表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

《 stoic love 》



  愛が面接に来た日は よく憶えている。


  緊張で顔を強張らせて 事務所の中を

  物珍しそうに見回していた。


  最初は何も特徴の無い 普通の女に見えた。

  唯 気が強いのか 弱いのか

  よく解らない印象だった。


  普段は 美容師として働いていて

  その仕事が休みの日の 週1で 平日5~6時間

  バイトをしたいと言っていた。

  家族には勿論 秘密で

  だが 経済的に貧しい家庭なので

  家族の為に稼ぎたいと。


  俺も この業界での仕事は初めてだが

  自分とは 全然違う理由だった。

  俺は将来 飲食店を経営したくて

  その資金稼ぎに 給料の良いこの仕事に就いた。

  必要な額が貯まれば 直ぐ辞めるつもりだ。


  元々 風俗など興味が無く

  何も知らない世界だったが

  仕事の内容は 極簡単で 直ぐに慣れた。


  「名前…

   源氏名ですが、どうします?

   ご自分で決められなければ

   こちらで考えますが?」

  と 尋ねると

  「んー…

   『愛』でもいいですか?

   子供の頃から憧れてた名前なので…」

  そう おずおずと答えた。

  「『愛』さんね

   では これから宜しくお願いします」

  すると愛は

  強張らせていた顔を

  やっと和らげて微笑み

  「宜しくお願い致します

   …何だかホッとしました

   こういう所で働いてる男性って

   もっと怖い感じの人かと思ってて…」

  と 言った。

  その微笑んだ顔が 何故か気になり

  愛の顔を見入ってしまった。


  週1回で5~6時間では

  客が付き難いだろうと思う。


  日中は客が少ないし

  しかも 平日だと更に客の数は減る。

  週末なら昼間でも

  そこそこ客は来るが

  平日は 19時以降でないと決して多くない。


  だから平日は 早番の女性スタッフは5人。

  遅番はその倍の人数。

  週末は 早番 遅番 共に3~4倍の人数が居る。


  愛はまだ顧客が居ないから

  新規の客に付けるしかない。

  愛が初めて出勤して来た日は

  予想通り 待機だけで時間が過ぎてしまった。


  次の週の 愛の出勤日。

  その日は女性スタッフが 2人生理で欠勤して

  他のスタッフは接客に出ていた。

  愛が1人で待機してる時

  今まで何度か

  利用してきた客から電話が入った。

  この客は特に指名は無い。

  「初めての女の子が居るのですが

   その子で良いですか?」

  そう 客に告げると

  「ああ 誰でもいいよ」

  と 言うので 愛を付ける事にした。


  ふと

  自分はオーナーではないから

  愛に研修をさせてないが

  大丈夫だろうか…と気になる。

  デリヘルの 仕事の内容は

  面接日に 口頭で説明しただけだ。


  普通 素人のスタッフは

  20時に出勤して来るオーナーが

  研修に付いて仕事を覚えさせるのだが

  愛は 初めてこの仕事をするのに

  いきなり客に付く事になる。


  客が待つホテル名と 部屋番号

  コース時間と 料金

  客の名前を書いたメモを渡し 愛に言う。

  「何か困る事があったら

   直ぐ事務所に電話して下さい」

  緊張した面持ちで 愛は

  「解りました ありがとうございます」

  と 返事をして事務所を出て行く。

  電話で話した限り

  これから 愛が接客する客は

  横柄な雰囲気ではなく

  どちらかと言えば 気さくそうな感じがした。


  でも 何だか心配になる。


  気にしてるうちに 電話が鳴り愛が

  「今 入りました」

  と 入室した事を告げてきた。


  客からの電話受付をしたり…

  仕事に出ていた他のスタッフが戻って来たり…

  サービス終了時間10分前の電話を入れたり…

  そうしてるうちに

  愛が事務所に帰って来た。


  困惑したような

  複雑な表情をして

  少し上気した顔をしている。

  「大丈夫でしたか?」

  と 尋ねると 愛は黙って頷いた。


  翌週 愛の出勤日に

  既に先週 愛と約束していたらしい

  サトウという客から電話が入った。

  「先週の愛ちゃん また今日も宜しく」

  「承知しました ありがとうございます」

  ホテルの部屋番号と

  コース時間を確認して 電話を切る。


  この客は 今まで1ヶ月に1~2回程で

  指名は無いから 毎回違うスタッフが付いて

  その中の誰かを次に指名してくる事は無かった。

  今回 初めて愛を指名した。


  何故だ?

  客は素人っぽいのを好むが…

  愛は 素人っぽいのではなく 素人そのものだ。

  しかも先週 利用したばかりで 続けて今週もか?


  サトウは毎週 愛を予約するようになった。

  1ヶ月程が過ぎた頃

  新規の客が入り 愛を付けたら

  タナカというその客も 毎週 愛を予約して

  愛は毎週 その2人の客を

  それぞれ120分コースで 接客をするようになった。


  この事務所の料金は 比較的高めの設定だ。

  毎週 風俗に通う奴なんて

  よっぽど経済的に余裕があるのだろうか?


  その後 2ヶ月位に1回程の

  毎回 指名無し60分コースのオオタという客も

  愛が付いた後

  必ず毎月1回は 愛を予約するようになった。


  愛がうちの事務所で働き始めて 数ヶ月が過ぎたが

  相変わらず

  サトウとタナカは 毎週 愛を予約している。


  愛はどんな風に

  客の相手をしているのだろう…

  客達は 愛の何に

  それほど入れ込んでいるのか?


  最初 色々な事を疑問に思い

  それが日が経つに連れて

  明確な1つの疑問に固まる。


  元々 風俗で働く女には興味が無いし

  腹の底では 軽蔑している。

  だが 彼女達が客の相手をして

  自分も高い給料を貰えるのだから

  Win-winだ…くらいにしか思わない。

  忙しくて頻繁に会えないが

  1年程 付き合ってる彼女も居る。


  愛は 変わらず接客後は

  複雑な表情で帰って来て

  でも 最近

  俺の目から 僅かに視線を逸らしているが

  面接日の時のような 笑顔を見せるようになった。


  他の女性スタッフには 気軽に聞ける事なのに

  何故か気構えてしまい

  だが どうしても知りたくて愛に尋ねた。

  「サトウさんとタナカさん

   どんな感じのお客さん?」

  すると愛は

  やはり俺と目を合わせず

  だけど 微笑みながら

  「いい方達ですよ

   サトウさんは 明るくて活発な感じで

   タナカさんは 反対におとなしい人です」

  と 答えた。


  やはり悪い客ではなさそうだ。

  中には 本番を強要したり

  乱暴な扱いをする客も居る。

  安心したのと同時に…この苛立ちは何だろう。

  何故 愛が客の人柄を

  良いと言った事に微かな怒りを感じるのか?


  愛が接客に出て 入室コールが来る。

  電話を切った後

  最近は 特に苛立ちが酷くなっている。



  そして……



  想像してしまう。

  愛の あの唇にキスをしたら

  どんな感触だろうか?


  小ぶりな胸を 撫でたり

  揉んだりしたら

  どんな反応をするだろう?



  乳首を舐めたら 感じて声をあげる。

  性器を濡らして 俺を欲しがる。




  ジーンズの中で 痛いくらい

  ペニスが勃起する……


  ふと

  時計を見ると 愛が行ってるホテルに

  時間終了10分前の 電話をする時刻になっていた。


  勃起したペニスを

  自分で意識しながら電話をかける。

  すると 愛が

  少し息を切らして 電話に出た。


  その声を聞き

  今 この瞬間まで

  客に何をされていたのだ?

  客に何をしていたのだ?

  と また苛立つ自分が居る。


  愛が事務所に戻って来た。


  つい 見入ってしまう。

  何となくぼんやりした感じの

  複雑な表情。

  逸らす視線。

  上気した顔。


  そんな日が続き

  俺の中で 渦巻いてた疑問は消えてゆき

  唯々 愛を抱きしめて

  キスしたいと思う

  自分に変わっていった。



  そして……



  愛を抱きしめる。

  舌を深く差し入れ キスをする。


  服を着たまま

  愛のブラジャーの中に

  手を入れ 乳房を揉む。

  乳首を指先で弾き

  摘み 転がし 押し潰す。


  愛の 乱れる息。

  愛の 啼く声。

  愛の 濡れた性器。


  愛が 俺のジーンズのファスナーを下げ

  ブリーフを腰まで下ろし

  硬く勃起したペニスに 唇を這わせる。


  舌をペニスに絡みつけて

  フェラチオをする愛。

  眉を寄せ

  両方の頬を窪ませ

  時々 喉から声を出しながら。


  俺も愛を寝かせて スカートをめくり

  パンティーを片脚だけ脱がせ 脚を開かせて

  クリトリスを舌先で舐める。


  愛の喘ぎ声。

  「もっと…」とねだる声。

  性器のひだを広げて

  溢れる液を 舐め取るようにクンニする。


  後ろを向かせ 白い尻を両手で掴み 支え

  もう どうしようもなく勃起したペニスを

  愛の性器に挿れると クチュリと音がして

  愛は啼き叫ぶような声をあげ 背中を反らせる。


  服の上からでも解る

  その 反った背中の 背骨に沿った真っ直ぐな窪み。

  細いウエスト。

  小ぶりな乳房に比べて 大きく張った尻。


  愛のアナルがヒクッと締まり

  腰を押し出すと

  膣のひだが 内側にめくれ込み

  腰を引くと ひだが外側にめくれ出る。


  何か 荒ぶる気持ちが込み上げ

  動物のように激しく腰を振り

  愛を突きまくり

  グチュグチュという音が響き

  俺の腰と 愛の尻が当たる

  パンパンパンという

  乾いた肌が ぶつかり合う音が混ざる。


  普段の弱々しい声の愛とは 別人のように

  快楽に喘ぎ 叫び続ける姿に

  更に激しく腰を振る……



  「愛」



  つい 声に出して 名前を呼んでしまい

  そんな自分に困惑する。


  愛はうちの事務所の

  商品の1つだと 心の中で 自分に言い聞かせる。

  必死に言い聞かせる。


  もう直ぐ 愛が接客から戻って来る。

  事務所のドアの外側で 愛を待つ。

  いつから ここで

  愛を待つようになったかは 憶えていない。


  愛がこちらに歩いて来る。

  まだ 数百メートルも向こうに

  その姿が見えて

  だから勿論 聞こえない。


  意識して 声に出して名前を呼び

  そっと 呟く。

  「愛… おまえを抱きたい」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ