51.2人乗り
泊とあきが、張り込みから興信所に帰る途中、信号の所で、倒れている女子学生を発見した。隣で友達らしき、ヘルメットを被った女子学生が介抱しようとしている。
急いで降りた、あきが事情を尋ねた。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午後0時20分。
泊とあきが、張り込みから興信所に帰る途中、信号の所で、倒れている女子学生を発見した。隣で友達らしき、ヘルメットを被った女子学生が介抱しようとしている。
急いで降りた、あきが事情を尋ねた。
進行方向で無い信号機が黄色になって、見切り発車したが、侵入した自動車が直進した為、急ブレーキをかけ、後ろに乗っていた友人が転んだ、と言う。
「哲夫、救急車!!」「もう呼んだよ。」
5分と経たない内に救急車が到着した。
大通りから近いからだろう。
「私、一緒に乗って行く。後、お願い。」
「了解。」
流石、元警察官だけあって、処理は迅速だった。
泊は、近くのコンビニの駐車場に自分の自動車を入れ、当該自転車を脇に寄せた。
そして、交通整理を始め、到着したパトカーの警察官に身分証(お名前カード)を見せて、名刺を渡し、かいつまんで事情を話した。
救急車の方が早かったので、転んだ女子学生と友人は搬送されたことも伝えた。
午後2時。救急病院。
手術開始直後、女子学生は亡くなった。
2人乗りしていた友人は、「私も乗せて」っといつものように荷台に飛び乗った。
2人は、スピードを上げて黄色信号に入って来た自動車に気がつかなかった。
補欠選挙の為らしき街宣車の音声に気を取られたのだ。
不幸な事故だが、『轢き逃げ』ではない。スピード違反には違い無いが、コンビニでもし目撃情報が亡ければ、お手上げだろう、とあきは思った。
何度も通っているルートだから、近くに防犯カメラがないことは知っている。コンビニの防犯カメラは、こちらを向いていない。
友人の女子学生は手術室で泣きじゃくっている。
あきは、ぴしゃりと平手打ちをし、亡くなった女子学生の家族に連絡するように命じた。
所轄の警察官と泊がやって来たが、走ってついてきた男がいる。
あきの勘の通り、マスコミだ。
「ハイエナ、帰れ!!」とあきは一蹴し、その男にも平手打ちをした。
踵を返して、走って逃げた男を追い掛け、あきは撮影をした。
今の自分は調査員だ。警察官にはやれないことも出来る。
あきは、中津警部ではなく、本庄弁護士に連絡した。
翌日、「危険な自転車2人乗り」という見出しで新聞に記事が載った。
しかし、その朝刊が配達する前に、New Tuberによって、「人の不幸が大好物のハイエナ・似非ジャーナリスト」というタイトルで、事件のあらましと新聞の名前が投稿され、RedやBase bookにも流れた。
本庄弁護士が、知り合いのNew Tuberに頼んで、先手を打ったのだ。
そして、マスコミが2人乗りしていた女子学生両方の家族を、やすらぎほのかホテルに匿った。
マスコミは、「その時の都合」で「加害者の味方」をしたり、「被害者を痛め付けたりする。」
「時間稼ぎ」に過ぎないかも知れないが、マスコミは「次の餌」が出てくれば、すぐそれに乗り換える。
自転車の2人乗りは、昔から危ないと言われている。ヘルメット着用義務になる前からである。ヘルメットは完全に守ってくれる訳ではない。だが、危険は危険だ。
自転車の後ろは『荷台』であって、『後部座席』ではない。ましてや、今回のように、本来の自転車運転手の肩に手を置き、荷台に立つという『曲乗り』では、転倒した場合の衝撃が大きい。
『自転車のヘルメット着用義務』だけを声高に叫び、『高齢者ドライバーの運転免許返納』を半ば義務化しているのは、方向違いではないのか?とあきは思っている。
翌々日。午後5時。中津興信所。所長室兼会議室。
「警察官という職務を離れたからこそ、一般人としての考え方が出来ているのさ。」と、あきの考えに所長の中津健二が言った。
―完―
※2023年4月1日以降、自転車のヘルメット着用は努力義務化されており、罰則はありません。努力義務とは「~するよう努めなければならない」と表現されるもので、罰金や刑罰などの罰則は基本的に設けられていません。
※自転車の二人乗りは、道路交通法57条2項に基づき、各都道府県の公安委員会が定める道路交通規則で原則禁止されており、違反すると2万円以下の罰金または科料が科せられる可能性があります。
自転車二人乗りをしている時に交通事故が起きた場合、自転車側の「著しい過失」として不利に考慮される可能性もあります。
自転車の後ろは『荷台』であって、『後部座席』ではない。ましてや、今回のように、本来の自転車運転手の肩に手を置き、荷台に立つという『曲乗り』では、転倒した場合の衝撃が大きい。




