせいで初デートはこんな変な格好で日の目を浴びれない犯罪者みたいにしなくちゃいけないなんて最悪だわ。学校で避けられるのも親父のせい。私は何もしていないのに避けられる。もうこのままあんたと一緒にどこかに出ていきたい」
涼子は話している途中から涙ぐんでいた。きっと俺に接した理由も共感できる相手が欲しかったに違いない。自分とは関係ない背後の関係性による他人からの排他的な扱い。俺の場合はいざと言うときには捨てられるかもしれないが涼子の場合親子の縁は切っても切り離せないのだ、学生と言う立場では親に甘えて生きるしかないから。とてもかわいそうである。何とか彼女しがらみから解き放つ方法はないだろうか。
「あっ!」
突然閃いてしまう案に俺は過敏に反応してしまった。
「ど、どうしたのよ………」
涼子も驚いている。しかし「それ」を求めたのは涼子なのだ。きっと了承してくれるはずだ。なにより俺もやってみたいし楽しそうだ。
「涼子、さっきいったよな。「このままあんたと一緒に出てきたい」ってな」
「う、うん」
「知っての通り俺は八億円の宝くじが当たったラッキーものだ、つまり………意味が分かるか?」
涼子はハッとする。俺を見上げながら
「もしかしてやってくれるの!?一緒に駆け落ちしてくれるの!?」
駆け落ちとは大胆だな。まぁでも考えてみればそういうことだよな。いやしかし俺はちょっぴり家出して学校を少しばかり休み江の島と言わずもっと遠い所で羽を伸ばそうかななんて思っていたのだが。
「嬉しい!流石初彼氏!私が惚れただけあるわ!」
と興奮気味である。ここで否定な言葉を言っちゃったら一気に冷めちゃうよな。まぁいいか、人生は冒険や!という某少年ユーチューバーの事を思い出し俺は人生で最初で最後の駆け落ちを初デートで決め込むことにした。
注意!読み飛ばしても構いません!
ふふふ、書いてる途中でとらドラを思い出したのは言うまでもなく………あの二人があのまま駆け落ちになったらどうなるんだろうとかずっと思っていたので少々物語は変わりますが駆け落ち編です。
あと基本的に私はあらすじ通りに書くことができない間抜けです。期待しないでください。
でも少し言わせてください。なんで本文各前からあらすじを決めなければならないのかと。
村上春樹さんだって途中で物語は書いてる途中で路線が変わったりするなど「遠い太鼓」かなんかでおっしゃられているではないですか。なのに素人の私が最初から決められたままに書くことなんてできないんですよ。あと挿絵なんかもっと無理でした、後から編集していれます。もちろん筋書きは大体決まってるんで前作や全然作のようなオチにはならないはずですが本当にですねなろうのあらすじを先にかけというシステムは厳しすぎます。以上、愚痴でした。