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22.ランフォルト・グラザード

 顔を見合わせたカイト達は、未だに首を傾げ気味にしている。


「でも……。この土地の領主様は、ドワーフの人だって聞いていたので……」

「えっ?ここにドワーフがいるのか?」

「えっと……。見た事がないからいるかどうかは分からないんですけど、でもここの土地は国王様がドワーフの人に与えた土地だって、街の人が言ってました」

「そうなのか。それは知らなかったな……。まあそれなら、その領主と言うドワーフに俺から頼んでやるよ。同じドワーフなら間違いなく了承してくれる筈だ」

「本当ですか?ありがとうございます!」


 カイト達はとても嬉しそうな顔を見せた。

 他に行く所が無い子供達。ドワーフがこの土地の領主をしているのなら、彼らだけで住む許可を得るのはかなり難しいだろう。


 それと言うのも、ドワーフは基本、他の種族が好きではないからだ。特にエルフや人間等が好きではない。俺だって日本人の記憶が戻る前までは人間が嫌いで、なるべく関わり合いたくないと思っていたくらいだ。だから彼らだけで領主のドワーフに頼みに行っても、絶対に了承はされないだろう。


 そこで、俺がそいつに頼みに行く訳だ。

 同じドワーフ同士なら、必ず仲間意識を持つ。しかも第一血統を持つ俺に、絶対にマイナスな感情は持たない。それは他家の血統の流れを汲んだ者でも変わりない。


 特に俺の実家が御三家の一つなので、絶対に逆らったりはしないだろう。俺はグラフォイド家から除名されてはいるが、血筋という点が重要視されるので、おそらく大丈夫だ。

 仲間意識がかなり強い、血統重視のドワーフならではの考え方だと思う。


「会った事がないのなら、髪の色とかは分からないんだよな。うーん、そうだ!そいつの名前とか分からないのか?名前が分かれば、大抵の事が分かるんだが……」

「えっと……。俺達もよく知らなくて……」

「確か、ラングなんとかって……」

「ラング……。うーん。それだけじゃよく分からないな」


 腕を組んで考え込んだ俺に、思い出したと言わんばかりにカイトが手を叩く。


「あっ!そう言えば、街の人が地図に書いてあるって言ってたかも」

「地図に?」

「はい。領土にその人の名前を付けたのだと言っていました」

「地図か……」


 俺は空間収納から地図を取り出してみた。広げた地図をカイトが覗き込み、一箇所を指差した。


「此処です。今いるのは此処!」


 カイトが示す所を見てみると、そこに小さく地名が書いてあった。

 

「ランフォルト・グラザード!?」

「あっ!そうです。その人です」


 笑顔を向けるカイトの横で、俺は唖然とした顔のまま固まっていた。それと言うのも、俺はそいつをよく知っているからだ。


 ランフォルトは、第二血統の最高位に位置するグラザード家の長男だ。歳は俺より二十歳上で、俺が赤ん坊の時からずっと側に居る養育係兼世話役でもある。

 なんでアイツが……と思ったが、そう言えばそんな話を聞いたことがあった気がすると、記憶を呼び起こしてみた。


 あれは王女サリューネが、他国に一緒に行って欲しいと俺に強請(ねだ)った時の事だ。それを聞いた国王や親父達に、絶対にダメだと反対されて怒られてしまった。


 行く気が無かった俺は助かったのだが、サリューネは大泣きして泣き止まなくなった。なんでも、他国の姫に俺を連れて行くと約束してしまっていたらしい。

 約束を破ったら嫌われてしまうと泣き続けるサリューネを見て可哀想に思い、俺の代わりにランフォルトを同行させたのだった。


 相手の姫は、第一血統の俺が国の外には出られない事を知っていたそうで、その約束自体、特に気にしてはいなかったらしい。その為、俺の代わりに第二血統がサリューネに同行してきた事を聞いて、かなり驚いていたと言う。帰国したサリューネが、彼女にとても喜んで貰えたと嬉しそうに俺に報告して来たのだった。


 まあ、それはそうだろうと思う。

 ランフォルトは、第二血統の最高位を持っている男だからだ。俺の命令だから仕方無しに出かけて行ったのだが、本来ならアイツも国からは絶対に出ない。だから人間にとっては、とても珍しくて貴重な事であったのだと思う。


 だが、嫌々出かけて行ったランフォルトを見て、相手の国の国王は冷や汗ものだっただろう。姫同士の勝手な約束の為に、第二血統の最高位であるランフォルトがわざわざ来てくれた事。そして第一血統の御三家の一つであるグラフォイド家の手を煩わせてしまった事は、国の武器や防具の製造、建物の建設等をドワーフに頼みたい国王からしてみたらマイナスでしかなかったからだ。


 俺への謝罪として、後日その国の領土の一部を譲渡された。他国にある土地になど興味がなかった俺は、そのままランフォルトにくれてやったと言う経緯がある。


 アイツの土地なら、わざわざ俺が許可を得る必要はない。そして、こんな便利な所にドワーフ所有の土地が放置されているなんて、ラッキーでしかなかった。

 俺の中で、全ての問題が一気に解決した。


「お前達が、皆んなで安心して此処に住めるようにしてやる。俺に任せておけ」

「本当ですか?」

「やったぁ!!」


 喜び合う彼らを見た俺は、その手に持つコップに再び酒を注ぐ。


(明日から忙しくなるぞ)


 俺はにこやかな笑顔で、一気に酒を飲み干すのだった。

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