第五話
音楽室で二人きり、女子と昼飯を食うというのも結構オツなものである。うーん、焼きそばパンが胃にしみる!でもなんだか本当にうまいなぁ。もしかしてだが
「美少女高校生に手渡されたスパイスがきいてるのかなぁ、いつもよりうまく感じる」
涼子は赤面しながら
「バカじゃないの!お世辞でもうれしくないんだから!」
決してお世辞ではないんだがな。なかなかの美形だ。あれ、こういう系の話題に弱いのか。ふーん。
俺はニヤニヤしていると、
「あんた、あんまり精神に来てないのね。いじめられといて大したもんだわ」
おっと、そんな風に見られたか。それはだな、
「断じて違う。これでも結構精神に来ているぞ。内心結構話を聞いてもらいたいもんだった」
俺は断言した。すると涼子は満足そうに
「ふーん、そう。それはなにより。」
と微笑んだ。なかなかに笑い顔も
「可愛いなぁ」
「えっ!?」
「あ、いや、何でもない」
「そ、そう………」
お互い顔を背ける。ついつい口に出てしまった。でもいい感じの雰囲気だな。エロゲだとこれでもう共通ルートは脱出してるもんだ。
しばらく気まずい雰囲気が音楽室を包んだ。けれども俺はただ黙って二人でいてくれるってのも悪くないと思った。こういうのは気持ちなのだ。一緒にいてくれるという、な。
キーンコーンカーンコーン。
おっともう昼休み終了か。やれやれ短い休息だったな。でも大分気持ちは軽くなったな。礼を言うとしよう。
「あー、高島。」
「な、なに!?」
いや、そんな構えなくてもなんのしないつもりだけどな。
「いやー大分気持ちが軽くなったよ、ありがとうな」
「べ、別に私は何もしてないじゃない。結局話を聞いてあげることもできなかったし………」
「違うぞ、高島。こういうの”気持ち”が大事なんだ(ここでキメ顔)」
涼子はポカーンとした顔を浮かべ
「は、はあ。」
と気のない返事をした。ちょっとキザな奴とか思われたかな。まぁいいや。
「それじゃな。」
「あっ、まって!」
グイッ。裾を掴まれる。
「なんだ?もう五時間目始まるぞ」
涼子はもじもじしながら、ようやく切り出す。
「あの、同じ境遇同志これからも………つ、付き合いを始めてみない?」
なんと告られてしまった。やれやれ、いじめの報酬が彼女とはお安いものだ。当然俺は
「わかった、じゃあ今度のデート場所は江の島な。じゃあな、涼子。」
「あっ」
といった涼子を置き去りにして音楽室を出た。ひたすら走った。それは勿論五時間目に遅れるとまずいという意識からもあるのだが一番は自分のしたことの恥ずかしさをごまかすためが主であった。
どうしてこんなにも俺はキザにふるまってしまったのだろう。まぁでもいいか、彼女が手に入ったんだし。しかし江の島かぁ………どうしようかね…そこまで思いついた時に気づいたのが時間を言っていなかったことだ。しかし今更引き返すのもくそダサい。やれやれ、のぼせてるんだな俺。
結局教室に帰った俺はクラスメイトに高島涼子のlineを求めることにした。そこそこ仲のいい飯田に訳を話しもらおうとするも、
「お前みたいな社会不適合者に彼女、、か。お前みたいなやつにできて、なぜ俺にはできないんだろうな。ひとこと言わせろ、死ね。しかしあれだな、武田。宝くじも一等賞当たって彼女もできるとはお前数日後にポックリ逝きそうだな。はっはっは、まぁその時には葬式で笑ってやるよ。まぁでも悪いことは起きそうだな、気を付けろよ。」
「へいへい、でラインの件は?」
「あーその件なのだが請求金額は千円でいい。」
「金払うのかよ」
「当たり前だろ、不労所得まぐれ野郎」
俺は値切って値切って五百円にまで引き下げてやった。まぁ本来交換先に金払うというのもおかしな話だが。まぁ、いいか。これも彼女をもらうための条件だとしたら安いものだ。
そんなことを考えていた俺はその後飯田の発言が当たるとは露とも思わなかった。