第二十話
まるで忍者のように俺たちは家の屋根から屋根へと飛び移り移動していた。
普通に犯罪。江戸時代じゃないんだぞ。それにだな………
「俺をお姫様抱っこするな!全く、子ども扱いしやがって!!」
その腕力、と脚力はまさにゴリラ級!涼子様は成人男性を背負って飛んで回っていても汗一つかいていない。そして俺の声に気づき爽やかな、また皮肉ともとれるような顔で
「ふふ、あんたなんてお坊ちゃんくらいの扱いが一番いいのよ。
あとでおっぱいあげまちゅからね~」
といっておっぱいを押し付けてくる。ぽよん、と振れる肌からはボディソープのいい匂いあふれ出していた。それにふかふかで、あったかく確かに母性はあったと思う。だが、俺は子供じゃないんだ。
「いらん!そんなモノ押し付けるな全く………」
ふむ、この感触。またおっぱいが大きくなったな?
俺とのセックスで刺激され育んでいくバスト、もうそれは子供と同じようなものである。
したがって俺は涼子の誘惑に駆られておっぱいを揉んでいるのではない。
子供の成長を観察しているのだ。
どれどれ、おぉ、乳輪も黒ずんできて乳首はとんがってきている。
ちょっとスパルタ教育をしすぎたようだ。反省しよう。
「ちょっと!いつまでいじくってんのよ!こんな空の下で露出させないでよね!」
そう言って涼子は俺の首にチョップをかました。そして涼子の手によって俺たちの子供はお母さんの服の中に戻されていった。あぁ、マイチルドレン………!!
「全く、おっぱい星人なんだから。そういうのはホテルでやりなさい。
誘った私もここまで食いついてくるとは思わなかったわよ。はぁ………もうたまってるの?」
と涼子はため息をつきながら俺を見下ろしてくる。
「当たり前だろう。こんな赤ちゃんプレイを屋外でやるなんてシチュエーション、おまえ、じゃなかった涼子よ。誘っているようなものだぞ」
俺は不敵にかつ胸を張って言い返す。
「そうなの?」
涼子は猜疑心を抱いているような目で俺を見てくる。
やれやれ、ちょっとばかし「教育」ができてなかったようだ。
よし、仕込んでやろう。
俺は問う。
「所で涼子。この道のりはどこへ向かっているんだ?」
気色はいつの間にか町から山へと変わっていた。
涼子はその山にある木のてっぺんから木のてっぺんへと飛び移っている。
一歩間違えれば二人ともども死ぬような高さ、おそらく二百メートルくらい地上からの高さはあるだろう
、それを涼子はまるで当然のようにすいすいと進んでいく。
全く、化け物じみている。
だがこういうことをつい言ってしまった日には二日ばかし寝込むような死なない程度に生殺しをされたり
あるいは一か月くらいセックスをしてくれなかったりするので黙って涼子の返答を待っていた。
涼子はぽかんとして当然でしょうといわんばかりの口調で
「え、家だけど」
と答えた。
いや、サラリと言っていますけど俺たちの家は東京だしお父さんの住んでいるここは大阪なんですがそれは。
………まぁ、そんなことは今はどうでもいいのだ。
俺の性処理問題の方が重大である。
「このまま、ラブホ行こう。」
俺は毅然とした態度で言う。その様子はさながら紳士である。
しかしそれはお姫様抱っこをされていなければの話だが。
「またぁ!?昨日したんだから今日はもういいでしょう!?」
涼子は困惑を入り混じった表情で強く言い返す。
また否定の感情も交じっていたかもしれない。
だが俺は負けない。俺はペニスが生きがいであり、またペニスがなければこの人生、灰色そのものなのだ。だからめげずに言い返す。
「いや、だめだ!俺の玉袋はもう破裂寸前なんだよ!
涼子がしてくれないなら家に帰ってすぐオウム帰りしてお父さんに性処理をしてもらうぞ!」
すると涼子のよどみない足取りは急に止まり、とても細い木のてっぺんに位置着いた。
運ばれているうちは気づかなかったが山には結構強い風が吹いている。
そして木が揺れる。
涼子も揺れる、また当然俺も揺れる。
結構怖い。
カラスが目の前でカーカーとなくまで涼子は何も話さなかった。
え、なにこの間は。
怖いし、あと寒いし早く動いてほしいのだが。
やがて涼子は震えた声で言いだす。
「もしかして………お父さんに掘られたの!?
それでお父さんのペニスに魅了されてそう言いだしたの!?いや、そうに違いない!
あのクソおやじ!殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!!!!」
その目は震え、また情熱に満ちていた。どこか泣きそうな感じもあるのは
背景の秋にもふさわしい、愁哀の感じが漂っていて美しかった。
俺はそう見惚れていると、いつしか今まで来た道と逆方向に涼子は駆け出していた。それも凄いスピードで。
血相変えて駆け出す様子に俺は一瞬怯え何も言えなかったが、少しして冷静になり
お父さんのために弁解をした。
「おい!涼子!違うから!違うって!お父さんは何も俺に対して襲ったりもしてないし、
別に俺はそっちの趣味はないんだ!!!」
その言葉に涼子はピクリ、と反応し緩やかに速度を落としていき、やがてとある木の頂上にとまる。
顔にはまだ憎しみと悲しみが入り混じった表情が残っており、その目はうるんで、目の下には泣き後があった。
「ほんとに?」
とか細い声で問いかけてくる。
俺は涼子をなるべく励ますように答えた。
「ほんとだって!俺は涼子一筋だから!女だって男だってほかの人に手を出すはずないだろう!?」
「出したじゃん………」
と涼子は小声で言うが俺は無視して続ける。
「お父さんを引き合いに出したのは言葉の綾だよ!決してそんなことはないし
むしろ涼子以外となんかセックスなんてやりえないよ!」
「………ならいいんだけどさ。でももうそんな気持ちの悪いことは引き合いに出さないでよね!」
涼子は渋々といった声色でそう言って、また帰る道へとバックしていった。
そろそろ抱っこされるのも疲れてきたな、と思っていたところに涼子は突然
「所で、ラブホに行くかどうかの話だけど」
と切り出してきた。
「ふむ、いやラブホを店の名前で選んだことなんてないしどこでもいいよ。
涼子がこだわってるんならうん、そこでいいし」
「そうじゃないわよ!バカ!」
ペシン!と額をぶたれる。痛くはなかったけども、俺、なんか変なこと言ったか?
涼子はそんなぽかんとしている俺に呆れの目を向けつつ話し出す。
「そうじゃなくて!ラブホに行くかどうかの話よ!」
「えっ!?まだ行くことは決定されてなかったのか!?」
俺は食い気味に驚きの声をあげる。
「当たり前よ。あんたは入れるだけだからいいかもしれないけどね。
私はお股が痛くて痛くてしょうがないのよ。」
そういいながら俺は片手で支えられ、涼子は片方の手でお股をさするジェスチャーをする。
いや、見えないししなくていいだろう………ていうか怖いんですが、涼子さん。
そんな怯えの目を向けると涼子はすぐさま手を戻す。
俺は落ち着いたので
「そうか………まぁ涼子がそういうならしょうがないな」
と言った。だが涼子はふふん、と自慢げな顔で
「そう、普通の女ならそういうでしょうけどね。
もう竜馬と付き合い通してきてはや五年。いい加減竜馬の性処理のペースにもついていけるってわけよ。
つまり、してやってもいいってこと」
「ほんとか!?」
俺は興奮して思わず身を乗りだしてしまった。それで涼子の体勢が崩れ
うっかり木から落ちそうになる。
だが涼子は持ち前の体幹で持ち直す。
涼子はそんな俺に少し落ち着けと手を前に出し
「ただし、条件があるわ」
と言った。俺はペニスのためなら死んでもいいということは先ほどにも言ったとおりであるので
飼い主の命令を待つ忠犬のように
「なんでもいってくだせえ!」
と答えた。
すると涼子はなんだかしんみりとした表情になる。そして少し怯えの混じった声で言う。
「もう、私の知らないところに急に言ったりしないで」
こんな迫力のない涼子は初めてだった。
だから俺は空返事ではなく真剣に答える。
「あぁ、わかった」
「それに、もう住所とか電話番号は一旦調べてよね」
ちょっぴり涙目で言っているのを俺は見逃さなかった。
そうか、涼子は怖かったんだな。
こんな俺でも心配してくれるなんて、なんて優しい妻だろう。
俺は抱きしめる力を強くしながら言った。
「あぁ、わかったよ。もう危険な行動はとらない」
そういうと涼子ははにかんで
「ならよし!それでいいのよ、竜馬。あんたは私がいなきゃなんもできないんだから!」
フフン、と最後に付け加えてすっかり上機嫌な涼子はそう言った。
そしてつづけさまに
「じゃあ、今日は特別に駅弁でもしてあげるわ!
ここから二十四時間耐久フルコースセックスよ!」
と沈みかけの夕日に叫んだ。
もういつしか山は抜けていて、涼子の着地点は木から屋根へと移っていた。
向こうに東京タワーが見える。
そしてその下にある街の蛍光灯の看板を持つ建物を見て
俺は覚悟する。
なにせ本気になった時の涼子のセックスは凄いからな!




