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《 pseudo love 》



事務所の男性スタッフのYさんが、

「大丈夫ですか?」

と 心配そうな表情で言うので 私は、

「Yさんは一緒に来てくれないのですか?」

と 尋ねると、

「ちょっと それは無理ですね。」

そう言って 困ったように笑いました。

考えたら 当然の事。

その後に、

「何か困った事があったら

直ぐ事務所に連絡して下さい」

と Yさんが言ってくれたので、

「解りました。ありがとうございます」

と お礼を伝えました。



今日 初めてお客さんに付く事になりました。

Yさんの気遣わし気な顔に見送られ、事務所を出て 徒歩で数分の 指定されたホテルに向かいます。



美容師として働きながら、休みの日に 誰にも秘密でアルバイトをしようと決めたのは、数週間前。風俗専門の求人雑誌で、今のアルバイトを始めた事務所を見つけました。

家族には 習い事を始めたと言っておいて、週に1日 お昼の12時から17~18時の間、このアルバイトをする事にしたのです。



ホテルの部屋のインターホンを鳴らすと、サトウさんというお客さんがドアを開けて、私を見ながら 快活な声で、

「初めまして~ 待ってたよ。きみが 愛ちゃん?」

と 笑顔で言ってくれました。

「はい… 初めまして。えーっと… 宜しくお願いします」

私は緊張のあまり、しっかり挨拶できてるのかも解らず 応えました。サトウさんは 私を見つめながら、

「今日 この仕事 初めてなんでしょ?」

と 言います。私は 一言、

「はい」

と 答えながら、頭の中で 次は何するんだっけ?…と、Yさんに教えられた事を思い出そうとしていました。



とにかく緊張していたので、頭が空っぽになってしまい 全身じっとり汗ばんでいました。

するとサトウさんが、

「ここ 玄関だし 部屋に入ろうよ?

今日の料金は そこのテーブルの上だから 」

と 言うので、履いていたハイヒールを脱ぎ 部屋に入ると、本当に 既にお金を用意してくれてました。

「ありがとうございます」

と 言って、私がお金を財布にしまっていると サトウさんは、

「早く事務所に 電話した方がいいよ」

と 言ってくれたので、私がペコリと頭を下げて、

「ありがとうございます!」

手順を教えてくれた事に お礼を伝えると、急に笑い出して、

「愛ちゃん 何か面白いね~」

と 楽しそうな顔をしています。



事務所に電話をすると 1コールでYさんが出たので、

「あの… 今 入りました… 」

と 告げると Yさんは やっぱり心配そうな声で、

「解りました。お願いします」

と言い 直ぐ電話を切りました。



「えーっと… うがいをしましょう」

サトウさんに声をかけて、一緒に洗面所に行きます。確か これで良いはず。うがいをして、シャワーを浴びて… と考えてるうちに、サトウさんが手際良く 2個のコップに水を汲んでくれました。

「すみません。お客さんに用意してもらっちゃって」

焦りながら バッグの中からイソジンを持って来て、サトウさんが水を汲んでくれたコップに 薬液を適量 入れるつもりが、緊張で手の力加減が変になり大量のイソジンが コップに入ってしまいました。



その途端 サトウさんは、大笑いをして言いました。

「愛ちゃん!愛ちゃん!イソジン入れ過ぎ !!」、

「あっ!ごめんなさい!」

驚いて、謝る私。

「いいよ いいよ。

これで口の中の雑菌 即効 全滅するでしょ」

笑い続けながら、そう言ってくれるサトウさん。

でも私は気になって、コップのイソジン水を少し捨てて 水を足して薄める事を提案します。でも サトウさんは、

「愛ちゃんが この仕事するって決めて

初めて 客に用意した うがい液じゃん。

勿体ないから このまま うがいしようよ」

と言ってくれました。



「しかも ほら!赤ワインみたいだよ。

乾杯♪︎ して 一緒にうがいしよう」

と 私の緊張をほぐそうとしてくれるのか、可笑しい事を言って 私を笑わせてくれます。

「カンパーイ♪︎」と 2人で言いながら、濃厚なイソジン水で うがいをすると、

「苦~い!」

と 顔をしかめながら、サトウさんは また大笑いしました。



「これで もうキスできるね」

と 笑い止んだサトウさんは、私の背中に腕を回して引き寄せてキスしてきました。

でも… 人柄が良さ気な男性だけど、今日初めて会って 何も知らない人だし、どうしても抵抗があって 体が固くなっていたのでしょう。

サトウさんが、

「大丈夫?」

と 尋ねてきます。

『大丈夫ですか?』つい先程 耳にした言葉。Yさんの顔が想い浮かびました。心配そうな顔の Yさんの声も。



「大丈夫です」

サトウさんに返事をします。

覚悟を決めて、このバイトを始めたのだから大丈夫。

家族の事を考えて…

Yさんの顔を想い浮かべて…

サトウさんという何も知らないけど 優しいお客さんだから… 大丈夫。



浴室に行き、お互いの服を脱がせ合いながら 裸になります。

サトウさんが またキスをしてきて、私の乳房に触れました。ゆっくり 優しく 円を描くように乳房を揉まれて。指先で乳首を弾くように弄られて。

「あぁ… ン…」

思わず声が出てしまい サトウさんが、

「感じやすいんだね」

と 言います。



浴室に入り シャワーのお湯を出して 2人で浴びながら、サトウさんが尋ねてきました。

「愛ちゃんは 何で この仕事しようと思ったの?

お小遣い稼ぎ?」

「いえ、普段は別の仕事をしてるのですが

あまりお給料が多くなくて…

家に入れる分が少しだけなので

こちらで頂いたお金を 家に入れたくて」

と 答えると、サトウさんは驚いたような表情になり、そして 先程の大笑いとは違う優し気な顔で 黙って静かに微笑みました。



体を洗う時に シャワーのお湯を止めると、サトウさんは そのまま出しっ放しでも良いと言うので、私が お湯が勿体ないと答えると、また静かに微笑んでいました。



手で泡立てたボディーソープで サトウさんの首辺りから洗い始めて、そのまま腕や胸 お腹を洗っていきます。

もう 硬く勃起したペニスや 睾丸を洗う為に、浴室の床に片膝をついて しゃがむような姿勢になった時、バランスを崩して尻もちをついてしまいました。

恥ずかしさで 顔が火照り、真っ赤になってるのが解ります。そんな私を見て サトウさんは、また大笑いしました。

「俺 風俗来て 女の子が尻もちつくなんて

初めて見たよ~!」

何だか申し訳ない気持ちになり、

「ごめんなさい… 全然 色気が無くて…

シラケちゃいますよね?」

と 謝ると、

「いやいや 面白いよ~

愛ちゃん 気に入っちゃった!また次も指名するから」

と 言ってくれました。



シャワーを浴び終えて ベッドに行くと、サトウさんは またキスをしてきました。

私は 尻もちをついたせいで緊張がすっかり抜けて、リラックスしていました。

「尻もちつくけど キスは上手いね。

感じやすい体だし…」

と サトウさんが言うので、過去の事を思い出します。



16歳の時に、今 勤めてるヘアサロンとは違う店で アルバイトをしていました。

仕事の内容は 諸々の雑用。カット後の床掃除やタオルの洗濯、パーマで使ったロッドの洗浄などです。

その店の店長は 背が高くて肩幅の広い男性で、当時の私より17歳上の33歳の独身。

なぜか私を気に入ってくれて、2年程 付き合っていました。初めてセックスをしたのも、店長でした。

よく店長から、おまえは敏感な体だと言われて…。



サトウさんにキスをされながら 乳首を弄られ、性器が濡れてきてしまい サトウさんが私の性器に触れて、

「凄い濡れてるじゃん 乳首弄られるの好き?

キスした時からこんなだったの?」

と 言われ 何だか複雑な気分になり、そして また店長のことを思い出します。



「ほら もっと口を開けてごらん。

舌を引っ込めないで 出して。

舌を吸い合ったり

舐め合ったりすると

凄く気持ちいいんだよ…」


「乳首 触られるの好き?

感じやすいな。

いっぱい弄って 舐めてあげるから…」


「フェラは ただ唇で

しごくんじゃないんだよ。

うーん… 何て言えばいいかな

あぁ ソフトクリーム舐めるみたいに

舌で舐め上げながら

喉の奥に少し力を入れて 締めて しゃぶるんだ…」


「声は 気持ち良ければ我慢しないで

思いっきり出していいんだよ。

それからイく時は ちゃんと『イく』って言えよ…」



あの頃は、とても店長が好きでした。でも 店長は私に時々「可愛い」と言ってくれても、1度も「好き」とは言ってくれませんでした。

その内 会う回数が減り、自然消滅的に関係は終わりました。

既に 店長の店でのアルバイトは辞めていて、その後 噂で聞いたところ 年齢が近い大人の女性と結婚したとか…。



私にとっては恋愛でしたが、多分 店長にとって私は唯の遊び相手だったと思います。

会うのは 1週間に1~2回くらいで、店が終わった夜だけ。

店の定休日に、一緒に映画を観に行くとか ドライブに連れて行ってもらうような事は 1度も無く、唯 セックスばかりしてたような気がします。

多分 私と会ってる時から、噂で聞いた 結婚した女性と本当のパートナーとして 付き合っていたのでしょう。



サトウさんがベッドに仰向けに寝て、顔に跨がるように催促しました。

「お客さんの顔に跨がるなんて…」

と 戸惑っていると、

「いいんだよ。

俺 そうやって責めるの好きだから」

と 私の腕を引っ張っるので、脚を開いて そっとサトウさんの顔に跨がると、両手で腰を押さえて 引き下げられてしまい、サトウさんの鼻と口に 私の性器がぴったり当たってしまいます。



サトウさんは 顔を少しずらして、

「クリを俺の鼻に当てて 腰を動かして。

マンコ舐めてあげるから。」

と 言うので、クリトリスをサトウさんの鼻に当てながら腰を前後に動かすと、一瞬で体の隅々まで快感が広がり 顔が仰向き 背中が反ってしまいます。

「ン… あン… 気持ちイイ…」

私の声に サトウさんが

「気持ちいい? 凄いマンコ濡れてるよ」

と言って、私の膣に舌を差し入れて ピチャピチャと音を立てて舐め始めます。



その音を聞き、体は感じてしまってるけど やっぱり逃げ出したいような気分になり、目を閉じて必死に我慢します。

ふと またYさんの顔が想い浮かび、

『大丈夫ですか?』

と 心配そうに言ってくれて 心の中で、

『…大丈夫です』

と 答えました。



「次は俺の舐めてくれる?」

サトウさんが そう言うので、ペニスを見ると 勃起した先の孔から 透明な液が沢山 垂れています。

右手で睾丸を撫でながら 左手でペニスの根元を支えて、亀頭を口に含みます。舌の表面全体で亀頭をそっと捏ねるように舐めて、孔を舌先で突くように くすぐるようにして、裏筋を舌を平たくして舐め上げると、

「あぁ… 凄くいいよ…

愛ちゃん、この仕事 本当に初めて? 」

と サトウさんが尋ねてきました。ペニスを口に含んだまま、小さく頭を縦に振って 肯定の意味の返事をします。

「本当に? あ、そこ、それ… 気持ちいい…

本当に初めてなの…?」

サトウさんが、目を瞑り眉を寄せながら 不思議そうに言いました。



16歳の時に店長に教わった通りに、根元までペニスを口に挿れたら 舌と上顎でペニスを挟み 喉奥を締めて、ソフトクリームを舐めるように舌で舐め上げながら、頭を上下に振り 口の中 全部を使ってペニスをしごきます。

舐め上げて、

舐め上げて、

舐め上げて。

吸い上げて、

吸い上げて、

吸い上げて。

頭を振る速度を速めて しゃぶり続けて。

「あー… ダメだ

もうイくよ… イく、イく!」

サトウさんは 私の口の中に射精しました。



舌の表面で、ペニスの中を精液が流れ動くのを感じながら 射精が終わるを待ちます。

ほんの少しの時間なのに 長く感じて、心の中で『大丈夫』と 自分に言い聞かせて。

サトウさんが、

「ありがとう 愛ちゃん。

もういいよ…」

と 言うので、ペニスから口を離して ティッシュに精液を吐き出します。丁度その時、部屋の中の電話が鳴りました。



「もう10分前かぁ」

サトウさんが言うので、

「そうですね。

意外と2時間って 早いですね…」

と 応え、電話の受話器を取ると Yさんの声が、サービス時間終了10分前を知らせてきました。

シャワーを浴びて メイクを直し 事務所に退室コールをして、サトウさんに挨拶をします。

「あの… 今日は ありがとうございました」



裸のままで 煙草を吸っていたサトウさんが、私の傍に来て、

「こちらこそ、ありがとね。

俺 仕事は夜の仕事だから来週も来るよ。

家族の為に いっぱい稼いでね」

と言ってくれました。そして、

「愛ちゃんのこと 好きになっちゃったし」

と 笑顔で、私の頭を片手で軽くポンポンと叩いてくれました。

「ありがとうございます。嬉しいです…」

と 答えて部屋を出ようとすると、サトウさんは 私を後ろから抱きしめてきました。



ホテルから外に出ると、日差しがとても眩しく感じました。事務所まで数分の距離。歩きながら色々な事を考えます。


( このバイト、どうにか続けられそう… )


( 初めて会って、しかも こんな仕事を通して知り合ったのに 『好きになっちゃった』って何だろう? でも、優しいお客さんで良かった… )


( 今日 こうしてお金を稼いで、このお金を家に入れる… 父と母と姉が、このバイトの事を知ったら 泣いて怒るだろうな… )


そう思った時、子供の頃の 唯一 楽しかった家族の思い出の、皆で花火を観に行った夜を思い出し、それに罅が入った気がして 急に悲しくなりました。



事務所に着くと Yさんが私を真っ直ぐ見つめて、

「お疲れ様でした。大丈夫でしたか?」

と 言ってくれて、心の中で想い浮かべたYさんではなく リアルなYさんが私を心配してくれてる… でも、自分が汚れてる気がして恥ずかしくなり、Yさんの視線から逃れたくて目を逸らし 黙って頷きました。



色々な思いを 言葉にすると、自分の全てが崩れてしまいそうになった日。



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