73.偽装強盗
「お目出度い話じゃないか、兄貴。」
「ところが、そうじゃないんだよ、健二。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
筒井[新里]警視・・・警視庁テロ対策室勤務。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午前9時。会議室兼所長室。
マルチディスプレイには、中津警部が映っている。
「店員が見付けて逃走した被疑者を取り押さえて逮捕した事件。」
「お目出度い話じゃないか、兄貴。」
「ところが、そうじゃないんだよ、健二。事件をかいつまんで言うと、こうだ。東京・渋谷区道玄坂の質店でエルメスのハンドバッグ3点を盗んで逃げ、50メートル逃走したところで、追いかけてきた20代の女性店員に催涙スプレーを噴射したとして33歳の女が逮捕された。被疑者の女、斉藤友理奈は、『バッグが欲しくなって数点とって逃げました。店員さんが追いかけてきたので、催涙スプレーをかけました』と容疑を認めている。ところが、斉藤は、三社祭で、死んだ筈の石谷元外務大臣に似た男を見かけた、と警視庁に告発していた女なんだ。夏目リサーチの調査で、石谷が生きていることが判明した。斉藤は、公安がマークしていた。しかも、Aparco辺りで、那珂国人数人に声をかけられそうになった。」
「で、万引き劇場の始まり始まり・・・か。公安も人相悪いのがいるからな。警察が一番の隠れ場所か。」
「うん。逮捕の後で供述がひっくり返ったことでマスコミには、万引きがあったこと以外は報道させていない。」
「お義兄さん、まだ何かありそうね。その女は『保護』されたけど、未だ誰かが危ない、とか。」
公子の言葉に、「流石は、公子調査員。健二はいい嫁貰ったな。」と警部は茶化した。
「誰が狙われている?斉藤の身内ですか、ひょっとしたら。」と高崎が言うと、「ご明察だ、いい副所長を雇っているな、健二。」と、警部はまたしても茶化した。
「お世辞、はいいよ。その女はまだまだ情報を持っている筈だから、みすみす見殺しみたいなことは出来ない、と。身内はどこ?」
「目黒だ。目黒区民センター図書館に近いアパートに住んでいる。目黒区民センター図書館の司書だ。懐かしい場所だろ?」
警部の言葉に「懐かしくて、涙が出るよ。」と、健二は言い、すぐに出掛ける準備をした。
午後5時。目黒区民センター図書館近くの駐車場。
「大貫いさ子さんですよね。少しお話を聞かせて頂きたいのですが。」と言ってきた那珂国語訛りの男がいた。
「お話は、警察で聞かせて頂きましょうか。」と、新里警視が言った。
男は逃げようとしたが、新里が取り押さえ、手錠をかけた。
駐車場に駐めてあった自動車が急発進しようとしたが、出来なかった。
パンクである。
仲間は、新里の部下達が駆けつけ、逮捕連行した。
大貫が驚いていると、「貴方のお兄さんと結婚した斉藤友理奈さん、通称ユン・ユリーさんが、那珂国の追っ手に捕まりそうになりました。友理奈さんやお兄さん、貴方を保護する為、公式には自殺したことになります。」と新里が説明した。
大貫がよろけたので、公子が支えた。
午後6時半。権野助坂の、うどん屋。
山村編集長の割引チケットで、興信所面々は、夕飯を、うどんにした。
「所長。割引チケット、何枚持ってるんですか?」と泊が尋ねるので、健二は平然と応えた。
「年間パス、があるんだ。」
「年間パス?」
皆は呆れた。
―完―
大貫が驚いていると、「貴方のお兄さんと結婚した斉藤友理奈さん、通称ユン・ユリーさんが、那珂国の追っ手に捕まりそうになりました。友理奈さんやお兄さん、貴方を保護する為、公式には自殺したことになります。」と新里が説明した。




