第十六話
心の亀甲縛り、それは正座をさせられることだろう。
お坊さんには悪いが進んでしたくなる座り方ではない。
まぁ育ちの良い悪いも多少は関係することだろうが。
俺はの和解の象徴、ハグをした後てっきりそれで手打ちかと思い込んでいたが涼子はハグをして離れた後
普通にハイライトのない目で
「とりあえず正座しなさい」
と言われたのでとりあえずした。
まだ許したりなかったのかよ。俺はそんな不満げな表情が出ていたのだろう。
涼子はすかさずそれを咎めることから始まり、説教を始めた。
俺はさっきとほとんど変わり映えのないその説教を聞き流しをしていたが
流石に飽きがきた。それに足もしびれてきた。
つまり油断してしまったのだ。俺はあくびをしてしまった。
当然見逃してくれるはずもない。
「ねぇ!?さっきは木の上からしたもんだから聞こえてないと思って
こうやって同じ目線から話してあげてるのに、真剣に聞いてよ!!!」
あの声量でどこを聞き洩らしそうか?
俺はそのもう一度説教を始めた理由の真相に驚きを禁じ得ず、
まじまじと涼子の顔を見入ってしまった。
うむ、目の焦点はあっている。
といことはおつむの問題だったか、失敬。
「なによ、私の顔に何かついてるの?」
「………頭には何か悪いものがとりついているだろうな、そりゃ。」
「なんですって!?今のセリフ、はっきり聞き届けたわよ!
なめんな!!」
涼子は手を振り上げてくるも、俺は巧みな上半身の動きでそれを回避した。
しかし、詰めが甘かった。
バチン!!
「痛ってぇ!?」
「ハハハン?油断したわね?」
一撃目はブラフで二撃目が本丸だったのである。
俺は後ろからの来る手刀をまともに頭に喰らってしまった。
脳みそがぐわんぐわんと揺れる、ような感じがする。
気分が悪い。
そんななか涼子は高笑いをしていたので俺は流石にカチンときた。
「おい!俺は平和主義だぞ!暴力反対!
これを家訓にしようじゃないか!
じゃないと離婚だぞ!
さっきのハグは何だったんだ!?和解の証だったんじゃないのか?」
「離婚って………弱っちいわね、あんた。
ふん、仕事もしないもやしだからそんなみじめったらしいセリフがはけるのよ。
早く職にありつきなさい。」
むむ、なんだか耳が痛いセリフだが、後半の方は答えてもらっていない。
俺はそれを言及する。
「職のことはわかったよ、明日にでも知り合いに聞いてみるよ。
それより後半の事を答えてもらってないぞ。」
「後半………?あぁ、ハグの事ね。
それは木の上と地面での対峙のひとまずの和解ね。
それはそれ、これはこれよ。ケースバイケース、オーケー?」
左手の人さじ指を親指で丸を作って
にこやかにウインクしてくる涼子。うーん、普段からそんな感じだったらいいんだがな。
俺も思わずほおが緩む。そしてにこやかに言う。
「あぁ、全然オーケーじゃないぞ。
それにあの声量で聞こえてないと思うお前の頭も全くと言っていいほどオーケーじゃないな。」
ぶわっ、っと汗が一斉に噴き出る。
「あら、そうなの。聞こえてたのならそういえばいいじゃない。」
にこっ、とほほ笑む涼子。違う、これに対して恐怖したわけじゃない。
その笑いの前の鬼も逃げ出すような表情、俺はそれを見逃さなかった。
確かに、俺は涼子の頭の事を集中的にバカにしすぎていたかもしれない。
反省、反省。
さて、どう逃げようか。
長年付き合ってきただけあってわかるのだが猶予はあと五秒くらいだろう、その後にはもう火山が大噴火。
それに涼子は俺を押さえつけるリモコンを持っている。
打つ手、なし。
ふふふ、イタチの最後っ屁だ。
俺はとりあえず目の前のおっぱいを揉んでおいた。
瞬間、辺りがブラックアウトした。
ここから先の記憶はなかった。




