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17.やっと見つけた!レッドキラー

 俺は再び地図を取り出して見た。

 周りの山や川などの位置から、今いる場所のおおよその把握をする。そこから、ゲームでレッドキラーが良く現れていた場所までの道筋を、指でなぞっていった。


「此処から北に百キロって所か」


 今から向かう場所は小さな山の麓辺りで、そこから歩いて一時間くらいの距離に街がある。レッドキラーを狩ってから旅用品を揃えるには、うってつけの場所だった。

 俺はそこから丸一日眠らずに歩き続け、朝には出現ポイントに到着をしていた。


 日本でやっていたゲームでも、レッドキラーを倒して街に持って行くと、そこそこの値段で買い取って貰えたのだが、なかなか出現しない事が問題だった。


 平野から山に入って、もう一度平野に出て、山に入って……と、彷徨きながら、レッドキラーが現れるのを待つ。他の魔物と遭遇の割合の方が高いので、根気が必要だった。

 山と平野の辺りを行ったり来たりを繰り返し、その間14匹の魔物に遭遇したが、どれもEかFの雑魚ばかりだった。


「クソッ。なかなか出てこないな。どこに居るんだ……」


 大きい癖に、なかなか見つからない。歩いて場所を変えながら、奴の出現を待った。


「キャーッ」


 フラフラと歩いていた俺の耳に、小さな悲鳴が届いた。声のした方角へと急いで駆けて行くと、藪の中にレッドキラーの赤い皮膚がチラリと見える。


「いたぁ!!!!」


 やっと見つけた。俺はレッドキラーを目掛けて走り出した。ドワーフなので少々足が遅いが、スキルを使うほどの距離では無い。逃がさない様にと必死に走り込んだ所は、レッドキラーの真っ正面だった。


 薮から突如として現れた俺の姿に、レッドキラーが驚き警戒を示す。頭にある魚のヒレのようなギザギザとした飾りが赤から黄色っぽい色へと変化していった。これはレッドキラーの警戒色だ。シャーシャーと威嚇しながら歯をカチカチ鳴らす。


 トカゲやワニによく似た姿をした奴の体高は、二メートルちょっととそこまで高くない。体が横に長く尻尾まで入れると十メートル位だ。日本で恐竜が生きていたのなら、こんな感じだったのかもしれない。


 警戒していたレッドキラーは、俺を睨み付けながら、戦闘モードへと移行していった。敵は俺に勝てると判断したらしい。その判断基準は、ぱっと見でしかない。簡単に言えば、低身長……だから……か。


「殺す……」


 俺のコンプレックスを刺激した罪はでかい。俺は出そうとしていたハンマーをキャンセルした。拳を握った右手で、左の手のひらを強く殴る。バシッと良い音が響き渡った。


「かかってこい、トカゲ野郎!」


 両手を広げて構えた俺に、レッドキラーが口を開き、突撃して来た。ドーンッと言う大きな音と共に、足元の地面が割れた。奴の口先を両手で押さえ、突進を止めた俺の腕には、沢山の筋が走っている。だが、この程度の力ならまだまだ余裕だ。


 口先を持ったままクルリと自分の体を返す。奴の顎を肩に乗せた状態で即座に持ち直し、奴の体を一本背負いで投げ飛ばした。


 大きな音を立てて地へと叩き付けられたレッドキラーは、ギャーギャー喚きながら体を起こした。そして、怒りの眼差しを俺に向ける。


「自分より小さい奴に、簡単に投げ飛ばされた気分はどうだ?」


 ニヤッと笑みを溢した俺を見て、レッドキラーは喚いていた口を閉じ、グッと体に力を入れた。そして一気に口を開く。

 開かれた口からは、火炎魔法ファイヤーブレスが放たれた。至近距離にいた俺は、炎を真正面から受ける。俺を中心に燃え上がる炎を見て、レッドキラーは口を閉じた。


 火だるまになった俺の体から、フワッと魔力が流れ出ていく。燃え盛る炎は、俺の左手に集まっていった。


「おいおい。ドワーフは、火属性の耐性持ちだぞ。この程度の炎じゃ効かねえな」


 左手を前に出した俺は、集めた炎に自身の炎をプラスしていく。鉄を溶解するレベルまで高められた炎は、赤色から黄色い炎へと色味を変えていった。魔法を放たれる前にと、突進して来たレッドキラーに、俺は口角を上げる。


「ドワーフが炎を出している時に、近付くのは危険だぞ」


 俺の左手は、突進して来たレッドキラーの顔を掴んだ。掴まれたレッドキラーの顔は、あっという間に高温の炎に包まれ、ドロッと溶け落ちていく。ギャーッという断末魔と共に、顔が骨だけになったレッドキラーは絶命した。


「ったく。人を見かけで判断するからそうなるんだ。分かったか、トカゲ野郎」


 本当に失礼な魔物だった。倒した後もムカムカして苛立ってしまう。とは言え、このまま炎を出しているのは危険だ。なんとか気持ちを落ち着け、左手の炎を消し去った。


 ドワーフの左手は、高温の炎を出す事ができる。

 だが実は、この炎は攻撃用の魔法ではない。ファイヤー程度なら繰り出す事は出来るが、専門職に与えられる鍛冶スキルや工房魔法の部類に入る。血統によってその強さは異なるが、炎の大きさや温度を自由自在に変える事ができたりする。その為、大抵のドワーフは、自身の炎を使って金属を鍛えている。


 そして俺が着ている服は、自分で作った魔法自体に耐性がある服だし、ドワーフの体は炎や熱への耐性がある。生涯をかけて鍛冶に打ち込む職人的な種族だからこそ、火を甘く見る事はない。だから俺は、火属性に対しての完全耐性を維持しているのだ。


「さぁーてと。レッドキラーが手に入ったし、干し肉でも作るか」


 早速俺は、レッドキラーの解体作業に入る。臓物と骨をとった肉をある程度の大きさに切ってから、乾燥させる。


「超高速スキル発動、工房魔法『物体乾燥』」


 俺から発せられた魔法がブワッと肉を包み込み、あっという間にカリカリの干し肉が出来上がった。



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