21.バーベキューは大好評
日が暮れ始め、俺達のいる場所にも闇が迫る。
とは言え、俺が立ち上がろうものなら、子供達が泣き始めるので、その場を去ることは不可能。俺の野宿が決定した。
諦めを見せた俺は、夕飯の支度に取り掛かる事にした。
腹が減ったから支度をするのだと、子供達に手を離させてから立ち上がる。片時も目を離さないと、ジッと俺を見つめる子供達が見守る中、畑の作成で発掘した石を使って、少し大きめな簡易的な釜戸を作った。取り出した薪に火をつけ、鉄の板を出して火にかける。
今日の夕飯は、ザンキーラのバーベキューだ。と言うか、それしか食べる物がない。此処にくるまでの食事で、パンは全て食べてしまったし、他の食べ物というと、さっき作った干し肉しか持っていないからだ。野菜とかも持ってから、家を出てくるべきだったと後悔する。
ジュウジュウと焼いていくと、辺りに肉の焼けた美味しそうな匂いが広がった。その頃には、外に出掛けていた他の子供達も帰って来た様だ。
皆んなで仲良く座って、皿に置いた肉を頬張る。バーベキューは大盛況。喧嘩にならない様に沢山の肉を焼き、お腹いっぱいにさせてやると、子供達は眠りに就いた。育ち盛りの子供達の胃袋のお陰で、ザンキーラの残りはブロック一つとなってしまった。まあ、喜んでくれたのだから、それは良いだろう。
火にあたりながら酒を飲む俺の元に、年長者達が近寄ってきた。少し遠慮がちに、彼らは俺の側に座る。
「あ、あの……。本当に、ありがとうございました。俺達まで、お肉を食べさせて貰って、すみません」
「まあ、気にするな」
俺が答えると、彼らは少しホッとした表情を見せた。
彼らには、俺はドワーフで、子供達に畑を作ってやったら懐かれたと説明した。そうしたら、この様にガッチンガッチンの対応をする様になった。どうやら、知らない人からの厚意にあまり慣れていないらしい。
この子達からなら聞けるかと、俺はこの状況を彼らに尋ねてみることにした。
彼らからの話を纏めるとこう言う事だった。
彼らは孤児だ。元々は、ここから歩いて一時間の場所にある街で、ホームレスとして皆んなで協力しながら暮らしていた。
しかしつい最近、国から『街の美化を徹底せよ』と言う御触れが出た。家の無い孤児やホームレス達は、次々と捕まり、奴隷商に引き渡されるか、街から追い出された。
それなりの服さえ着ていれば、朝から街に入る事は出来るが、家がなく宿屋に泊まる金の無い彼らは、夕方になると追い出されてしまう。
低賃金の日雇いの仕事をしてその日の食料を買い、小さな子供達と一緒になんとか食い繋いで生活をしているのだとか。街の近くにいると、排除されてしまうので、こうやって歩いて一時間ほど離れた場所まで逃げて来たそうだ。
彼らの話を聞いて、俺は怒りを覚えた。人間という奴は、同じ種族の子供達をまるでゴミの様に扱うらしい。こんな小さな子供達に、まるで死ねとでも言わんばかりに街から排除する。とんでもない奴らだ。
怒りを必死に抑える俺に、年長者のリーダーのカイトが急に頭を下げた。
「お願いします。俺達をここに住まわせて下さい。追い出されてしまったら、もう他に行く所がないんです」
「お願いします。どうか、許可して下さい」
「お願いします」
次々と頭を下げる彼らに、俺はポカーンとした顔を返す。
「えっと……。此処は俺の場所じゃないし、俺に許可を取る必要なんて無いけど?」
別に此処は俺の土地でも無いし、縄張りの主張をする気もない。俺はただの通りすがりなだけなので、ここにいたければ居ればいいと思う。だが俺の言葉に、カイト達は驚き顔を返してくる。
「えっ?領主様ですよね?」
「いや、違う。俺はただの旅人だ」
「えっ?違うんですか?」
「ああ、違う。なんで俺がここの領主だと思うんだ?ドワンライト王国以外の場所に住んでいるドワーフなんて、殆ど居ないぞ?」
第一と第二血統は、王国から出て生活する事はない。だから他国に住んでいるドワーフは、いても第三か第四血統の者達ばかりなのだが、その数ですらかなり少ない。
第一血統の俺がこうやって一人で旅をしているのは、ドワーフの歴史を遡ってみても無いに等しいくらい、とても珍しい事なのだから。




