Day 7 爆撃
曇天を貫く彼女の悲鳴。あれは紛れもなく彼女の肉声だ。僕には何度も語りかけて来たあの甘く優しい声が、慟哭に変わる。ああ、どうしてこんなことに!
彼女は灰となって僕の頭上から降り注ぐ。ビルの屋上で僕は彼女に手を伸ばす。届くわけはない。彼女の黒髪は乱れ、艶やかな肌は赤黒く腫れあがっている。真っ青な唇が揺れている。あんまりだ。彼女を二度死なせるわけにはいかない!
最期の轟音はいつまでも僕の鼓膜を震わせた。終わりだ。何一つ守れなかった! 僕は最期まで君といたかった。ただ君の傍にいたかった。僕が君の傍にいられなくてどうする!
「――爆破しました」
ビル群を覆う黒煙。大型街頭テレビがそう告げる。降りやまない火の粉が僕の頬を焼く。熱いなんて思わない。彼女はもっと苦しんだ。僕はビルの屋上で座り込む。ヘリの音が近づいきた。勝利を確信し、喜び勇んで飛んでくる。この世に奇跡なんて起こりえないのだろうか。なあ、美香。僕を許してくれるか?
焼けただれていく彼女。もう息はないだろう。だけど、僕は彼女を見届けなければならない。手のひらで少しでも彼女を受け止めよう。冬空から彼女の灰が降り積もる。