56.あったこと無かったこと
「健二。牧場、覚えてる?」「兄貴の同級生の?」
「そう。孤独死したらしい。」「葬儀は?」「知らない。行く気しない。あの親族じゃ。」
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前9時。中津興信所。所長室兼会議室。
マルチディスプレイに中津警部が映っている。
「健二。牧場、覚えてる?」「兄貴の同級生の?」
「そう。孤独死したらしい。」「葬儀は?」「知らない。行く気しない。あの親族じゃ。」
「えと・・・あ、お義姉さんは?お義兄さん。」と、公子が気を利かせて言った。
「盗作事件の裁判。俺は、原告の方が盗作したと思うな。物部さん、知ってるだろ?健二。奥さんの栞さん、昔、美作あゆみってペンネームで童話書いてて、盗作で訴えられたけど、結局、原告の方が盗作していたって、証明されたんだ。多分、そんなパターンだよ。」
「何で分かるんだ?」「被告の方が先に世に出たから。簡単だろ?」
「やっかみで訴えて、売名行為した訳ですね。」と、高崎が『どや顔』をして言った。
「栞さんは、その件で疲れてしまって、筆を折った、詰まり、引退したらしい。みゆき出版社の山村さんは、勿体ないから、って『作品集』出したりしているけど、本人は『後書き』は書くけど、新作は書かない積もりらしい。で、子供が生まれたからね。もう、過去のことになってしまうね。」
「でも、子育てに『絵本』は要らないわね。自分の作品あれば・・・子育て・・・。」
「こらこら。その話題は夜でいいだろう?兄貴、仕事の話は?」
「ああ。歌手の大上雅也に脅迫状が届いているらしい。最近、週刊誌が女性問題、すっぱ抜いただろう?示談が成立しているのに、まだマスコミが煽っているもんだから、『自称元ファン』から、脅迫状が事務所に届いたらしい。警察で、指紋とか調べているが、今日、本人が記者会見するんだよ。勿論、シネコン記者会見じゃない。怪しい奴がいるかも知れないから、警護。」
「俺達さあ、ガードマンじゃないよ、SPでもないよ。」
「御池知事がファンなんだよ。頼むよ。」
「頼むよ、だってさ。」「まだ、重大事件じゃないから、警察は動き難いですね、脅迫状だけゃ。」と、泊はクールに言った。
午前11時。東京都庁。第一本庁舎5階。大会議場。
御池都知事の『鶴の一声』で、簡単に決まったらしい。
記者クラブが常駐していることも理由の一つらしい。
突然、非常ベルが鳴り響いた。
皆、避難に走ったが、中津興信所の面々は、大上の控え室に当てがわれている特別会議室に急いだ。
オンナが3人、大上を取り囲んでいる。
中津、泊、高崎が素手で取り押さえた。
間もなく、SATと警備員がやって来た。
午後4時。中津興信所。所長室兼会議室。
中津警部が、推移を説明した。
「主犯の3人を含め、大上が『捨てた』女達が同盟を組み、大上を追い詰める予定だったようだ。ナイフ以外は所持していなかった。」
「はい。こちら、中津興信所。」
公子が電話を切って、報告をした。
「知事です。ご苦労様でした。大上のファンは辞めます。」って。
男子達は、「おんなは恐い」と目で合図しあった。
―完―
「主犯の3人を含め、大上が『捨てた』女達が同盟を組み、大上を追い詰める予定だったようだ。ナイフ以外は所持していなかった。」
「はい。こちら、中津興信所。」




