63.CIA
骨格から推定される、この人物は、コウ・ユーユー。10年前にアメリカから帰化して高橋与一になった。運転免許証Aの写真の人物と同一と判定。運転免許証Bの人物は、10年前に行方不明になり、警察に捜索願が出されていて、その後、区役所に失踪届が出された、阿川恭一と推定される。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
久保田嘉三・・・警視庁管理官。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※このエピソードは、「特命機関夏目リサーチ26」のエピソードから続きます。
午前9時。中津興信所。所長室兼会議室。
マルチディスプレイに、中津警部と久保田管理官が映っている。
「『骨格から推定される、この人物は、コウ・ユーユー。10年前にアメリカから帰化して高橋与一になった。運転免許証Aの写真の人物と同一と判定。運転免許証Bの人物は、10年前に行方不明になり、警察に捜索願が出されていて、その後、区役所に失踪届が出された、阿川恭一と推定される。尚、運転免許証Bの更新期限は過ぎている。』以上が、夏目リサーチのシステムが出した答だ。」
久保田管理官の言葉に、「『偽和知事件』の時のように、CIAが調査に来ている時に、始末された、ってことか、兄貴。」と中津健二は中津警部に問い返した。
「南部興信所の幸田所員が拾った、分厚い運転免許証から色んなことが分かったんですね。ドライバーはCIAの潜入調査員で、10年前に日本人になった。運転免許証Aは、日本で発行されたものなんですか?」と、高崎は久保田管理官に尋ねた。
「うむ。高橋与一の運転免許証データはない。恐らく、交通取締等の時は、阿川の方、つまり、運転免許証Bを出していたのだろう。よく見ると、非常に顔がよく似ている。そして、例えばマンションの賃貸契約などをする場合、運転免許証Aを使って、使い分けていた。」
「幸田さんが拾ったのは、偶然ですかね?まあ、赤信号を突っ走ってきたのなら、予め幸田さんのクルマのナンバーを知っていて、追い掛けたことになるけど。」と、泊が呟いた。
「残念ながら、偶然だな。御堂筋線でも交通事故があり、幸田所員達は迂回して北上していたんだ。ただ、ブレーキに細工されていたから、危険を感じた高橋は、窓から運転免許証を捨てたことになる。軽四が衝突して、警察官にすぐに渡らないように、だ。」
「アメリカ映画みたいね。」と公子が言い、根津も賛同した。
「高橋は、どこに潜入していたのかしら?ダークレインボウ?」
「違うだろうね。あきちゃん、何で中津興信所に依頼が来たと思う?当てたら、パンケーキ、あげようか?」
「敬一。子供みたいな扱いしたら、パワハラでセクハラよ。」と、トイレから出てきた本庄が言った。
ここのトイレは、トイレだけでなく、秘密の出入り口でもある。
「2枚の運転免許証は、何故かラミネートされていた。運転席から掘り出した時の衝撃で、剥がれやすくなった。パウチと違って剥がれやすいんだ。で、運転免許証Aの裏側にあったフィルムだが、特殊なものだった。フイルムの上に『悪戯書き』したんじゃない。コーティングされた『内側』に描かれた模様だった。ナイフガンナイフの模様ではあるが、ダークレインボウの直接関与ではない。何らかの特殊な秘密があるに違い無い。このフィルム加工だが、大阪堂島の会社でも扱っていたが、記憶にない、と言う。そこで、東京にあるフイルム加工の会社を3社、紹介して貰った。高橋の写真を持って、高橋が依頼に来たかどうかを確認して欲しい。回りくどかったが、それが依頼だ。」
マルチディスプレイに、3つの会社がマーキングしている地図が映った。
「1軒目は、宇都宮特殊フィルム東京支店、2軒目は、錦糸町フイルム総括有限会社、3軒目は、東京KKフィルム加工。切迫している訳ではないが、調べてくれ。高橋を犬死にさせない為にな。それと、警視庁から陸自、米軍を通じてCIAに照会したところ、突然消息を絶ったまま、だった。驚いたことに、阿川もCIAの捜査員で、報告によると、既に殉職しているそうだ。」
中津警部の言葉に、「双子?」と本庄は反応した。
久保田管理官は、頷いた。
「戸籍データを改めて調べて、分かったよ。『他人のそら似』でも『整形なりすまし』でも無かった。」
マルチディスプレイから2人が消えると、手分けして『6人』で調べることが決まった。
午後5時。東京KKフィルム加工。
高崎は、電話で中津警部に報告した。
「ここで、目撃されていました。たまたま定年退職した元社員が、高橋が『死んだ娘のイラストを残したい』と言ったので、加工を引き受けたそうです。その社員にも、電話で確認が取れました。残念ながら、原稿のイラストは、当人が持ち帰ったようで現存しません。」
「了解。高橋が、ダークレインボウと関わりのある組織に潜入していたことが確立しただけでも上出来だ。」
「警部。まだ、あります。」「何だ?高橋は、こういうものも、フイルムに貼れるのか?と端が欠けたマイクロSDを見せたので、『試し打ち』したそうです。そのフイルム貼ったミニSDも持ち帰ったようです。」
「保険か。」「え?そのSDカードこそが、狙われた理由だよ。ガサ入れのやり直しだな。ご苦労様。」
電話を切った高崎は、中津所長にも報告した。
「成程。直帰してくれ。あとで商品券渡すから、カミさん孝行してやれ。1000円の商品券だけどな。10万円じゃない。」
高崎は、首を捻りながら、電話を切った。
「どうしたんです、先輩。」と泊が尋ねると、「なんか、ご褒美くれるってさ。」と高崎は答えた。
―完―
「警部。まだ、あります。」「何だ?高橋は、こういうものも、フイルムに貼れるのか?と端が欠けたマイクロSDを見せたので、『試し打ち』したそうです。そのフイルム貼ったミニSDも持ち帰ったようです。」




