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9.初めての外の世界

 三時間ほど歩き続けた俺は、少し道から外れ休憩をとった。空間収納から、飲み水を出して喉を潤す。

 そして、地図を取り出して眺め始めた。


「これから、何をしていけば良いんだ……」


 ドワンライト王国から出て生活するなど、考えた事も無い事だ。だからこそ、これから何をすれば良いのか、全く浮かんでこない。


 取り敢えず、自分と言う者がどう言う奴なのかと言う事は、俺が一番よく知っている。だからまず、出来ない事を上げてみる。


 陽気ではあるが社交性は無い。他種族と仲良くする気も無い。作物を育てる事は出来ない。料理や洗濯も、使用人がやっていたので全く出来ない。

 あとは何があるかな……。出来ない事はまだ沢山あるとは思うのだが、なかなか直ぐには思い浮かばないものだ。


 だから今度は、逆に出来る事を考えて見る。まあ、俺が出来る事と言えば、物作りや鍛冶くらいだ。住む土地さえ決まれば、家を建てる事はできる。


「あっ、そうか!まずは住む家を建てる場所を探せば良いんだな!」


 俺は早速、地図を見ながら向かう場所を考えてみた。

 候補としては、誰もいない静かな所。他の種族が住んでいる所は駄目だ。特に人間みたいな面倒な種族には一切関わり合いたく無い。

 となると……平地にある街や村を避けて……。

 安住の地を求める瞳が、地図の上を上下左右に忙しなく動き回る。


 人間達は平地に住んでいると聞いた事があるし、地図に示された人間の居住地も平野に集中している。後は、エルフや森の民のいなそうな山か森を探して見る。


 この地図には人間の居住地の他に、亜人達の集落の記載もある。ドワンライト王国はもちろん、エルフや獣人、ハーピーやリザードマン等、様々な種族の記載があった。


「他種族がいない場所って……無くないか?」


 地図に書き込まれた分布図は、ほぼ全域に細やかに書き込まれている。平地はかなりあるが、人間の集落が点在しており、彼らが通る道が張り巡らされているので、やはり避けた方が良さそうだった。


 ただ、山に関しては、この山のどこかに生息していると言う簡単な記載のみとなっている。こうなったら、山と言う山を歩き回って、誰もいない場所を探すしか無い。


 俺は地図で目星をつけた大きな山脈を目指して歩き出した。俺が向かう山脈は、地図によると、ドワンライト王国から東に四百キロくらいの所にある。二つの大きな山が連なって出来た山脈だ。二つも山があるのなら、俺一人が住める誰も来ない場所くらいあると思う。

 一人で住む家だから、そこまで馬鹿でかい家を建てる気はない。なんとかなりそうだと、心が少し軽くなった。


 強靭な肉体と、鍛冶仕事での数日間の完徹が普通にある純ドワーフの俺は、昼夜を問わずにひたすら歩き続けた。

 そのおかげで、三日ほど経った頃には、もう既に山の中にいた。疲れている筈の体は、山に入った瞬間にその疲れを一気に消し去った。


 ドワンライト王国にも山はあるが、地熱によって岩と石しかない禿山とかしている。

 青々とした緑に囲まれた山の中の探索は初めての経験だ。それがまさか、こんなにも胸ときめく素敵な場所だとは知りもしなかった。


「うおぉ!!!ジルテルの木の蔓だぁ!!おお、これはリーマト鉱石!!あの光っている雫は、朝焼けの雫か!!」


 物作りの基本とも言える、材料の宝庫だったのだ。素材のレア度は低いが、低い物ほど一般的な物に良く使われており、大量消費される物でもある。


 だが、ランクが高いとか低いなんて事は、今の俺には関係ない事だ。見つけた素材を放置してそのまま行く事なんて、俺には出来なかった。片っ端からドンドンと、空間収納にぶち込んでいく。


「なんだ、これは!すっごく楽しい!」


 ドワンライト王国の、しかも第一血統の家に生まれた俺は、素材の採取なんてしたことは無かった。材料は全て店から買うし、欲しい物があれば、ギルドに依頼していたからだ。


 生まれて初めて経験した素材の採取は、国を追い出されて傷付いた心と、辛くて悲しい気持ちを忘れさせてくれた。



ちなみに、私事ではございますが……


ゲームで素材を見つけると、取らずにはいられないタイプです……。(収納が無駄にパンパンになるタイプ)

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