48.盾―あるSPの死
「SPが暗殺された。前代未聞だ。殺されたのは、鴻池ひとし氏。長年、国賓館のSPで働いた、ベテランだ。」
「兄貴。ピスミラ?ダークレインボウ?」中津健二は、兄の中津警部に尋ねた。
======= この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
河村善子・・・SP隊隊長。柔道が得意。警視庁警備部。国賓館に常駐している。
新町あかり巡査・・・EITO東京本部隊員。みちるの後輩。警視庁からのEITO出向。
高崎[馬越]友理奈・・・EITO東京本部隊員。高崎と結婚した。
本郷隼人・・・EITOシステム開発部課長。中津興信所裏手の、EITO秘密基地に常駐している。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前9時。中津興信所。所長室兼会議室。
「SPが暗殺された。前代未聞だ。殺されたのは、鴻池ひとし氏。長年、国賓館のSPで働いた、ベテランだ。」
「兄貴。ピスミラ?ダークレインボウ?」中津健二は、兄の中津警部に尋ねた。
「知っての通り、SPは要人を守るのが仕事だ。そのSPがやられたとなると、問題が大きい。」
「仕事関係じゃないんですか?」と、新婚旅行から帰った高崎が尋ねた。
「詰まり、鴻池が『盾』になった要人を狙った者または、その仲間を狙っていた、とかか。あり得ない話でもない。実は、一番大きな仕事は、『志田総理暗殺未遂事件』だ。」
「ああ。あの人かあ。テレビに映ってたわ。何度も放送してたもの、襲撃された瞬間を。」と、根津が言った。
「でも、そうだと仮定して、何で今頃?」「だよねー。」
「その時のSPの隊長は、今はOBだ。名前は渥美一郎。国賓館と渥美氏とに聞き込みしてみてくれ。尚、発見されたのは目黒川だが、流されて来たから、殺害場所は分かり難い。」
午前11時。渥美宅。
「渥美君は優秀でねえ。何とかって言う武術、そうだ。ジークンドー(截拳道)とか言う名前の武術のインストラクターの免許を持っていた。以前、テレビドラマで、その特訓を受けた俳優がSPを演じていただろう。その影響で習ったらしい。だが、対峙してこそ威力が発揮する。何とかいう、EITOが闘っている敵の武器らしい、と久保田管理官から聞いたよ。」
渥美の言葉に、「そうです。『ナイフガン』というと特殊な銃です。専用ナイフを銃から発射するのですが、銃が特殊な為、量産は難しいとと言われていますが、飛距離が長いので、打撃力が強いです。しかも、今回は2方向からですから、2丁使ったことになります。」と、高崎が説明した。
午前11時。国賓館。
夕刻から、某国の大使の護衛に当たる為、チーム全員揃っていた。
女性の隊長である河村は、隊員がいなくなった後で言った。
「実は、鴻池さんからプロポーズされていたの。悔しいわ。」
女性である、公子と根津は「お察しします。」と応えた。
「我々は、逮捕は出来ませんが、調査は出来ます。お役に立てれば幸いです。」と、公子は言った。
公子は学生でありながら、中津夫人となった為、しっかり調査員とする反面、学業は休業していた。
国賓館で、他の隊員とも話して、2人で歩いていたら、お茶の水駅近くで声をかけられた。公子の同級生である。
「ちっとも見ないと思っていたら・・・デート?」
「え?違う違う。そんな、関係じゃない。2人とももうミセスよ。結婚式呼ばなくてごめんなさい。内輪だけでやったから。」
「じゃあ、もう大学はどうでもいいか。いいなあ。」
「ちあき。そういう訳じゃあ・・・あ、バイトが忙しいのよ。」
「ふうん。新婚にお呼ばれしちゃいけないかしら?」
「いけないですね。」と、横から根津が2人に口を挟んだ。
「先輩。約束の時間に遅れると、『店長』に叱られるわ。」と、更に追い打ちをかけた。
「あ。年賀状書くから。またね。」
公子は根津に引っ張られて、神保町方面に歩いて行った。
ちあきと呼ばれた女性は、薄っすらと笑ってスマホを出した。
『え?違う違う。そんな、関係じゃない。2人とももうミセスよ。結婚式呼ばなくてごめんなさい。内輪だけでやったから。』
「ちゃんと取れてるわ。私の方が探偵の才能あるわね。」
午後2時。中津興信所。所長室兼会議室。
「尾行されなかったか?」と中津が尋ねると、根津はスマホを出して録音を再生した。
『ちあき。そういう訳じゃあ・・・あ、バイトが忙しいのよ。』
「尾行はされませんでした。麝香(じゃこうの匂いがしました。私、鼻がいいんです。」
「よくやった、根津。」「聞き込みやって、心にやましいところがある者は反応するって所長の言葉、染みこんでいましたから。声をかける前から、尾行に気づいていました。」
「私もね、わざと親しくするのに苦労したわ。同じクラスでも、あまり親しくしていなかったし、夏に水死したこと知ってたし。どこかで入れ替わって調べたのね。興信所の仕事してる、って他の子にしゃべっちゃったことあったし。」
「じゃ、公ちゃん、偽物かも、那珂国人の。」と高崎が言い、コンティニューの情報で『落してくれなかった』かもだからな、この興信所は。目黒の事件、関わってるし。でも、引っ越し先は、ここだとは分かっていない筈だ。」と、中津が言った。
午後7時。
仕事を終えた河村は、帰宅途中、進路を変えて、反対方向に歩き、公園に入った。
違う方向から、2人の女が現れ、ナイフガンでナイフを打った。
ナイフガンの2本のナイフは、見事に弾き跳ばされた。
メダルカッターとシューターとブーメランが同時に跳んできて、弾き跳ばしたのだ。
陰から現れた、喪服姿の女2人が、狙撃手2人を投げ飛ばした。
「川崎。あんたが裏切り者だったの?で、あんたが那珂国人の、ジャコウ女か。」河村は呆れて言った。
「ご苦労さん。悪かったね、エマージェンシーガールズ。ダークレインボウと闘ったばかりなのに。」と、中津警部は言った。
そして、部下と逮捕連行した。
「お疲れさん。馬越さん、あかりちゃん。見事だね。」と、現れた中津健二所長は言った。
「念の為、こんなのも背負ってたんですよ。」と、馬越は背中を見せた。
EITOシールドと呼ばれる盾だが、一見『亀の甲羅』に見える。本郷曰く、一番早い退路は、背中を見せること、らしい。
ナイフガンの強靱なナイフも防げるが、かっこ悪いと使いたがらない隊員も多い。
「これから、うどん屋に行くのに反対の人?」
中津の提案に、誰も手を挙げなかった。
「また、クーポンか。」公子は、小声で根津に言った。
―完―
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