61.火事場泥棒
その2日前。岩手県で起こった大規模な山火事は、2月26日に発生した大規模な火事だったが、漸く『鎮圧』宣言がなされた。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
筒井[新里]あやめ・・・警視庁テロ対策室の警視。同期の筒井と結婚した。妊娠はしていない。筒井の子供は産みたくないから。
矢野警部・・・警視庁テロ対策室勤務。
渡辺道夫副総監・・・警視庁副総監。
芝田管理官・・・警視庁管理官。普段は、久保田管理官と交替で『交渉人』を勤めている。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※火事場泥棒とは、火事や災害などにより混乱したり避難などで人々がいなくなったりした現場での窃盗または窃盗を働く者(泥棒)。転じて、人々が混乱している中で利益を得ること、または利益を得る者。
3月11日。東日本大震災の日。
その2日前。岩手県で起こった大規模な山火事は、2月26日に発生した大規模な火事だったが、漸く『鎮圧』宣言がなされた。
午前9時。中津興信所。会議室。
「成田空港に向かってくれ。事情は後で話す。」
「何だよ、いきなり。」と中津は、兄の横暴に、マルチディスプレイの映像がすぐ切れた後に行った。
興信所メンバーは、すぐに興信所を出た。
午前9時15分。健二の自動車。
こういう場合に備えて、中津は先日6人乗りミニバンを購入した。高崎が運転している。
EITO秘密基地の方で改造され、助手席には、「警視庁またはEITOとのネットワーク」が繋がるタブレットが搭載されている。
GPSで察知したのか、タブレットは助手席のダッシュボード内から自動的に現れ、画面が表示された。
「警察の、成田空港で湯田を確保する作戦に協力して欲しい。湯田は、岩手県の火災の放火犯としてマークされた。警視庁からは、新里警視と矢野警部が向かった。君たちは、警備会社の制服に着替え、湯田が逃亡を図ろうとした場合に、阻止して欲しい。」
「兄貴。空港警察がいるじゃないか。税関を通る前に前に阻止出来るんじゃないのか?千葉県の管轄だし。」
「まだ、逮捕状が確保されていない。それに、『税関職員』にスパイがいる、とタレコミがあった。」
「信用出来るのか?」「元、ビターZだ・・・らしき人物の情報だ。」
「山並郁夫?」「湯田が被疑者らしい情報も提供してきたのは、奴だ。」
「了解。」画面から中津警部の姿が消えると、「警察としては、大っぴらに認める訳にはいかないか。『情報屋』なのに。公子。高峰さんとこの警備会社の制服、トランクにあったな。」「あるけど、警備会社の制服じゃなくて、警備会社の制服のコスプレでしょ。」
「向こうに着いたら、車内で着替えよう、交替で。」と、高崎が言った。
「そ、そうね。狭いから。」と、公子がフォローした。
午前11時。空港ロビー。
湯田が、スーツケースを持って、税関の方向に向かおうとすると、衣類をさっと乱した、観光客風の根津が悲鳴を上げた。
「キャー!!何するのよ!!痴漢!変態!!」
湯田は根津を一瞬見て、ゴクリと唾を飲んだが、自分に不利な状況を悟った。
「どうしました?」と警備会社の警備員風の高崎と泊がやってきた。
「この人、いきなりキスしてきて、スカートをめくり上げようとしたんです。」
湯田は、弁明をする機会を失った。
新里と矢野が来たからだ。
事情を聞いた、『女性警察官姿』の新里は、言った。
「緊急逮捕します。」矢野が、湯田に冷たいブレスレットをかけた。
午後1時。警視庁。『特別取り調べ室』。
チョイナドレス姿の新里が入って来る。いきなり、ドレスのスリットを引き裂き、湯田に言った。
「湯田浩二。今、逮捕状が取れたよ。空港のレイプ未遂は見逃してやる。でも、放火と殺人の容疑に切り替わったから、大人しく白状しなさい。それほど、『財務省』を追われたことを根に持っていたのか。『各大臣』を那珂国のハニトラに加えて、自身も『宅配風俗』を楽しんで来たのに。出世の道を塞いだのは、お前自身の『悪行』だろうが。正直に話さないと、取調中に、現役女性警察官を『レイプした』罪が加わる。弁護士に自白強要は言わせない。その前に、マスコミにリークするから。元エリート官僚、隠し持っていたナイフで現役女性警察官を強姦、って記事。週刊誌も新聞も書くだろうな。お前の身内は、表を歩けないな。」
そう言って、新里はスリップ姿になった。
いつの間にか、書記係の女性警察官は消えていた。
午後3時。警視庁。記者会見室。
副総監と芝田管理官が臨んでいる。
「2月26日に起こった岩手県の山火事は、元官僚湯田浩二の放火、そして、3月8日の強盗殺人は、同被疑者の犯行であることが『自白』により判明しました。同被疑者は、国会で行われていた騒ぎの書類の捏造書類の原本を元財務大臣の八戸塁氏の親類の家に放火して全焼させ、類焼が山火事に発展しました。焼失した書類には、財務省以外の大臣への『指示書』が含まれており、問題は重大です。」
副総監に次いで、芝田が発言した。
「同被疑者は、放火した後、『火事場泥棒』として入った徳井仙吉が、その書類の一部を持ち去るのを目撃、徳井氏の居宅を突き止め、強盗殺人を行いました。徳井氏は万一の場合に備えて、知人に撮影バックアップSDを預け、その知人が届け出たので、内容は重要書類と判断出来ました。」
副総監がまた、口を開いた。
「前代未聞の事件です。夕刻、総理からも記者会見があります。」
午後5時。中津興信所。会議室兼所長室。
「自然災害じゃなかったんだ?奈良県の山火事は、野焼きした人の不注意で延焼したって聞いてるけど。」
中津は、「自然災害にしては不自然だって噂だった。兄貴の話では、那珂国人も絡んでいた。八戸塁氏の親類の家というだけじゃない。わざわざ岩手県に行ったのは、あの山を買収したがっていた、那珂国人がいたからなんだ。だが、直接手を下せない。市橋総理が、土地売買法の大幅な改訂をして、土地転売を困難にしたからな。もうメガソーラーは設置出来ない。そもそも、太陽光発電で地元の電力を賄う為のモノは僅かに過ぎない。『ゼロではない』ってところが、那珂国人の商売のやり方だ。そして、天下りや賄賂は未だに存在する。被疑者は、元財務省職員だ。かつて財務セブンと言われた腕利きだ。アリバイは完璧だった。だが、闇バイトを通じてボロが出た。夏目リサーチのお陰で、アリバイの或る時間その場所にいたのは財務セブンじゃない。別人だって判明した。逮捕を受けて、『替え玉』が証言を翻した。そして、湯田と那珂国マフイアが繋がる証拠が、闇サイトに転がっていた、と告発・通報した奴がいる。」
「闇サイトハンター、山並郁夫か。」と、高崎が溜息をついた。
「火事場泥棒のSNSの投稿を消した者がいて、火事場泥棒は『消された』。だから、ボロが出た。山並は、消した奴を突き止めたんだろう。そして、『高飛び』の情報を得た。山の買収ではなく、空き地なら転売しやすいらしい。空き地は買い取られて、メガソーラーを設置する。那珂国製の粗悪品だ。今度は自治体首長を巻き込む。大金は簡単に手に出来る。」
「新里さんの尋問ってキツいんですか?」「ああ。新里警視用の取り調べ室がある位だからな。どうやって、落すかは、誰も・・・。」
「私は分かるわ。」「私は、前から思っていたわ。」
中津は言った。「何か寒気がするな。」
そして、机の中の風邪薬を飲み、デスクの上の水で流し込んだ。
「所長。私にも。」「僕にも。」
高崎と泊も風邪薬を飲んだ。
女性2人は、トイレに『消えた』。トイレからは、3人の女性の歓声が聞こえた。
―完―
最新作です。現実の火事を題材にしていますが、飽くまでもフィクションです。