表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/100

2.選定の儀

 そもそもこの選定の儀と言うのは、王族の地位につく女性の婚姻を決める為のものだった。

 

本来の選定の儀は、沢山の者達が参加して競い合い、一番優れた物を作った者が、婚姻相手として選ばれると言ったものだ。しかし今回は、婚約者同士と言うこともあり、形式上だけの儀式になる筈だった。


 数百年単位で生きる事ができる長寿のドワーフである俺は、今年五十歳となり、親父の下での修行をようやく終えたばかりだ。サリューネも四十二歳になった事だし、結婚を迎えるに相応しい年齢になった事で執り行われた。


 俺は周囲の者達が認める素晴らしい作品を作り上げる事で、ドワーフとしての力量を示し、王族と周囲の同意を得て結婚する事となる。


 しかし、選定の儀の開催が告知されると、第三血統のカヌバムが名乗りを上げた。選定の儀は基本誰でも参加可能な為、拒否は出来ない。そんな事もあり、この様な状況となったと言うわけだ。


 ドワンライト王国に住まうドワーフ達には、血統によって決められた地位がある。

 上位から説明すると、まずは王族。その次が第一血統と呼ばれる者達で、俺はここに位置する。次いで第二血統、第三血統、第四血統と続いていく。


 第一血統は、血統の遡りの全てが、ドワーフである者達を指す。純ドワーフと呼ばれる者達だ。


 第二血統は、血統の遡りの中に他種族との混血児がいる者となる。混血は極力少なくなければならず一人か二人。それ以外の血統の全てが純ドワーフでなければならない。


 第三血統は、ハーフドワーフ、若しくはハーフとハーフの間の子供など。


 第四血統は、ドワーフの血が第三血統よりも更に薄い者達となっている。


 俺の横に立っていた男は第三血統。父親が第二血統のドワーフで、母親が森の民の亜種族だと聞く。そのため、髪の色が深緑色をしており、身長が168cmもある。


 一般的なドワーフの身長は140cmから150cm。よくホビットと混同する者達もいるのだが、ホビットは小人なだけで鍛治スキルは無いし、身長は俺達よりもさらに低く、大きくても120cm以下しか無いので間違えないで欲しい。


 選定の儀の室内では、自身の作品の入った白い箱の前に立ったカヌバムに、宰相が歩み寄った。


「まず選定を始める前に、その資格がある事をこの場にて確認する。第三血統カヌバムよ。ドワーフの証を示せ」

「はい!」


 カヌバムは左手の袖を捲り上げ、ドワーフにしては華奢な左腕を宰相に向ける。グッと力を入れた左腕には、赤い紋章が浮かび上がった。

 

 これはこの世界のドワーフ特有の物で、その血に宿る紋章が浮かび上がるとされている。

 四つある血統は、それぞれ違う紋章が浮かび上がる。彼の腕に浮かび上がったのは、第三血統である証、第三紋章だ。


 ドワーフの地位を決める血統の誤魔化しが一切出来ないのは、この紋章があるからに他ならない。この紋章こそが、ドワーフ専用スキルの取得や技の強弱に関わってくる大切なものとなっている。

 

 勿論、第一血統が本来のドワーフとしてのスキルを、思う存分発揮できることは言うまでも無い。ちなみに、ドワーフの技やスキルを使うと、自然と浮かび上がって来るこの紋章だが、血統関係なく深紅に輝く。


 とても美しい赤だと、俺は思っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ