表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

6

第1部分〜第7部分まで、改行等の改稿をしました。

「すまない、待たせてしまったな」

 1時間ほど経っただろうか。男が戻ってきた。

「トウキョウもケンも知ってるやつはいなかった。ところでトウキョウってところからここまではどうやって来たんだ? ……まさかとは思うがあの森の向こうから来たのか?」

「森の向こうかはわからないですが、いつの間にか森の中にいました。そのあと気付いたらここで寝ていたんです。曖昧ですみません。自分でも何が起こってるのかわからなくて……」

「いや、いいんだ。若いのに大変だったんだな」

 そう言うと、男は大きい手で優しく頭を撫でてきた。

 涙が溢れそうになる。

「ああ、いや、すまない。もうしないから泣かないでくれ」

「いえ、嫌なわけじゃないんです。昨日は森で1人だったので、少し安心して……」

 慌てて距離を取る男が少し可笑しく笑みがこぼれる。

「それならよかった」

 男は胸を撫で下ろした。

「そうだ。さっき言い忘れてたんだが、この集落で子供たちに勉学を教えている先生がいるんだ。街に用事があって何日か出かけてるようだが、彼なら何か知っているかもしれない」

「本当ですか!」

「確証は持てないがな」

 そうだとしても希望が見えたことに変わりはない。

「あぁそうだ、この集落には宿屋がないから、嬢ちゃんさえよければ先生が帰ってくるまで俺の家にいればいい。妹と二人暮らしなんだが部屋が余っているんだ。綺麗な家ではないが野宿よりはマシだろ?」

 今度は本当に涙が溢れてしまった。

「本当に、何から何までありがとうございます。この御恩は必ずお返します」

「そんな恩義なんて感じなくていいさ。賑やかになってきっと妹も喜ぶ」

「そんなふうに言ってくれてありがとうございます。ぜひお邪魔させてください!」

 俺は涙をこぼしながらも今できる精一杯の笑顔を作った。



 男の案内に従ってついていく。この集落では農業が盛んに行われているようだった。

「農業が盛んなんですね」

 つい口から溢れてしまう。

「そうだな。ここの住人の殆どが農家だ。育てた作物を物々交換したり、余ったら町に売りに行ったりしてる」

 彼も農家なのか聞こうとしたが、こんなに親切にしてもらっているのに、自己紹介もしていないことに気付いた。

「あの、今更ですけど、お……私は大沢瑞生(おおさわみずき)といいます。改めてよろしくお願いします!」

 俺、と言いかけたが、この姿なので言い直す。

「俺は虎を助けると書いて虎助(こすけ)だ。家名はない。好きなように呼んでくれ」

「はい。では虎助さんと呼ばせてもらいます」

「それと、無理しなくてもいいぞ。さっき俺と言っていただろう?」

 気付いてない間に言っていたらしい。顔が熱くなる。

「いえ、無理してないし言ってないです。私は私です」

 認めたら普段通りに話せると思いながらも、恥ずかしさから変な意地を張ってしまう。

「そうか。それならいいんだが」

 虎助は全く気にしていない様子だった。

 そのようなやりとりをしてる間に到着したようだ。彼が農家なのかは結局聞きそびれてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ