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7

「大きな家ですね」

 大きくて綺麗な一軒家だ。周りの家と比較すると際立っていて、思わず見入ってしまう。

「ああ、両親が大枚を叩いて建てたらしい。遠慮せず入ってくれ。妹には軽く事情を伝えてある」

 そう言われ虎助の後について、引き戸になっている玄関から入る。

「お邪魔しまーす」

 中に入ると最初に玄関にある小さめの下駄箱が目に入る。玄関を上がって少し離れた場所に2階への階段があり、階段と隣り合っている廊下は奥の方まで続いている。それに面していくつもの戸襖があった。

 下駄を脱ごうとしてウリ坊がいることを思い出す。見ると玄関の中までついてきている。

「すみません、この子は外にいてもらったほうがいいですよね」

 他人の家に動物を連れていくのは初めてだったが、いきなり猪が家の中に入ったら迷惑だろう。ウリ坊を抱いて外へ出そうとするが、抵抗される。

「連れなんだろ? なら入ってもいいさ。布を持ってくるから少しそこにいてくれ」

「フンッ!」

 ウリ坊が勝ち誇ったように鼻を鳴らす。腑に落ちないが家主がそう言うのだから良いのだろう。

 しばらくすると、虎助が湿った布を持って戻ってきた。

「これで足と身体を拭いてから上がってくれ」

 俺はウリ坊の足と身体を丁寧に拭く。そのあいだウリ坊は大人しくしていた。

 階段から足音がする。誰かが降りてくるようだ。

「おかえりなさい。その子がお客さん?」

 穏やかな雰囲気の綺麗な女性だ。恐らく虎助の妹だろう。

「ああ。あとこの猪も連れだそうだ」

「初めまして。先生という方が帰ってこられるまでお世話になります。大沢瑞生といいます。この子は……猪のウリといいます。」

 連れだと言っているのに名前がないのも変な気がしたので、今名付けた。ウリのほうを見るとなんだか不満気だが、小突いてきたりはしてないのでまあいいだろう。

「まあ、かわいいお客さんね。私は虎助の妹のコハク。何もない家だけどゆっくりしていってね」

「はい! ありがとうございます! よろしくお願いします!」

「コハク、部屋まで案内してやってくれ。俺はもう少し用事があるから出かける」

「わかったわ、いってらっしゃい。……さあ、瑞生ちゃんにウリちゃん、部屋に案内するからついて来て」

「はい!」

 そう言ってウリを抱き上げ、コハクさんについていく。

 廊下を少し進むと、1つの戸襖の前でコハクさんは止まった。

「この部屋を使ってちょうだい。厠はここよ」

 そう言って向かいの扉を指さす。そこには使用可と書かれた木板が吊るされていた。

「使うときは木札を裏返してね。昼餉の前には呼びに来るわ。疲れてるでしょうからそれまでは自由に休んでいて」

「本当に何から何までありがとうございます。」

「いいのよ。それじゃあまた後でね」

 そう言うとコハクさんは戻っていった。

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